第1回 キャリアとは何か?
はじめまして! キャリア・コンサルタント高橋と申します。
普段は、SI企業のITエンジニアに対して、キャリア・コンサルティングを行う仕事をしています。具体的には、SI企業で働くITエンジニア1人1人とじっくり向き合い、その人が目指す職種、職制、技術などを踏まえた最適なキャリアを模索し、そこに到達するための道筋を立て、それを支援するような仕事です。
また、キャリア、コーチング、カウンセリングの視点から人材育成、開発するための有志によるコミュニティも主宰しています。
この『5分間キャリア・コンサルティング ~おいしいキャリアのつくり方~』では、キャリア・コンサルタントとしての筆者の経験を踏まえ、ITエンジニアのキャリアに焦点を当てた本当のキャリアを見つけるための考え方やノウハウをご紹介します。
また題名に“5分間”とあるように、ちょっとした空き時間にでも読んでいただけることを考慮しています。ぜひぜひ、これからも末長くお付き合いくださいませ。
さて、前置きはこのくらいにして。今回の話は、ズバリ“キャリア”そのものを取り上げてみたいと思います。これからキャリアの話をするのですから、最初にキャリアのことをハッキリさせておこう! ってことですね。
いきなりですが、ここで質問です! あなたはキャリアといわれると、何を想像しますか?
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役職、ポジション、立場、技術、スキル、資格などなど……きっとこんなキーワードが出てきそうですね。これらのキーワードから、こんなキャリアが聞こえてきそうです。
『私は将来社長を目指します! 』
『リーダーとしてチームを引っ張っていききたい! 』
『PMP※を取得して、プロジェクト・マネージャになります!』
※PMP : Project Management Professional、米国PMIが認定するプロジェクトマネジメントに関する国際資格(持っていると、おぉー!っと言われることがあります)
うむ、キャリアっぽい感じがします。確かに、これらはキャリアの一側面を表してそうです。でも、こういった話になると、こんな声も聞こえてきそうです。
『ITエンジニアって言ったって、元々社内の出世ルートがあるじゃん。このまま普通に働けば、主任、係長、課長、部長……って昇進していけるだろうし、それに乗っかることがキャリアなんじゃないの?』
『私は派遣業界で働いているんで、目の前の仕事をするだけ。だから、キャリアなんて言われてもピンとこないわ。』
『システム開発のキャリアは、プログラマ→システム・エンジニア→プロジェクト・マネージャぐらいしか思い浮かばないよ。』
うむうむ、こういった声もキャリアの一側面であり、正解っぽいですね。ぱちぱちぱち。それでは、次にこんな声を聞いてください。
『社内の出世ルートに沿って管理職で仕事をするより、定年まで第一線に立って現場でモノづくりをしたい! 』
『派遣契約で仕事をしているんで、どうしても下流工程が中心になってしまう。どうにかして要件定義、基本設計といった上流工程で仕事ができるようになりたい! 』
『将来はプロジェクト・マネージャを目指さなきゃならないんだろうけど、それよりシステム開発の中で、もっと自分を生かせるような仕事をやっていきたい! 』
これもキャリアの一側面を表していますね。
これらは過去に筆者がキャリア・コンサルティングを行ったときに、ITエンジニアから聞かせていただいた生の声に近いモノですが、『あぁ、確かにそうだなぁ』とうなずかれた方もいるのではないでしょうか?
こうやって見てみると、キャリアにはいろいろな形があるのがお分かりいただけると思います。ここまでの話から、キャリアを端的に表現するならば、“将来の姿”と表現できそうですね。
しかし、ここに1つの落とし穴があります。例えば、ここに田中さんというITエンジニアがいます。田中さんは、自分自身のキャリアをこう考えていました。
『ITエンジニアっていったって、もともと社内の出世ルートがあるじゃん。このまま普通に働けば、主任、係長、課長、部長……って昇進していけるだろうし、それに乗っかることがキャリアなんじゃないの? 』
『社内の出世ルートに沿って管理職で仕事をするより、定年まで第一線に立って現場でモノづくりをしたい! 』
あれ? これはさっき出てきたITエンジニアの声ですね。え? 手抜きじゃないかって? まぁ……細かいことは気にしない、気にしない…………。
実は、田中さんは社内の出世ルートに乗ることがキャリアと考えているようですが、その一方で、第一線でモノづくりをしたいとも考えているようです。 田中さんにとって、出世ルートに乗ること、第一線でモノづくりをすること、どちらが本当の意味でのキャリアなのでしょうか?
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実は、この答えは非常に難しいです。
これは田中さんの置かれている状況、志向などを加味し、将来に渡って何を選択するのがベストかをじっくり見定めてからでないと、結論づけられるものではありません。しかし、結論づけるためのポイントはあります。それは、そのキャリアを目指したいという“あなた自身の強い想いを込められるかどうか? ”です。
よく考えてみてください。あなたの想いが込められていないキャリアは、所詮、形だけ取り繕ったキャリアです。心から納得していないモノに、あなたは到達したいと思いますか?
気持ちがしっくりこない、もやもやする、違和感を感じる、こんな感情を持ったままでそのキャリアに到達したとして、そこであなたは本当にパフォーマンスを発揮できますか?
もう一度、先の田中さんの例を思い出してください。田中さんは社内の出世ルート、第一線で働くことの二つの方向性をキャリアとして考えています。このままだと、田中さんは嫌々ながら出世コースに乗ってしまうかもしれません。ひょっとしたら、出世コースから外れて、現場の第一線で働くことを選んでしまうかもしれません。
どちらを選ぶにしても、きっと田中さんは心の中でわだかまりを持ってしまうでしょうし、そのキャリアを心から納得して選んでいるようには思えませんね……。
ちなみに、もし田中さんにキャリア・コンサルティングを行うとしたら、以下のような流れになります。
■田中さんへのキャリア・コンサルティング例
1.なぜ、田中さんは出世ルートをキャリアと考えているのか?
なぜ、現場で仕事をつづけることをキャリアとして考えられないのか?
(田中さんの心の底に隠れている想いや考えを導き出す。)
2.出世ルート、現場でのモノづくりしか目指すべき仕事や業務がないのか?
(他の仕事や業務についての選択肢はないのかを調査する。)
3.1で導き出された田中さんの想いや考えと、2で調査した仕事や業務を統合し、田中さんが本当に納得し目指すことができる仕事や業務について実現可否を含め検討する。
いかがでしょうか?
実際にはキャリア・コンサルティングの流れによって変わりますので、必ずこのようになるとは限りません。
しかし、ここまで考え導き出された結論だからこそ、田中さんは自分のキャリアに納得し、本気で目指そうと思えるのではないでしょうか。そして、その想いの強さがキャリアに到達するための大切な原動力にもなります。
ですので、キャリアを考える場合、ぜひあなたの想いを込めることをオススメいたします!
■キャリアとは何か?
あなた自身の強い想いが込められた、あなた自身が目指したい将来の姿のこと!
それでは、また次回お会いしましょう!