自身の価値
気が付けば 3 月も終わりを告げようとしています。多くの企業では年度末でドタバタしているのではないでしょうか。明日になれば新年度となり、新人が入社してくる会社も多いことだろうと思います。
思えば新人として社会人デビューした当時は、エンジニアとしてというより1人のプロフェッショナルとして働いていくにあたり、夢や希望と言った類のものは何かしら抱えていました。そしてそれを叶えることがどれだけ難しいことかを、これまでの人生の中で実感しています。
恐らくは初めて社会に飛び出したときはほとんどの方が、このような夢や希望を抱いていたことでしょう。そして歳を取るにつれて、その内容はより現実に近いものとなっているのではないでしょうか。
最初は無我夢中で何でも行おうとし多くの成功と失敗を重ねていくなかで、今自分がおかれている社会というものを感じていったことと思います。自分が描いている夢や希望は、この社会では叶えられないのではないか、夢を持ったところで叶うことはないのではないか、言い方を変えるとそのようにいろいろ経験することで大人になってきたのだと思います。
やりたいことはあるけれども、生活するにはお金が必要。これはどうあがいても変わることのない現実です。夢や希望を叶えるためには、まず普段の生活をこなして初めて言えるものなのです。日常があってこその夢や希望です。夢を叶えるためには、前提として日常を問題なく過ごせることがついてまわるのです。
ここ何年かで、独立を勧める内容な記事や意見を目にされることが多いかと思います。私は、自分の性格もありますが、あまりその意見に賛同できないスタンスです。独立すること自体は簡単なのかもしれませんが、それを維持することは会社勤めを続けることよりもはるかに難しい道だと考えています。実際に起業された方々というのは、私にとってものすごく尊敬できる存在です。
極々たまにですが、私にも独立を勧めてくれる友人や知り合いがいます。ですが私は独立しそれを維持することを考えると、よほどの下調べや土台作りをしていなければ無理、と考えていますのでやんわりと断るようにしています。
もしかすると、現時点で自分程度の技術力でも商売ができる可能性はあるのかもしれません。ですが恐らく実際は技術力だけで商売はできないのではないか、と考えています。人脈や営業力、そのほかにも数多くの物や人との繋がりが必要だと思います。少なくとも、今の自分が独立したとして生活していけるだけの収入を得られる自信、とまではいかなくとも、それが可能であるかどうか予想できません。
そうなると転職を考えるのですが、その際に重要なのは自分が所有するスキルなのではないでしょうか。ここに至るまでの時間でどれだけのことを身につけてきたのか、どれだけの意欲を持ってやってきたのか、そのような部分が非常に重要になると思います。
また同じように大切と思われるのは、その身につけているスキルは他の企業でも活用できるものか、という点だと考えます。悪い例として、勤続年数が長いだけというタイプが挙げられます。このタイプは「長い年数やってきた=スキルが高い」という錯覚を起こしており、その目で見てきた世界を全てと誤認する事が非常に多いです。実際のところ、例え 20 年、30 年やってきたとしてもその目で見ることができる範囲というのは非常に限られます。たかだか 20 年、たかだか 30 年なのです。たったそれだけの時間でほぼすべてを見れるほど、世の中は狭くありません。知らないからと、見ていないことの方が遥かに多いのです。
自身の中で年数を誇りにすることは一向に構わない、むしろ良いことだと思います。ですがそれを表に出すことにはあまり意義を感じません。Aという企業で 20 年過ごして身につけたスキルは、Bという企業では 5 年程で身につけられている程度、もしくはまったく有用ではないというのも、往々にしてあり得るのです。
常に謙虚に、新旧にとらわれずに多くの物事を受け止め吸収していく器量が社会人として求められるのではないでしょうか。そして私達 IT 業界に属するエンジニアは、他の業界よりももっとそれを実践していく必要があるのだと思います。
決して独立や転職を勧める訳ではありませんが、これからこの世界に飛び込んでくる人達は、皆さん自身の価値を高めるための努力や手間暇を惜しまないでもらいたいと思います。もちろん、私自身まだまだな身ですので、今後も貪欲に吸収していきたいと思っています。
それは最終的にたどり着くのは、「個々人の価値」だけだと考えているからです。