どれくらい重要? 技術者にとってのコミュニケーション力
本音が語れるエンジニア参加型メディア「@IT自分戦略研究所 エンジニアライフ」。日々、ITエンジニアの「生の声」を公開している。
ここでは、編集部の独断と偏愛によって選んだコラムをテーマ別に紹介していく。今回のテーマは「コミュニケーション」。
「エンジニアは技術力が最も重要だ」「いやコミュニケーション力だって大切だ」――こうした議論はよく存在する。果たして、エンジニアにとってコミュニケーションはどれくらい必要なのか、エンジニアに求められる「コミュニケーション」とはどのようなものか? 「コミュニケーション」についての意見をまとめた。
技術力を生かすためにも、コミュニケーション力は必要
まずは「エンジニアにとってコミュニケーション力はとても重要」派の意見を紹介しよう。
サイオステクノロジーの山﨑靖之氏は、SEやPMとして働いた経験の中で「コミュニケーション力の重要性を思い知らされた」と述べている。
なぜ技術者にコミュニケーション力が必要なのか。それは、「技術者が持つ高い技術力を生かす」ためだ。システムは多くの人がかかわって作り上げるものだ。そのためには、かかわる人同士が「信頼し合う」ことが必要不可欠となる。「正しいソフトウェア、正しいシステムを作る」ために、エンジニアはコミュニケーション力を高める“心構え”が必要であると、山崎氏は述べている。
山崎氏が考える「コミュニケーション力を高めるための心構え」を紹介しよう。
●相手に礼を尽くし協力的であること
- 礼儀正しい言動をする
- お互いに企業の代表として仕事を進めている立場ということを忘れない
- 自分が対峙している担当者の企業内での成功とは何か、を考えた言動を心がける
- Win-Winの関係を大事にする
●誠実であること
- 約束を守り、正直な対応をする
- 問題発生時には早い段階で報告する
●信念を持つこと
プログラマはもっとおしゃべりをしよう
SEやPMにとって、コミュニケーションは非常に重要な意味を持つという。では、プログラマはどうなのだろうか? 「要件定義などを行うSEとは違い、プログラミングの現場ではそれほどコミュニケーション力など必要ない」という見方もあるかもしれない。
「そんなことはない。プログラマにこそ、コミュニケーションが必要だ」と力強く訴えるのは、プログラマの後藤和彦氏だ。
後藤氏は、「ソフトウェア開発はチームで行うものだ。チームワークには、コミュニケーションが不可欠だ」と説明する。プログラマが黙々と作業をしてしまうと、すれ違いや仕様の誤解などが頻繁に起こる。こうした非効率的な作業を防ぐために、一見無駄とも思える「おしゃべり」「会話」を積極的にしてほしいという。
後藤氏が理想とするのは、「プログラマもSEも盛んにコミュニケーションする職場」だ。皆がホワイトボードを囲んでプログラムに関する意見を交換し合い、仕様の誤解を見つけてコードに反映する。そうすることで、誰にとっても分かりやすいプログラムができる。「管理者や年配者が気配りをして、よい現場を作り上げて欲しい」と、後藤氏は述べている。
「コミュニケーションが苦手でもエンジニアとして働ける」
「プログラマ、SEやPMにとってコミュニケーションは重要である」――コミュニケーションの重要性は理解できても、なかなかうまく実行できない場合はどうすればいいのだろうか。コーチとして働く小南ひろみ氏によれは、「コミュニケーションが苦手でもエンジニアとして働ける」という。
コミュニケーションを日々教えているコーチがこうした意見を持っているのは、少し意外かもしれない。だが、小南氏は「エンジニアは人と話さなくてもいい」といっているわけではない。「最初はコミュニケーションができなくてもいい。なぜなら人は変わることができるからだ」と、小南氏は説明する。
「コミュニケーションが苦手」と考える人は、以下の3つの質問の答えを見つけてもらいたい。
- 誰と話すのが苦手なのか(ex:目上の人、上司)
- なぜ苦手だと思うのか(ex:何を話せばいいのか分からない)
- 苦手だとどうなってしまうのか(ex:極度に緊張する)
上記の質問に答えると、「自分が苦手とするシチュエーション、パターン」が見えてくる。問題点が見えれば、改善方法も具体的に考えられる。「いまコミュニケーションに苦手意識があっても、経験を重ねれば慣れてくる。だから、慌てずにコミュニケーションを学んで欲しい」と、小南氏は励ましている。
コミュニケーション不足の対処法
次は、コミュニケーションがうまくいかなかった場合にどう対応すればいいかについて考えよう。
demitasu氏は、「コミュニケーション不全に陥ったときにどう対応すべき?」と、読者に向けて質問を投げかけている。
たとえば、資料の作成依頼を受けたとき。「何のために」「どのような用途で」「いつまでに必要か」という記述が不足している依頼については、作業を後回しにしてしまいがちだ。そうすると、ある日突然「資料はできたのか」「今日には欲しい」といった催促が来てあわててしまう。
こうした事態を防ぐために、demitasu氏はこまめに確認をするようにした。これで改善するなら問題ない。しかし、しばしば「気が付いたら作業内容が変わっている」「相手が記憶をなくしている」「議事録があってもひっくり返される」といった理不尽な状況になるのだという。こんな場合は、どうすればいいのだろうか?
コメント欄には「記憶は曖昧(あいまい)なので、記録をきちんと取る」「相互の合意を取ってから作業する」といった意見が寄せられている。上記のようなコミュニケーション不全は、いつでも起こりうるので、考えておいて損はないだろう。
「相手に伝える」「相手が理解できる」コミュニケーションとは
最後に、「どういうコミュニケーションが理想か」について考えてみよう。ヘルプデスクとして働く組長氏は、外国人とのコミュニケーションの際に気をつけていることを解説している。
日本に来てまもない外国人とコミュニケーションする場合、日本人とのコミュニケーション以上にさまざまなハードルがある。「文化や文脈が分からない」「言葉が通じにくい」といったハードルを乗り越えるため、組長氏は以下の努力をしているという。
- 相手の目をしっかり見て話を聞く
- シンプルかつ短い文章で話す
- 結論/自分がこれからやろうとしていることを先にいう
- 表情豊かに話す
特に「シンプルかつ短い文章で話す」というのは、外国人を相手にする場合は重要なポイントとなる。日本人が普通に使う丁寧な表現は、外国人には分かりにくいことがあるためだ。「~できかねます」ではなく、「ごめんなさい、~できません」と表現する。また、「まず、○○をします。次に××をします」というように、順序立てて話すことも必要だ。
組長氏のアドバイスから分かることは、「相手に理解してもらうために表現方法を選ぶ」ことの大切さだ。そもそもコミュニケーションとは、「相手に伝えたいことを伝える」ために行うものだ。だから、相手が理解できる表現を使うことが重要になる。
組長氏は、相手の日本語能力を考慮して「シンプルで分かりやすい表現に直す」などの配慮をしている。「相手のことを考えてコミュニケーションする」という配慮は、日本人同士でも必要なものだ。見習いたい。
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コメント
はじめ
コミュニケーションが大事…当たり前の話ですよね。
コレは、エンジニアとか理系とかまったく関係なく
人間として持ってて当然な能力であって…ないと、生きてく上で困ります。
恋愛、集団スポーツ、家族、趣味、飲み会、といった仕事以外の場面でもそうですし
広報、秘書、受付、営業、経理、人事、経営企画、コンサル等といった別職種にも大変重要な力となります。
そんな中で、エンジニアの仕事に特別に必要なスキルが「コミュニケーション力!」
といわれると、悲しいほど絶望的な違和感があります。範囲が広すぎるようなニュアンスですね。
あうんの呼吸とか、人と仲良くニコニコするとか、口がうまいとか、よくしゃべるとか、敬語を正しく使えるとか
そういうのも確かにコミュニケーションの範疇ですが…本質を履き違えてるような気がします。
エンジニアに必要な能力は、そういう類とはまた別なものであって
一言で言うと「正確な情報共有能力」だと言えます。
要するに、
1:【他人が自分に伝えたいことを、その人の意図どおり正確に理解する】
2:【自分が他人に伝えたいことを、自分の意図どおりにその人に理解させる】
の2点に集約されます。
エンジニアの仕事は、まず何より「正確に理解すること」から始まります。
他の職種よりも、より強く要求されるとしたらこの部分ですね。
・顧客の要望を正確に理解すること
・業務仕様を正確に理解すること
・PGやモジュール、APIの動作を正確に理解すること
・サーバやNW機器の動作を正確に理解すること
・ログ内容を正確に理解すること
・障害報告を正確に理解すること
…その他もろもろ。
メールを通じてだったり、1対1であったり、集団での会議であったり。
人やシステムの発言/発信の趣旨を、発言者の意図どおりに理解できるか?
きちんとこれができて、始めて要望を満たすシステムの構築・運用に取り掛かれるんです。
他職種であれば、誤解やよくわからない部分があったとしても、口のうまさで煙に巻いてもなんとかなるんですが
最終的に機械の挙動に責任を持つエンジニアとなると、こういうゴマカシが効きません。エンジニアがこれをやると、デスマになります。
つまり、逃げ場がないんです。
よって、人間のいうこと、マシンのいうこと、すべてにおいて「正確に理解できる力」がまず何より第一です。
で、これをベースにしなければ、話す・書くといった「自らの考えを人に理解させる力」がいくらあっても、発信する内容に正確性が出ません。
正確性のない情報共有は、プロジェクトを誤った方向に突き進めます。とても危険です。
なので、まずは「ものごとを正確に理解する」力をつけなければならんのだと思います。
定量的に考えたり、背景を考えたり、推論する力とか…そういう類の習慣が「正確に理解する力」を向上させるために、何より重要だと思いますね。
一般的にいって、相手の言うことを発言者の意図どおり、正確に理解できている人はそうそういません。
理解した「つもり」になってる人が世の中の大多数です。ほとんどどこかに誤解が混じってます。
これは、エンジニアに限らず、先生・営業・医者・コンサル等々…多くの他職種でも皆そうです。
「正確に理解させる力」は、「正確に理解する力」という基礎の充実による自信から表れてくると思います。
「受信能力」に不安がある場合は、まず「正確に理解する力」を鍛えてから、「発信能力」に着手するのがよろしいかと思います。
エンジニアの業務は、甘えが許されない(責任の方向性が、「人間を納得させる」のではなく、「機械の正常な挙動」にある)のですから
機械並みとは言わないまでも、それに準じた「正確な」情報共有が要求されるものだと思います。
Hiro
コメントに対する意見なんですが。つたない解釈なんですがコメントさせてください。上記コメントは確かに正論なんです。正しい。しかし、技術者に求めているコミュニケーションは技術的に○×の報告を求めているのではなくて、「こうすれば当初の目的を達成できる」などのコミュニケーションを求めているのではないかと思います。相手の求める真の解にむけた努力を行っていくことが、技術者としてのコミュニケーション能力スキルの向上につながって行くのではないでしょうか。
というわけで、
・相手がしたい本質をつかんで、それに沿った意志疎通ができることが大事であろうかと、、、