ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第23回 四方山話(6) ITエンジニアの品質

»

 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。 

 品質という言葉は、IT業界ではもはや常識といわれるほど重要なキーワードです。今回はこの品質をネタにしてみたいと思います。

■システム開発における品質

 IT業界における品質という言葉は、一般的にはモノやコトに対して使われます。

  • モノ(成果物):設計書の品質、テストの品質など
  • コト(行動):品質管理、品質改善活動(QCD)、QC7つ道具、新QC7つ道具など

品質管理:プロジェクト管理における一領域。品質マネジメント(Quality Management)とも呼ばれます。ISO(国際標準化機構)で定められた品質管理基準であるISO 9001なるものもあります。

QCD:システムを開発する上で必要とされる3つの要素。Quality(品質), Cost(コスト), Delivery(納期)のことです。

QC7つ道具:品質向上のための7つのツールのこと。具体的には、ヒストグラム、管理図、チェックシート、パレート図、特性要因図、散布図、層別のことで、これらは定量的、数値的で表される特徴があります。

新QC7つ道具:QC7つ道具同様、品質向上のための7つのツールのこと。QC7つ道具と違い、こちらは問題の構造を早期に明らかにすることを目的とした7つのツールで、連関図法、親和図法、系統図法、アローダイアグラム法、マトリックス図法、マトリックスデータ解析法、PDPC法といったものがあります。

 また、システム開発における品質の取り組みは盛んで、資格であればJSTQB(テスト技術者認定試験)やソフトウェア品質技術者認定試験のようなものがあります。

ソフトウェア品質技術者認定試験:SQuBOK(ソフトウェア品質知識体系ガイド)に基づく"ソフトウェア品質力"を問う資格。SQuBOKについては、第3バイオリンさんのコラムもご参照ください。

 こうやって見てみると、IT業界における品質に対する取り組みは活発であることが分かります。その背景は、システム開発では成果物に対し、一定の品質を担保することが求められるからです。だからIT業界、言い方を変えればシステム開発を行うIT企業は品質に対する意識を高く持たなければならないことが分かります。

■ヒトに置き換えてみると?

 IT業界や企業が品質に対する意識を高く持っていることは分かりました。それでは、今度はITエンジニアに目を向けてみます。ITエンジニアにとって品質とは何なのか?

 1つ言えることは、品質はITエンジニアに求められるスキルの1つだということです。設計書、プログラミング、テストなど、システム開発では成果物に対して一定水準以上の品質を求められることがよくあります。これらを満たすことはITエンジニアにとって必要不可欠なスキルと言えるでしょう。だから、

品質とは、ITエンジニアにとって必要なスキルである

 それでは、これでFAですか?

FA:Final Answerの略。某クイズ番組で使われていた言葉で、「最終的な答えですか? 」の意味で使われます。その後、司会者の口から正解が出るまで数十数秒無言になる時間が訪れます。

 これ、FAでも間違いではないんですが、筆者はこれだけじゃないと思うんですよね。

 少し話が変わりますが、例えばプロ野球選手を思い浮かべてください。プロ野球選手はシーズン中とシーズンオフという期間に分けられますが、シーズンオフは基本的に試合はありません。そのため、この期間をどう使うかは選手1人1人に任されていますが、この期間で自主練(習)をする選手がいます。アレ、なんで自主練(習)すると思います? そりゃ、自分の能力を高め、1年でも多く活躍したいと思うからでしょうね。プロ野球の世界はサラリーの世界と違い、実力勝負の世界ですから、自分の能力を高めること、維持することには特に気を付けるのかもしれません。

■サラリーと甘えの構造

 それでは、ITエンジニアはどうか? 現在、ほとんどのITエンジニアはサラリーです。サラリーである以上、最低限の品質を提供できているのであれば、それ以上の品質管理能力を身に付けなくてもクビになることはありません。しかし、これがフリーランスだったらどうなるか? そりゃ、プロ野球選手と一緒で、恐らく、多くの人が自発的に自分の能力を高めようとするでしょう。だって、自分の能力を引き上げておかないと、食いっぱぐれることがあるかもしれないからです。

 サラリーとフリーランス、この違いは何か? そうです、就業環境の違いです。言い方の良しあしは別として、サラリーはフリーランスより会社や企業に守られている分、

本当は必要と感じているスキルを、自発的に身に付けようとしていない!

と言えませんか? しかもこの状況は、単にサラリーという環境に甘えているだけにも見えます。だから、筆者はさっきのFAにこんな言葉を付けたしたいです。

ITエンジニアがプロとして必要なスキルを自発的に身に付けること。この行為こそがITエンジニアにとっての品質である

 実際、こういった考え方を持っている人の方が、思い描くキャリアに到達する可能性が高くなります。それは、この品質に対する考え方こそが、キャリアを形づくる上で、そのITエンジニアの軸となるからです。

Comment(4)

コメント

真っ赤なレモン

違う。品質という言葉に惑わされすぎている。
元の『Quality(質。モノに限らない)』のイメージで考えるべき。

『品質のことを考えられる人』と、『人の品質』は全く別の意味を持つ。

また、『品質』という言葉が出た時点で、お客さまの存在が暗黙の前提となる。
『お客さまが「こうであってほしい、こうならいいな」と思うこと全て』が品質の意味の本質。
お客さまの存在を必要としない、モノ自体や人間自身の向上は、『品格』。

真っ赤なレモン様、

貴重なコメントありがとうございます!

品質の話をするからには最初に品質の定義をした方が良かったかもしれません。
(真っ赤なレモン様のコメントを見て気づきました。。。)

筆者は、システム開発における品質を「顧客の要求事項との合致度」であると思っています。その合致度が高くなればなるほど品質は上がります。
これをITエンジニアの視点から見れば、真っ赤なレモン様が仰るとおり、顧客の要求事項をいかにして実現するかという「品質のことを考えられる人」になります。そして、筆者はそれをITエンジニアにとって必要な"一つのスキル"だと考えております。
ただ、ここではその"一つのスキル"を高めることを論じているつもりはなく、抜本的にITエンジニアの品質とは何か?という提起をさせてもらったつもりです。

最初にシステム開発における品質の定義をさせてもらいましたが、これをITエンジニアに置き換えて考えると、

「ITエンジニアが提供することができるスキルと顧客の要求事項との合致度」

がITエンジニアにとっての品質ではないかなと思っています。
そう考えると、ITエンジニアが品質を高めるためには、顧客の要求事項を充足させるために自らのスキルを向上させることではないかと考え、コラムのような書き方をさせてもらいました。

真っ赤なレモン

ガッテン、ガッテン。
全面的に納得しました。
そういう見方でキャリア・コンサルタント 高橋さんのコラムを読むと、
どこも間違ってはいません。

ITエンジニアが、日本の製造業が歩んできてしまった間違った道に
進まないように、私の考えを記します。

自分に要求されていること、望まれていることを身につけるのが
『人の品質』を良くすること。
(『人質』と書くと全然違う意味になるという日本語の不思議)

他者がどう思うかは関係なく、自分が望む能力を高めるのが
『人の品格』を良くすること。
(『人格』と書くとちょっと違う意味になるという日本語の不思議)

自分の持つスキル以上の仕事はできないので、
『人の品格』を良くすることは『人の品質』を良くすることにも
つながる場合が多い。が。そうならない場合もある。

たとえば、『暗算の能力を高める』と、『人の品格』は良くなるが、
『人の品質』は全く良くならない。そんなスキルを高めても、
現代では何の役にも立たない。50年前なら、役に立っただろうけど。

人でもモノでも、品格を高めることは、お客さまの満足にはつながらない場合がある。
モノの場合は、過剰品質やガラパゴス化するということになりかねない。
これは、日本の製造業が歩んできた間違った努力の方向。

同じ過ちを、広義の製造業であるIT業界が繰り返していてはいけない。
人もモノも、他者の、お客さまの視点を意識した『品質』の向上を目指す。
他者を無視した、自分勝手な『品格』の向上に走ってはいけない。

ただし。お客さまも、間違うことはある。
そこを修正するには、エンジニアの『人の品格』が役に立つ。
圧倒的なエンジニアの品格は、『お客さまが要求すること』自体を、
良い方向に修正できる可能性を持つ。

お客さまとエンジニアの双方が「これでいいのかな?」「納得しにくいな」と
思っている案件を、お客さまとエンジニアが共に「納得!満足!」と
思える案件に修正する。これができるのは、エンジニアの『人の品格』だけです。

真っ赤なレモン様、

度々のコメントありがとうございます!

今回の記事では、

「ITエンジニアがプロとして必要なスキルを自発的に身に付けること。この行為こそがITエンジニアにとっての品質である」

と書かせていただきましたが、その行動を起こす上での動機づけ(想い)の部分については語れませんでした。
手前みそで恐縮ですが、筆者のコラムの「第3回 自分の何を知る?」で想いの話を書かせてもらいましたが、筆者はこの「想い」というものがなければ人は行動を起こすことができないと考えています。
だからこそ、想いを持つということは、品質を上げる行為と同じくらい重要だと考えております。
表現の仕方こそ違いますが、筆者のいう「想い」は、真っ赤なレモン様の仰る「人の品格」に繋がるのだろうなぁと解釈させてもらいました。

「人の品質」と「人の品格」、これらは車の両輪のように、どちかかが欠けても、どちらかが過剰に回り過ぎても成り立ちませんよね。
お客様という両輪を繋ぐ軸があり、それらをバランスよく回すことで、始めてまっすぐ前進します。そのバランス感覚こそが重要だということが、真っ赤なレモン様のお話しで良く分かりました。

非常に頷ける話です。是非、筆者の研修でも使わせてください!
ありがとうございました!

コメントを投稿する