@IT自分戦略研究所 編集部が、エンジニアライフのおすすめコラムをピックアップします。

人間は進歩しているのだろうか?

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 本音が語られるエンジニア参加型メディア「@IT自分戦略研究所 エンジニアライフ」。日々、ITエンジニアの「生の声」を公開している。

  • 【考え方】人材育成、講師の視点から(7)
  • 【働き方】ベスト・オブ・メンバーを目指そう
  • 【スキル】なぜ、エンジニアは木から落ちたがる?

【考え方】人材育成、講師の視点から(7)

 編集担当者は、取材や打ち合わせの席でメモを取るのに紙のノートとペンを使っている。ほかのメンバーを見るとノートパソコンを持ち込んで、メモを取りながらメールをチェックしたりと、デジタルなツールを使いこなしている。そういう風景を目にするたびに、「やっぱりノートパソコンを使った方が便利なのかなぁ」と思ったりもする。

 (株)永和システムマネジメント コンサルティングセンターによる『システム開発に関わる人をイキイキさせるヒント』。今回は天野勝氏がアナログなツールとデジタルなツールの関係についての考察を披露している。

 同氏は、アジャイル開発や、チームファシリテーションの研修で、受講者から「タスクボードは、模造紙と付箋紙というアナログなツールを使わなくてはならないのですか?」という質問をよく受けるという。「ぜひ、アナログなツールから使い始めてください」と答えるが、「アナログなんて古くさくて、かっこ悪いから使いたくない」という反論を受けることもしばしばだそうだ。同氏はこのような態度を「ツールの裏側にある考え方まで含めて、否定」していると警告している。

 コンピュータで動作する課題管理ツールやタスク管理ツールが増えてきているが、「ツールに振り回されてしまっている例」もあるという。ひどい例になると「計画に追従していくために、タスクのリスケジュールが多発し、気がつけばリーダーがツールとずっと格闘していて、タスクをこなす時間がとれないという」ことさえ起こるそうだ。

 デジタルなツールを使うときはツール自体の使い方に縛られてしまい、それに追従するだけに終わることが多いということだろう。その点、紙などのアナログなツールは「手軽に使い始めることができて、工夫しやすい」という。「運用のルールも柔軟に変えられる」というメリットもあるという。これならば、ツールの使い方に縛られるということはないだろう。

 しかし、同氏は完全にデジタルツールを否定しているわけではない。「データを保管する機能」とか、「ネットワークを使って、遠隔地と情報を共有する」という機能はデジタルツールならではの機能だ。

 今のところはデジタルツール、アナログツールどちらにも良い点、悪い点があるという状態だが、天野氏は「技術の進歩によって、デジタルツールの使い勝手が向上し、まるで魔法かと思うようにアナログツールに寄ってきています」としている。

 人間に、コンピュータに合わせるように強いることは簡単だ。しかし、真に使いやすいコンピュータは、人間に合わせてくれるものだろう。ソフトウェア技術の進歩により、コンピュータが人間に歩み寄ってきていると感じるのは編集担当者だけだろうか。

【働き方】ベスト・オブ・メンバーを目指そう

 働きながら、「どうして自分の部署の長は、仕事の邪魔ばかりするのだろう? 」と感じている方は少なくはないだろう。そもそも、現在の日本の社会には、素晴らしいリーダーとなる資質を感じさせてくれる人が少ないという声も聞く。特に、政治の世界を見るとリーダーらしい人間は皆無と言っても言い過ぎではないだろう。

 『101回死んだエンジニア』Anubis氏はこの問題について、「リーダーというのは自然発生的に決まるもの」であり、「最初から役割で決めるのも無理がある」としている。確かに、社会で活動しているリーダーのほとんどは役割で決まっているようにも見える。

 そして同氏は、優れたリーダーが現れない理由として、「優れたメンバーが少ないからじゃなかろうか」と問題提起した上で、「時代は”ベスト・オブ・メンバー”が求められているのではなかろうか」と分析する。

 同氏は「ベスト・オブ・メンバー」の例として、「フォローがうまい」とか、「フットワークが軽い」といったものを挙げ、「大部分の人が無理なく手に入れられるポジション」だとしている。メンバーそれぞれが、得意なことで貢献できるような社会が望ましいということだろう。

 このような社会ができれば、「リーダーとしてふさわしい人が勝手にリーダーに上っていく」という。まさしく、「リーダーというのは自然発生的に決まるもの」という社会だ。

 最近は暗いニュースが多く、景気も決していいとは言えない。その中で楽しくやっている企業、業績を上げている企業を見ると、「やりたいことを気心の知れたメンバーでやっている」というところが多いようにも見える。日本の社会の閉塞感を打ち払うには、それぞれの人間が自分のやりたいことに思いっきり挑戦できる社会を作ることが必要なのかもしれない。

【スキル】なぜ、エンジニアは木から落ちたがる?

 「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、さらに(プロジェクトを)遅らせるだけだ」。フレデリック・ブルックス氏の名著「人月の神話」にある、「ブルックスの法則」の一節だ。

 人月の神話が世に出たのは1975年のこと。それから36年たった今、エンジニアはこの法則を克服できているだろうか? 今でも「デスマーチ」という言葉をよく聞くのだから、答えは明らかだ。人間は何も進歩していないのではないだろうかとも思ってしまう。

 気分はどうしようもなくSE虚数(i)氏は、この法則にはまるのは人間の本能であり、仕方のないことだという。そして、泥沼に落ちていくエンジニアの心理を巧みに描いている。

 プロジェクトが遅れ始めると、結末が分かっていても上司の心の中では「増員せざるをえないのです。“増員する以外に良い案なんてない”と言って、本能がささやく」という。そして部下の心にも「増員しないと上司が許してくれないし、説得するのも面倒だし。って本能がささやく」のだという。

 編集者は、かつて親しくしていたエンジニアに、「デスマーチを避けるにはどうすればいい」と聞いたことがある。もちろん、聞く方も答える方もブルックスの法則は承知の上だ。そのエンジニアは「遅れそうなプロジェクトには、どこか無理なところがある。そういう『におい』をかぎ取って、まずいプロジェクトには手を出さないようにしている」と教えてくれた。安易な「逃げ」かもしれないが、プロジェクトにかかわる人間全員を幸せにするには、そういう決断も必要だと思う。

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