“アラサー”IT系女子と異邦人 -その2-
こんにちは。組長です。前回のコラムで、当初の連載計画に沿って進めると言ってから、舌の根も乾かぬ内に別のネタです😅
以前、英語オンリーな利用者の方が窓口に来ることをコラムに書きました。わたしの書き方があやふやだったため、毎日いらっしゃるような印象を受ける内容だったかもしれませんが、頻度としてはいまのところ月に数回程度です。最近、少しずつ増加傾向です。
残念ながら、わたしは込み入った事情を理解して、正確な対応ができる英語レベルではありません。初めのころはちょうど良い実践の場だと思っていたのですが、やはり仕事は仕事であって、英語の練習の場ではありません。最近は、責任を持って対応できると判断できない限り、基本的にあまり英語で話さないようにしています。取り次ぎ時のご挨拶や、簡単な説明を補足する程度です。
利用者の方もさまざまで、最初から英語で話す方や、何とか日本語で意思の疎通を図ろうと努力してくださる方がいます。しかし、意志の疎通がうまくいかないとだんだんイライラしてくるという場合もあります。無理からぬことです。
- そもそも、困ったことが発生し、焦ってイライラ
- 日本語で自分の状況をうまく伝えられず、イライラ
- スタッフ(わたしたちのことです)が、なかなか理解してくれなくて、イライラ
- スタッフが迅速に/的確に/自分の望んだように対応してくれなくて、イライラ
先日、外国の方が問い合わせに来て、わたしではない別の要員が対応しました。しばらくすると、利用者が突然キレてわめき始め、カウンターをバシバシ叩いています。どうやら、ただでさえ焦っているのに加え、ご自身の状況がなかなかこちらに伝わらずイライラが募ったようです。慌てて自分の作業を終え、サポートに入りました。
- 相手の目をしっかり見て話を聞く
- シンプルかつ短い文章で話す
- 結論/自分がこれからやろうとしていることを先に言う
- 表情豊かに話す
単なる偏見かもしれませんが、日本人に比べて外国の方のほうが、ご自分の要求をストレートにぶつけてきます。非常にシンプルです。とりあえず落ち着いていただかないと、こちらとしても状況が把握できませんが、回りくどいことを言うと相手はイライラしてきます。
まず、1点目。コミュニケーションですので、英語に自信がないからといって目を逸らしたままだと失礼です。それに、真剣に話を聞いているということが伝われば、相手も安心して少し落ち着きます。英会話スクールに通っていた際にも、アイコンタクトは重視されていました。
2点目。大げさに言うと、「あたかも中学校の教科書の英文を直訳したような日本語」で話すということです。日本人の利用者と同じように話すと回りくどく、理解しにくいこともあるようです。例えば、このように言い変えてみたり。
- **していただけますでしょうか → **してください
- **してよろしいでしょうか → **していいですか?
- **できかねます → (ごめんなさい、と必ず先に言ってから)**できません
- **していただけます → **できます。(可能な限り「いつ」できるか付け加える)
- 分かりかねます → (ごめんなさい、と必ず先に言ってから)分からないです
3点目。やろうとしていることを宣言した上で、順序だてて話すことや、結論をシンプルに言うことも大切ですね。
- 「確認します。まず、**、次に**、最後に**」
- 「説明します。まず、**をします。次に、**をします。最後に、**をします」
- 「はい。すぐに、**できます!」
- 「**できますが、時間が掛かります。大丈夫ですか?」
本来ですと、相手に何かを依頼する際は枕詞として「恐れ入りますが」、「申し訳ありませんが」を付けた上で、「**していただけますか」と、疑問の形を取ります。そして、「ごめんなさい」ではなく、「申し訳ございません」といった言葉を使います。
しかし、日本語が不自由な方に対しては、むしろ言葉だけを捉えると少々キツイかな、ぐらいでちょうど良いような気がします。相手によって態度を変えるという意味ではなく、相手にとってより良い対応をする、という意味です。
考え方は人それぞれかと思いますが、「技術的に正しい解説よりも、利用者が理解し納得されること」を重視した対応をするよう心がけていますので、この場合は言葉づかいそのものよりも、内容を正確に伝えることを優先しています。
そのためには曖昧(あいまい)な表現を避け、断言してしまうのが最も有効なのだと感じます。4点目の「表情豊かに」と関連するのですが、失礼の無いよう表情や声のトーンに気を付けて話すこと、日本語が堪能な方に対しては通常通り話すことは、言うまでもありません。
残念ながら「できません」と言う時は、申し訳なさそうな顔で。「できます」と言う時は笑顔で。相手の状況説明が理解できない時は、うーんと困った顔で首を傾げる。理解した時は、「あー! なるほど!」という表情で。
文章化すると、少し子供じみているようで気恥ずかしいのですが、無表情だったり、外国の方だからといって妙にテンパったり、自信なさげに目を逸らせがちに話すより断然、雰囲気が良くなります。言葉以外にもさまざまな情報から、コミュニケーションは成り立ちます。
こうして書いてみると、日本人の利用者に対応する時と実は本質的には変わりがないことに気付きます。普段話す言葉が違うだけで、同じ人間ですから。
利用者がキレてしまった時に対応していた要員は、ヒアリングしようとした内容は間違っていませんでしたし、状況判断も的確だったと思いますが、上記4つのポイントを微妙に外しており、今回の相手にとっては回りくどく感じられてしまったのかもしれません。
横で聞いていて何をしたいと考えておられたのかが理解できたので、「分かりました。すぐにできます! 彼が(と、担当の係員を示し)操作のサポートをします」と、相手の目をガン見して断言したら安心したお顔になり、実際に問題も解決したので最後は笑顔で帰っていきました。よかったー。こちらが真正面からガチで対応すれば、最後は何とかなりますね(笑)。
◆リアルなコミュニケーション
わたしのコラム恒例の蛇足です(笑)。
わたしの母は、ある市場の乾物店でパートをしています。英語圏の国から毎日のように観光客の方が来て、いろいろ聞いていくそうです。母は英語がまったく話せませんが、度胸とハッタリで次々と外国の方をバッサバッサとさばいていくそうでして……。
異国の方:(鰹節の削る前の状態の物を指して)「コレは何デスかー?」
母:「ドライ ボニート!」
異国の方:「コレは何ニ使うのデスかー?」
鰹節のことです。最もよく聞かれる質問の内の1つです。ちなみに、辞書によると削った鰹節は「dried bonito shavings」ですって。何だか「shavings」に納得できないものを感じますが。
母:「(えーと、えーと、英語で『出汁』って何て言うんやろ??? ……あっ!!)ジャパニーズ コンソメ!!」
異国の方:(感心した様子で)「おー! ナルホドー!!」
異国の方:(種類の違う方の鰹節を指して)「では、コレとコレは、どう違ウのデスかー?」
母:「ディス イズ オリジナル ブレンド!!」
異国の方:(感心した様子&英語で)「おー!ナルホドー!!」
異国の方がどういう英語で母に質問したのか正確には分からないのですが、毎日ほど相手にしていると、何となく聞き取れたり理解できた単語から、質問内容が分かるようになったとのこと。「ジャパニーズ コンソメ」は間違った英語ですが、何となく「スープの素(?)=出汁」を作るという発想で「コンソメ」と言ってみたらしいのですが、伝わるようです。
そして、通常の鰹節ではなく、数種類の魚から作っている鰹節があるそうなのですが、使っている魚を英語でどう言うのか分からなかったのと、社長の熟練の(?)配合で作っている鰹節なので、ピンとひらめいて「オリジナル ブレンド」と言ってみたそうです。
まさに、「正確な回答ではないかもしれないが、相手が(大体)理解し納得している」という状況に(笑)。他にも、昆布の違いを聞かれ、最高級の昆布を片手に満面の笑みで「ディス イズ エクセレント!!」と、一言で納得させたり。これは、テレビで英会話の講師が生徒に「Good」ではなく「Excellent!」と言って褒めているシーンを見て、何となく雰囲気で「Excellent」の方が「Good」より良い評価であると感じていたとのことです。
そして、更に質問が……。
異国の方:(当然英語で)「@△×*+;!#%&=$……Australia!」
さすがに、何を言ってるのかサッパリ。しかし、じーーっとその人の目を見つめて一心に聞いていた母。最後の「Australia」でピンと来た!! もしかして、故郷へお土産に持って帰ろうとしている? だって、これ何? とかさんざん聞いておいて今更、「ところで、ワタシ、Australia出身デスねん」とか自己紹介するわけないやん!
と、(勝手に)ひらめいたものの、鰹節は果たしてAustraliaの税関でOKが出るのでしょうか。特に削る前の鰹なんて、知らない人が見たら木の棒にしか見えないかも……。
母がうーーんと唸りながら腕を組み、首をかしげていると、「どうやら無理。もしくは分からない」ということが伝わったのか、観光客の方も「そうよね、やっぱり無理よね」といった風情でお礼を言い、とりあえず鰹節(けずったもの)を買って行ったそうです。
帰宅して、母から得意気にこの話を聞きました。母も自分と同じような方法で、言葉の通じない人を相手にしていたと知り、「この母にして、この子(=わたし)有り」と思う反面、何だか妙に悔しかったのは言うまでもありません(笑)。
悔し紛れに辞書で調べてみましたが、何となく母のハッタリ英語の方が通じやすく感じるのはわたしだけなのでしょうか……。
- 削った鰹節→dried bonito shavings
- 出し汁→soup stock
コメント
すと
国内で海外の方に声をかけられるとドギマギしてしまいますが、
海外だと案外普通に対応(もちろん中学生レベル)できてしまうのは
やはり、度胸と根性が据わるからなんでしょうかね。
国内だと自分が正しい英語を使っているかどうかを
日本人に評価されている気がして…なんだか変ですよね。
組長
すとさん
おはようございます。コメントありがとうございます★
>やはり、度胸と根性が据わるからなんでしょうかね。
そうですね。私の場合は、英会話教室に行ったことも大きいです。そして、海外だと周りが外国人だらけなので開き直ってしまいますし。笑
>日本人に評価されている気がして
分かります!ちょっと恥ずかしいですよね、英語しゃべるの。最終的には単語とジェスチャーで何とかなるのでしょうけど、妙にカッコつけてちゃんと喋ろうとしてしまうんですよね。
母はそれすらも超越した「関西のオバチャン」なので、英語が話せないことに対して抵抗がなく、逆にハッタリで押し切るという……(笑)。
naomsa
はじめまして、naomsa といいます
業界は違いますが、米国で働いたことがある経験から。
コミュニケーションにおいて、表情というのはすごく大事だと思います。
日本(例が簡単なので利用します)での接客サービスマニュアルは非常に
よくできてると思います。しかしながら、本コラムにあります、柔軟な対応に
ついて触れられていませんよね、大抵。臨機応変な対応、つまり自分で考えて
行動するということが重要ですよね。
それって、相手が海外の方だろうが、日本の方だろうが関係ないと思います。
組長
naomsaさん
こんにちは。はじめまして。コメントありがとうございます!
おぉ!米国で働いておられたのですね。やはり表情は日本の方と比べて豊かなのでしょうね。窓口でも、そう感じます。まぁ、外国の方がすべてアメリカの方とは限りませんが(笑)。
>本コラムにあります、柔軟な対応について
このような稚拙なコラムからそのように読みとっていただき、本当にありがとうございます!!そうですね。私の行動(言葉づかいを言いかえる)が、いつも正しいわけではありませんが、相手が自分に何を望むのかを理解し提供すると考えればサービスとしては合格とさせていただいても良いかな、と思って書きました。
モンモン
組長さん、こんにちは。
昔、「日本語混じりでも話せばいいのに日本人は堅苦しいね」と知人のフランス人に言われたことがあります。
まったく日本語が通じない場合は別ですが、「正しく会話ができないとダメ!」と考えすぎてしまう日本人は少なくないと思います。
>1.相手の目をしっかり見て話を聞く
>2.シンプルかつ短い文章で話す
>3.結論/自分がこれからやろうとしていることを先に言う
>4.表情豊かに話す
海外の人への対応時だけではないとは思いますが、日本人特有の曖昧な表現は相談者に対してはイライラ感を募らせてしまうのでしょうね。
クレーム対応でよく言われる相手の話への同調、思いへの共有・共鳴が必要という部分に対して日本人は感情表現が得意ではないせいか苦手なのかもしれません。
過去に上記を実践し、お客様の話を聞くだけ聞いて何も解決していないのに「本当に助かったよ、ありがとう!」と言われたことがありました。
そういう意味では広義でサービス業に携わる人間は感情が豊かであるほうがいいのかもしれませんね。
組長
モンモンさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
>「正しく会話ができないとダメ!」と考えすぎてしまう日本人は少なくないと思います。
はいっ!私です(笑)。
>海外の人への対応時だけではないとは思いますが、日本人特有の曖昧な表現は相談者に対してはイライラ感を募らせてしまうのでしょうね。
そういう場合もあるようですね。逆に、ものすごく丁寧に話してあげるだけで、ご満悦になる方もいらっしゃいますけどね(苦笑)。この人はどういう人かな、とか考えながら戦略を練るのが楽しいです。
2と3って、日本人が相手でもIT系のことがさっぱりな利用者に説明する時は、同様に有効であると、仕事をしていると何となく気付く人が多いと思うのですが、意外に盲点かと思ったのが1と4でしたので、コラムとして書いてみました。
モンモンさんのおっしゃるように、しっかり話を聞いて差し上げるだけで相手にとっては既に8割ほど解決してたり、話しながらご自身でどうすれば良いのか思いつかれることってありますしね。その時にも、解決策が見つかったことを素直に、一緒に、喜んであげるようにしてます。気持ちよく帰っていただきたいですし。