お気楽“IT系女子”の日常を徒然と綴ります。

“アラサー”IT系女子 vs マッドハッター

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 こんにちは。11月だというのに、地元は最高気温が25度近くになる日々が続き、秋の風情があまり感じられない組長であります。IT業界とは異なる世界で「職人」として仕事をしている友人、知人にインタビューする本シリーズ。第2弾の職人さんのお話をお送りします。

■今回は帽子屋さんが登場!!

  • 加藤憲司氏
  • 1978年 京都市生まれ
  • オーダーメイドの帽子店「evo-see」主宰(営業時間:土曜、日曜の12時から19時)

 加藤氏とは友人でして、普段はケンちゃんと呼んでいます。今回は、友人として話せるという点を生かしリラックスモードです!

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■お店について

 お店の名前、面白いですよね。ちょっと由来を聞いてみました。(以下、「」内はご本人のコメントです)。

 「『evo-see』は、『烏帽子』(えぼし)に由来します。その昔、人前で烏帽子を脱ぐことを「恥」とする風習があり、室内でも被っていることが当たり前でした。現在では、例えばフォーマルな場所であっても女性は帽子を被っていることを許され、男性は脱ぐのが当然のマナーとされています。以前、旅行先で教会に入った時、添乗員から「帽子を脱いでください」と強く言われ、癖毛の僕は嫌々ながらも脱ぎました。そういう既存の帽子に対する偏見や、服装の一部として認められていない現状に対するアンチな想いを含め、現代の「烏帽子」を目指すべく、ブランド名を『evo-see(エボシ)』としました」

 店を構えるのは、京都市内にある「あじき路地」というところ。Webページは現在準備中だそうですが、路地でお店を出している他の職人さんや、常連さんがブログで紹介していることもあるのでググってみてください。

 路地は、大正時代に建てられた長屋です。「ものづくりをがんばっている若者に使ってほしい」という大家さんの意向で2004年に入居者の募集を始められ、書類選考と面接を経て最初の入居者6軒が決まりました。それぞれ自分の入居する長屋を改装して入居。こうして、職人の住む路地、「あじき路地」が誕生!現在、新たな入居者を募集されているそうです!

■ものづくりの原点はおじいちゃん

 「ものづくりの原点は、大工だったおじいちゃん」とのことです。さまざまなおもちゃの作り方を教わり、日々近所の山を駆け回って遊んでいた子供だったそうです。巧妙な落とし穴を作ったら、偶然にもおじいちゃんが落ちてしまってこっぴどく叱られつつも、「全然、気付かなかった。すごい出来栄えだ!」と褒められたり、教えてもらって作った弓矢が精巧にでき過ぎていため、一緒に遊んでいた従兄に危うく怪我をさせそうになったり。やはり、「ものづくり」を職業とする人は、幼少期に必ずその原点となる出来事がありますね!

 高校卒業後、調理の専門学校へ。幼少期に自分でご飯を作って食べていたのが楽しかったこと、親や友達に食べさせて美味しいと言われることがうれしかったから、ということです。

 しかし、実際に調理の世界の入り口に立ってみれば、料理に触れることさえ出来ない理不尽な修行時代があることが垣間見えたり、偏見でしか料理を語れない先達の話を聞き疑問を感じることも。「料理は好きだけれど、だからこそ自分にとっては趣味で良い。到底、自分には向いていない職業。」だと、その道を諦めることに。

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 専門学校を卒業後、就職せずいろいろなバイトを掛け持ちする日々を過ごす中、高くて何着も買えなかった流行の服がどうしても欲しくて、洋裁の仕事をしていたおばあちゃんに習い自ら製作!某ブランドのパンツを真似て作ったものを履いて店に行った際、「そのパンツ、よく手に入りましたね~。」と店員に声を掛けられ、ふと、落とし穴に落としてしまったおじいちゃんを思い出し大爆笑。店員さんをも欺く、恐るべき器用さ!!

 更に、くせ毛で雨の日に髪型が決まらない悩みを解消するため、帽子作りに挑戦。頭が大きく、既成品が合わないため、「じゃあ、自分で作ってみよう!(服も作ったし)」と。またまた、上手く出来たため被って出掛けると友人から「自分にも作って!」と評判に。このことが帽子屋さんを始める原点に。「なんしか、子供の時からない物は自分で作るタイプだった」とのこと。帽子屋さんなだけに、まさに脱帽……(すいません)。

 帽子を作り始めると作る度に上達。なんせ、器用なもんで(笑)。そこで、「歳も歳だし、将来を考えて帽子を商売にしようか」と考えていたところ、運命の出会いが。あじき路地の入居募集広告を見つけました。倍率は30 倍!商品の見本を持ち込み、大家さんや他の入居者にプレゼンする毎日。2か月以上通い詰め入居が決定し、晴れてオーダーメイドの帽子店「evo-see」が誕生!

■ものづくりとは、プロとは

 自身のことを、

 「職人だなんておこがましい。敢えて言うと『ものづくりが好きなアラサー男子』かな、と思っている。修行をしたわけでもなく我流で作っているし、他にやってみたいこともあるし、そもそも「自分のものづくり欲」を満たすために続けているので、職人というより、ひたすらに『ものづくり』が好き。人生を懸けて、『(一生付き合える)手作りの趣味』を探し続けているのかも」

 と、言うケンちゃん。

 「我流で作っている」「ものづくり欲を満たすため」と言っても、たくさんのお客様に帽子を作っているプロ。パターン(型紙)を引く時、作りたい帽子をイメージして用紙を広げると、その時点で引くべきラインが見えている状態になっているそうです。また、帽子のラインを決めるのにセオリー通りの計算式を用いるよりも、自分のフリーハンドで引く方が帽子のラインがしっくりくることもあるのだとか。経験の賜物ですね。

 プロとアマの違いは、「お金をいただくことに対しての責任が伴う点が違う」とキッパリ。お客様からのオーダーを満たしつつ、「自分が満足のいくクオリティに仕上げたものしか渡さない」というポリシーを貫くこと、現状に満足せずさまざまなデザインや素材の商品を作ることが、プロとしてのこだわりのようです。

■自分にとって帽子とは

 現在、約1カ月待ちの人気店「evo-see」。将来もっと有名になったとしても、作った帽子が自身のステイタスになるわけではなく、

「僕にとっては所詮、帽子は帽子。特別なモノでも何でもなく、あくまでもファッションの脇役であり、例えば僕の場合は雨の日の湿気などで髪型を気にせず、楽しく出掛けられるためのただの『服装の一部』でしかありません。過剰な思い入れはありませんが、帽子が「服装」の一部として差別・区別されることは許せません」

とのこと。過剰な思い入れはなくとも、自身の核となるこだわりはあるようです。

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■忘れられない出来事

 今年3月の震災の頃。

 震災前に福島県から来られたお客様にオーダーをいただいており、家に引きこもって作業している上、テレビも家になく、震災が起きたことにまったく気付かなかったケンちゃん。

 3月11日に完成した帽子を発送しようとした際、集荷の人から「こちらの地域ですと、しばらく荷物が届かないかもしれませんがご了承くださいますか?」と言われて初めて震災の事を知ったそうです。代金をすでにいただいていたこともあり、連絡が付かなくなったそのお客様のことをずっと心配していたら、後日無事に商品を受け取ったという連絡が。しかも、商品を気に入っていただき違う生地での追加オーダーまでいただいたそうです。素敵な出来事です!

■これからの自分

「10年後どうなっているのかは、正直わからない。安定しない職業だし、体力も必要だから現実はやっぱり辛い。お金も溜まらないし、もし転職を考えたとしても履歴書に書けるような経歴でもない。それでも、注文がもらえた時、作ったものを喜んで買っていただいた時に『やってて良かった!』と感じる。作ったものを買っていただく、それだけで本当にうれしい。自分が作ったものが認められたということだから。

 きれいごとのように受け取られるかもしれませんが、自分が死んだ後にこの世に残るものなんて誰かの中の思い出や記憶だけだと思うんです。だけど、僕にはそれら以外にもう1つ「帽子」という分身をこの世に残せる。モノを造り売るということは自分にとってはそういうこと」

Kenchan 

  楽しいだけでは続いていかない厳しい現実はありますが、それでも自分が納得のいく帽子を作り続け、お客様に喜んでいただくことが心の糧となるのですね……。


 いかがでしたでしょうか。わたし的には「飄々としていて面白い友人」というイメージでしたが、改めて「帽子屋さん」としての話を聞いてみると、「職人なんておこがましい」など謙虚なことを言いつつ、ものづくりやプロとしてのこだわりが随所に光る興味深い話が聞けたと思いました。

 ちなみに、もし違う職業になるのであれば、レゴブロックでさまざまなものを作る「レゴビルダー」になりたいそうで。いえ、本気だそうです(笑)。つくづく、「何かを作ること」が好きなのですね。最近は、服飾専門学校でも帽子科が出来てきているのが嬉しく、機会があればいろいろな人と語り合ってみたいそうです。

 「あじき路地の入居も現在募集中ですので、ご応募お待ちしてます!」とのこと。京都にご旅行の際はぜひ、お気軽にどうぞ。

Comment(2)

コメント

インドリ

今回も面白かったです。
私達情報技術者と関係のなさそうな帽子職人さんも同じ魂を持っているのですね。
これほど業種が違う人が、同じ事を考えている事に驚きと感動を覚えました。
全ての物事が「もの作り」という言葉で繋がっているのかもしれませんね。

組長

インドリさん

こんにちは。コメントありがとうございます。

> これほど業種が違う人が、同じ事を考えている事に驚きと感動を覚えました。

おっしゃる通りです!自分が2人の職人さんと話してみて本当に驚きました。
「自分と同じ(ような)こと考えてるー!」って。嬉しいやら、驚きやら。
非常に新鮮でした。

正直、自分の腕だけで勝負している彼ら(=第1回のショコラティエさん、今回の
加藤氏)の方が、会社に属し、ぬるま湯状態に慣れて勉強することもなく、
ズブズブなIT系の技術者よりも、余程プロとしてあるべき姿で働いていると
感じました。


※当然、全てのIT系技術者がそうだ、というわけではありませんが……。
もちろん、インドリさんがそのような人種に当てはまるという意味では
ございませんので、ご了承くださいませ。むしろ、超プロ!(笑)

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