【番外編】荻原さんの手の上で踊らされるエンジニアたち
こんにちは手塚規雄です。
今回は番外編です。個人の妄想100%です。そんな内容でもよい方のみ、ゆるーく読んでいただけたらと思います。
「五輪にはボランティアで働けるエンジニアが必要」の件
Anubisさんの「やっぱり四万人のボランティアは必要だよ!」、Ahfさんの「団体とかもういいんじゃないかな」でも紹介されている、「五輪にはボランティアで働けるエンジニアが必要」の件です。
・「五輪にはボランティアで働けるエンジニアが必要」発言の真意を聞く
これをお二方とは違った視点でこの発言を捉えてみました。エンジニアライフ編集担当さんからも軽く希望があったので、それに応えてみました。
この手の記事は冷静にならないと真意が見えてこない
私も記事を見た瞬間は「何を言っている?コイツは」と思いました。その後に、お二方の見解とそのコラムのコメントを読み、自分でも思考しました。そしてさらに時間が経って冷静になってくると、色々な視点から考えることができます。そして、そもそも記事が伝えたいこととCSAJ会長の荻原さんの伝いたい事は全然別ではないかという結論に至りました。
インタビューを受けたことのある人、インタビューをやった事のある人は知っていますが、案外2者の伝えたい事は一致しません。記事を書く人が訴えたい内容に基づき編集するので、インタビューはトラブルにもなりやすいのです。ノーカットでのインタビューでないとインタビューを受ける人が本当に話したかった事は見えてこないことが大半です。今回もそのケースなのかなと感じました。嫌にボランティアの部分だけ強調されてしまっている感があります。
また感情的になってしまうと視点や焦点がその1点に集中してしまうのですが、冷静になれば相手の言い分に対して聞く耳を持つことができます。炎上する記事の特徴に相手の感情を刺激しすぎてしまう事が挙げられますが、今回もそのケース。冷静になって読めばけっこう普通の事を話しています。
荻原さんがもっとも言いたかった事は何か?
元々の2つの記事を読むと荻原さんはこの事を強く言っている。
1:サイバー攻撃に関する対策は遅くともオリンピックまでに必要
2:多くのエンジニアが必要だが国からの援助金などは期待できない
3:このような状況での解決策の1つとしてボランディアで対応する案、などがある
とりあえず3は横に置いて話を続けます。
社団法人はうまみがあんまり無い
1について荻原さんが最も訴えたかった事です。そのエンジニア育成を円滑に行うために今回の社団法人設立をしています。会社の経営者の1人が必死になっても限界があるのはわかります。しかしCSAJの会長が他に団体を作る必要だったというと、CSAJ自身に影響力がない事を暗に認めているとも言えます。それはそれで苦しい判断だったのでしょう。それを認めてもいいからしっかりした団体を作りたかったのでしょう。
ちなみにこの手の団体は報酬がクソ高いわけでもありません。会長の年収は1500万円です(CSAJのHPに公開されています)。
平社員からみたら大金ですが、一部上場企業の経営者になれる方々であれば1500万円ぐらいなら自分の会社で頑張ったほうがもっと稼ぐことができます。ちなみに豆蔵ホールディングの役員平均報酬約4500万円で、荻原さんはさらに株式配当もあるので、自社で頑張ったほうが稼げるというのは納得できるかと思います。(参考情報:役員報酬が多い500社ランキング2015)。
忙しく責任も無駄に重いから、本業より稼げないからやりたがらない。この手の団体の会長、役員をやる人はけっこう物好きなのです。創業者社長や経営者になると、すでにある程度の社会的地位があるので、それ以上に地位についての興味が薄い人が多いです。私が知っている経営者で社団法人の会長さんが言うには、団体の会長なんてボランティアみたいなもんだよと言っていました。CSAJはまだ高い方ですが、会長でも500万円未満の社団法人も多いので、億以上を稼ぐ経営者にとってはあまりうまみのないお仕事なのです。
新団体の会長にはならないとインタビューにて話していましたが、やると周りがうるさい、自分自身もやりたくない、やるほど時間もない、やってもお金にならないなど本音などもあっての発言だと思います。
社団法人はどうやってお金を作るのか?
2は社団法人を設立したのはいいが、国からの援助は期待できないという点です。荻原さんが会長をやっているCSAJはプライバシーマーク指定の審査機関でもあります。そのため国とのやりとりは手慣れた分野なのが想像できます。そんな人が言い切った点からもこれは国からの予算をあてにできないのは本当なのでしょう。今の御時世を考えても、どのニュースをみても、国にお金が無いのはわかりきっている事ですが。
そうなると新団体自身が何かしらの方法でお金を得て、そのお金を使ってエンジニアを育てるしかありません。想像ですが、もうそのプランは描かれてあって、1、2年後には表に出てくるでしょう。プライバシーマークのような認定ビジネスだと思います。その審査費、継続費などでお金を得るという事です。
もっと簡単なのは会員制で会費を得ることで団体を運営する方法です。社員数に応じた会社規模別で大企業からお金を頂くのが早いです。大企業側としても経費になるし、半分棋譜みたいなものとして諦めている事も多いですから。大企業はこんな風に何かと出費があるから大変ですよね。
何のためにボランディアの話をしたのか?
結論から言ってしまえば炎上マーケティングです。ほとんどの人がオリンピックまでにサイバー攻撃に対応するエンジニアが足りないと思ったことがないと思います。それを炎上マーケティングによって多くのエンジニアや世間の皆様に周知することができた。それだけのためにボランディアの話をしたのだと思います。効果は、もうおわかりですね。つまり多くの方がでっかい釣り針にひっかかり釣られてしまったというわけです。
創業者や経営者は抜け目がありません。人から嫌われるのは誰でも嫌ですが、創業者や経営者という立場だけで一歩引かれてしまう人が多いです。だからこそ経営者は孤独で同じ経営者同士でしか分かり合えないという悩みを持っています。
そんな人が今さら多くのエンジニアに嫌われようがあまり変わりません。嫌われるだけで多くの人に周知できるなら、高額な広告も出さずにすむし、周知できる速度、インパクトを考えれば炎上マーケティングほど効果の高いものはない。経営者視点での発想なのです。仮に私が同じような事を思いついてもやろうとは思いません。
経営者は世間の心情を知らないという人がいますが、真実は真逆でいかに利用しようかという謀略を張り巡らせている腹黒い方々なのです。頭の良い恐い方です。じゃなければ一部上場企業の社長なんかになれるわけがありません。
はじめにも言いましたがこれは私個人の妄想です
この妄想、合っているのか間違っているのか全然わかりません。あくまで私の妄想です。でも私個人の強い主張はこれです。
「経営者は誰よりも計算して、誰よりも腹黒く、誰よりも結果を求める。そのためには良くも悪くも手段は選ばない。」
今回のCSAJ会長の荻原さんは自分が馬鹿だと思われてもいいから、サイバー攻撃対策が必要だと訴えたかったために炎上マーケティングという手法を使用した人間だと思いますけど、あなたはどう思いますか?
私の持論が正しいとは全然思っていませんし、他の視点から見れば違った結論に至ることでしょう。AnubisさんとAhfさんの内容も私は同意できる部分もあるし違った部分もあります。その違った部分が今回のコラムです。
この件に関して、どんな風に思うかは人それぞれです。そしてどうせ一個人には真相はわかりません。一度じっくり考えてみて自分なりの結論を出すことが一番大事なことだと思います。
今回は番外編という事でしたが、お楽しみ頂けたでしょうか?
コメント
ハリコフ
>今回は番外編という事でしたが、お楽しみ頂けたでしょうか?
はい、楽しかったです。
実は、荻原さんのインタビューの記事を読んだ時に、そんなに大騒ぎをする内容には思えませんでした。
確かにボランティアという言葉は出てきましたが、報酬の提供方法にも言及してあったし、どこぞのイラストだかデザインだったかみたいにタダ働きして当たり前みたいに言っている風には読み取れませんでした。
そもそも、私たちが日々行っている業務に対する上司の評価って、こんなものじゃないですか?
ボランティアという言葉だけを取り上げて攻撃するのはエンジニアの傲慢のようにも感じます。まぁ、エンジニアの端くれとして、擁護したい気持ちになる内容とも思いませんでしたけどね。
非現実性AR
件の団体の設立目的を考えますと、むしろサイバー戦争がちょうど良く転がっていた「ダシ」なんじゃないでしょうか。
団結するには外敵が必要っていうアレですよアレ。
一方で、氏はブラック業界やらサイバー戦争やらを本気で憂いている方じゃないかとも思います。誰もやらないなら俺がやるな人。
ただいかんせん、ちょおーっと「世間に対するプレゼン」って思考が欠けてるんじゃないかなー。
この一連の発言じゃあ、仮にカンペキな計画があったとしても誰も協力しませんよ。有能な人ほど、きな臭さには敏感ですから。
仮におっしゃるように危機を周知するための炎上マーケティングだったとしても、ボランティアの方しか知れ渡らないんじゃあ失敗じゃないですかね。
個人的結論としては「夢いっぱいスタートアップ第一歩で蹴躓いて複雑骨折」って感じです。
夢夢
手塚さんの番外編面白かった。
このコラムに刺激を受けたから、俺も経営面から考えてみた。
プレゼンの下手さについてはもう述べたので繰り返さないが、俺が改めて経営面から思ったのは「国庫をあてにするのは経営者失格」だ。
税金となれば、お客様以外の人からも自動的にお金を取得することになる。
志がある本物の経営者ならば、本業に稼ぐことを考える。
自分たちの企業の経営理念はどうしたんだ?
それ故に、原子力村みたいなものを狙っているとしか思えない。
また、教育にお金が必要ならば、海外企業のように企業の利益を還元する形でやればいい。
そもそも、お金が必要になる理由がわからない。
技術者はオープンソースから学べる。
情報技術者の教育にお金は必要なく必要なのは「情報」と「環境」だ。
ボランティア云々を言うのであれば、自分達が教育をボランティアですればいい。
彼はお金という手段が目的となっており(カットされたのかも?)論理を本能として生きている我々技術者の同意を得られることはないだろう。
炎上マーケットかもしれないが、俺ならばもっとうまいことするな。
論理が破綻してしまっていては目も当てられない。
いや、もしかしたら、パネルディスカッションの対象は技術者ではなく、情報技術を知らない政府関係者だからいいのか?
政府関係者だって、こんな基礎的な論理を読むことぐらいできると思うんだが・・・
彼らは世間が騒がない方法でうまみを得られないと動いてくれないぞ。
うーん、わからん!
唯一つ確かなのは「日本は終わっている」だ。
こういう大人の茶番劇をしている暇はないと思うんだが・・・
夢夢
それにしても、この炎上マーケット、マーケティング的に失敗だと思うんだが・・・
どうなんだろう?
Ren.
役員報酬がある。株主配当もある。業界団体の名前もある。
次は国政とか考えてるんじゃないスか?
ここでボランティア動員させて実績とか恩とか作って、有識者で招聘されてからの比例上位当選で大臣とか竹中平蔵ルート狙ってるんでしょきっと。
団体のトップが団体構成員の方を向いていないんだから、じゃあドッチ向いてんだとなると……ねえ?
Anubis
> このような状況での解決策の1つとしてボランディアで対応する案、などがある
コレ、私の使った手法そのまんまですね。
「四万人」と「ボランティア」という巨大な釣り針をぶら下げておいた。
だが、本当に訴えたかったのは、氏の発言などどうでもよかった。
「荻原紀男氏が想定しているレベルにすら、日本のIT業界は達していないように見える」
という一言。自分たちはそれにすら気付かずに批判しても、利益は無いなと。
もう一つ言うなら、日本はオリンピック開催を請け負える状態でもないのに
請け負った。氏の発言は「実現するためには」のスタンスで書かれているが、
実際は「到底できる状態ではない」を如実に言い表していると思う。
なので「頭のイカれた経営者や組織のトップ」という言い草をさせてもらった。
手塚さんのコラムは、感服した。さすがに目の付けどころが鋭いです。
アラファイブ
お疲れさまで御座います。
やはり裾野ではないでしょうか?
前回の東京で、英語の出来るボランティアが死活的に必要で、
それでも出来たのは、英語の裾野が広かったからでしょう。
4万のボランティアのためには、1000万単位の裾野的に出来る
人材が居るのではないでしょうか?
夢夢
今回の件で思ったのだが、経営を勘違いしている人が多いのではないだろうか?
経営のために手段を択ばないだとか、
経営のために非情にならねばならないとか、
経営のために倫理なんて関係なく金が大事だとか、
etc...
色々言われているが、お金さえ得られれば経営と呼ぶというのは経営者失格者のいいわけだ。
現実に負けただけの敗者とすらいえる。
お金は手段でしかなく、人を導き経営理念を実現するのが経営者である。
昔から経営者は、論語(倫理)とソロバン(金勘定などの現実処理能力)を持たねばならないといわれている。
炎上マーケットのような邪道は一時的な効果を生むが、真の利益を生まない。
経営は人でなりたつものであり、継続性もまた必要なので、倫理を無視したものと持続性がないものは経営手法と呼ばない。
今回の件で「お金と名誉しか興味がない拝金主義者」という印象を与えたからマーケティング的にも失敗である。
拝金主義が生んだ哀れな存在なのだろう。
そもそも、組織の理念が「革命」と曖昧で胡散臭い。
経営理念は精神路とは違う。
ビジョンを持たぬ組織に未来はない。
本当に日本の未来を考えているのであれば、日本を腐敗させた利権談合主義者の古典的手法を使用する必要もない。
我々技術者は感情論では騒がない。
単純な論理的な過ちである。
論理が本能になっているし、口下手だから、うまく言葉にできない技術者や、非技術者のヒステリー現象もあるだろうが、今回の件は感情ではなく、論理的ば間違いである。
夢夢
すまん。変換ミスった。
>経営理念は精神路とは違う。
経営理念は精神論とは違う。
夢夢
話しは変わるが、クラッカーに対処できる技術者が求められているわけだから、求められている技術者のレベルはハッカーレベルなので、義務教育的なものでどうにかなる問題なのだろうか?
専門家の学習はお勉強でどうにかなるものではなく、個人の知的好奇心がどれだけあるかで決まると俺は思う。
荻原氏はセキュリティについて何も知らないのではないだろうか?
経営学などの教養もなさそうだし・・・
そこで、エンジニアの学習についてのコラムを書くというのはどうだろうか?
面白いコラムになると思う。
手塚規雄
> 夢夢さん
> そこで、エンジニアの学習についてのコラムを書くというのはどうだろうか?
リクエストありがとうございます。
ここだけ切り出してコラムを書くこともできますが、
「学習」の定義があいまいなので
多分夢夢さんが読みたい内容とかけ離れたコラムになってしまいそうです。
それでも良ければ近いうちに書こうと思います。
夢夢
手塚さんありがとうございます。
誤解がないようにはっきりと書くと、「学習」テーマは今回の件と全く関係がないです。
俺が望んでいるのは、エンジニアライフの一部としての学習だから、
手塚さん本人の感性で「学習」が読みたいなと思った次第です。
俺と違うものだからこそ読みたいと思っています。
本来学習というものは、誰かから「教育」などといったもので押し付けられるものではなく、そういう十人十色のものだと思っています。
夢夢
ふと思ったんだが、技術者としてお客様の要望を叶えるために、IT以外の知識も必要とされると思い、経営学や哲学や業務知識なども広く習得したんだが、意外と経営学を知らない経営者が多い。
また、技術者も経営の知識が必要というわりには、経営者は経営学も教養も何も知らずITも知らない。
なんなんだこれ?
元の記事にてIT業界の不備は技術者が原因のように言われているが、本当に問題なのは経営者の教育不足ではないだろうか?