@IT自分戦略研究所 編集部が独断と愛によって選んだ「テーマ別コラム」をピックアップして紹介します。

エンジニアにも役立つ! 講師の「教育ノウハウ」ノート

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 本音が語れるエンジニア参加型メディア「@IT自分戦略研究所 エンジニアライフ」。日々、ITエンジニアの「生の声」を公開している。

 ここでは、編集部の独断と偏愛によって選んだコラムをテーマ別に紹介していく。今回のテーマは「講師に学ぶ『教育者の心得』」。教える立場の人間が持っていたい心得やノウハウ、勉強方法をまとめた。

教える立場の人間が持っていたい心得×8

 まずは、講師が人に教えるうえで気を付けている「心得」を学ぼう。IT講師として働く阿部直樹氏は、新入社員研修を行う際のポイントを3つ紹介している。

 1つ目のポイントは、「研修の意味付けを行うこと」。新入社員は、教えてもらうのが仕事だ。だが、学校と会社では「給料をもらうか否か」という点が大きく違う。そのため、「教えてもらいながら給料ももらっている」という立場を、新入社員たちにしっかり認識させることが重要になる。

 2つ目のポイントは、「新入社員のリズムに合わせて研修をすること」。通常、研修は1時間半でひと区切りの場合が多いが、新入社員研修の場合は1時間にしているという。彼らの集中力に合わせて、効率的に勉強してもらうのが狙いだ。

 最後のポイントは「専門用語を多用しないこと」。エンジニアが当たり前だと思っている単語でも、新入社員は分からないことが多い。できる限り分かりやすい単語を用いて、噛み砕いた説明を心がけているという。

 次に、新入社員研修を担当するエンジニアの教育ノウハウを紹介しよう。大久保仁氏は「講師の5カ条」を提示する。

  1. 最近の若い者は……と思わない
  2. 年齢は気にするべからず
  3. 講師として責任感を持つ
  4. 仕事を楽しむことを教える
  5. 講師が夢と希望を持つ

 大久保氏が、「講師」という役割だけではなく、同じ会社で働く「先輩」としての役割を意識していることにお気付きだろうか。新入社員にとって、最初の1年は非常に重要だ。その期間に得たものが、今後の仕事ぶりを決めるといっても過言ではない。そして、一緒の職場で働く先輩の影響は思った以上に大きい。「先輩として仕事を楽しむ姿勢を見せ、自分自身が夢と希望を持って新入社員に接したい」と、大久保氏は語る。

「褒めなければ駄目ですか?」無理せず人を褒める方法

 人に教えるときに「褒めることが大事」というのは、よく聞く話だ。だが、どう褒めればいいのかについては、悩む人がいるのではないだろうか。

 小南ひろみ氏は、「コーチなのに人を褒められないことで悩んでいた」と打ち明ける。

 小南氏は、どうにかして人を褒めようと頑張っていた。しかし、出てくる言葉は「すごいですね」と「素晴らしいですね」の2つだけ。なぜ、人を褒められないのか? 小南氏は「そもそも自分が人から褒められることが苦手で、褒められなくても大丈夫」だからだと気が付いた。褒められ慣れていない人は、人を褒めることができないのだろうか……?

 悩んでいた小南氏に、上司がアドバイスをくれた。「無理に褒めなくてもいいから、相手のちょっとした変化を伝えてあげてほしい」。小南氏は無理に褒めることをやめ、「○○さんの意見、参考になりました」などと伝えるようにした。「褒めた際に相手がうれしそうな顔をするのを見て、自分もうれしくなった」という。

 褒めることは、コミュニケーションを楽しむためのスパイスである。もし、人を褒めるのが苦手だったら、小南氏のように「ちょっとした変化を相手にきちんと伝える」方法を試してみてはいかがだろうか。

十分な知識は未熟な経験を超える――講師の勉強方法

 以上、教育者が現場で使えるノウハウを見てきた。次に、「勉強方法」について紹介しよう。教える際に最も重要なのは「予習」なのだ。

 グローバルナレッジネットワーク 取締役で講師も務める横山哲也氏は、「教科書と経験、両方から上手に学ぶ方法」を伝授する。

 実践で役に立つ知識を修得するために重要なことは3つある。

  1. 体系的な知識を教科書から身につけていること
  2. 経験から学ぶこと
  3. 想像力を働かせること

 前提条件として必要なのは「教科書に書いてある知識」である。基礎知識があれば、経験から学ぶことができる。自分が得た経験から、ほかの人も使える「法則」を想像するのだ。

 「まずは経験」という経験至上主義者の意見に、横山氏は反論する。「経験」は確かに重要だが、さまざまな経験に共通する「法則」を得るためには、それを発見するだけの「知識」が必要だ。「十分な知識は未熟な経験を超える」と、横山氏は説いている。

「人に教える」というマインドを持つだけで、勉強方法が変わる

 講師は「教える」という目的のために勉強する。この方針は、講師でないエンジニアも使える。『息の長いエンジニアでゆこう』のヨギ氏は、独学する際に「人に教える」という目標を決めることを推奨している。

 例えば、新しい技術を学びたいとしよう。スキルアップのためだけに勉強するより、「得た知識を誰かに教えよう」と思うとがぜんやる気が出てくるという。やる気が出るだけではない。人に教えるという目線を持つことによって、「自分が何を理解していないか」に気付くことができる。独学する際にも、「人に教える」というマインドを持っておこう。得るものは多いはずだ。

「教える」仕事のやりがい

 最後に、「教育者」のやりがいについて。IT講師の中越智哉氏は、「IT研修インストラクターのやりがい」を教えてくれた。

 インストラクターのやりがい、それは「研修者の顔が直接見える」ことだ。「プログラマとして仕事をしていたときは、利用者の顔が見えなかった」と、中越氏は語る。「システムの評判がいいらしい」と聞いても、いまいち実感がわかなかったという。

 一方で、講師は受講者の反応を見ることができる。受講者の顔つきや教室を出ていくときの声、アンケートなどのフィードバックがうれしかったという。

 プログラマと講師、どちらの仕事にも魅力ややりがいはある。しかし、「もっと相手の反応が知りたい」という人は、「人に教える」仕事をしてみてはいかがだろうか。いきなり「講師」をやるのは難しいかもしれない。しかし、「勉強会を開いてみる」など、エンジニアがすぐに始められることはある。

 「自分のために勉強する」のは、もちろんいい。さらに1歩進んで、「人に教える」ことを念頭において勉強してみてはいかがだろうか。

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