第724回 前提構造理論(OST)のススメ3・構造部2 認知の前提構造(C3)
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
「前提構造理論(OST)のススメ」も3回めになりました。今回は構造部の中心概念となる3つの前提構造の一つである認知の前提構造(C3)についてお話しします。
■認知の前提構造とは
同じ出来事が起きても、人によって捉え方、つまり認知は違いますよね。例えば、仕事の締め切りまで残り一時間という状況で、
「もう1時間しかない」
と焦る人もいれば、
「まだ1時間もある」
と余裕にしている人もいます。
この捉え方の違いってどこから来るのでしょうか?
この捉え方の違いは、性格や能力などの差ではありません。せっかちな性格の人であっても「まだ1時間もある」と捉えることもありますし、能力が高い人であっても「もう1時間しかない」と捉えることがあります。
この捉え方の違いは出来事(=事柄)をどのように捉えるのかという頭の中で無意識に動いているフィルターがあるからです。このフィルターこそが前提構造で、認知に働く前提構造といぅことで認知の前提構造(C3)と呼びます。
■C3を構成する3つの要素
認知の前提構造は3つの要素が組み合わさってできています。
Context:全体像
Cause:因果関係
Criteria:価値基準
Contextとは、事柄を「どこまでの範囲で捉えているか」という全体像を示す要素です。
例えると、これはスマホの地図アプリのズーム機能のようなモノです。目の前の作業(=現在地)だけを拡大してみているのか、それともプロジェクト全体(=大きな地図)まで引いてみているのかの違いです。この全体像がズレていると、今本当に何を優先すべきかが正しく把握できず、局所的な対応になってしまいますね。
Causeとは、事柄が「なぜ起きたのか?」「この先どのようなことが起こるのか?」という原因と結果の繋がりを示す要素です。
これも例えるなら、お客さんから突然、「納期を1週間早めてほしい」と依頼されたといった事柄が起こったとしましょう。これに対して、単なるお客さんのワガママなんだと捉えるのか、それとも、お客さんも厳しい状況に追い込まれているからなんだと捉えるのかの違いです。この例は原因の方に向けていますが、当然ここから繋がる結果もあります。こうした因果関係の捉え方がズレていると、どれだけ努力しても的外れな対処(場当たり的な行動)を繰り返してしまいます。
Criteriaとは、事柄が「何をもって正しいと判断するか」その基準を示す要素です。
これも例えてみると、今行っている仕事について、「ミスをしないこと」が正しいのか、「納期を守ること」が正しいのか、「相手に喜んでもらうこと」が正しいのか、その人なりの正しさを表す要素です。この価値基準が設定されていないと、いつまでも手直しを続けたり、人によって判断がブレたりして、判断が迷走してしまいます。
■認知の歪みはどこから生まれるのか?
このように認知の前提構造としてContext、Cause、Criteriaという3つの要素を定義することで、認知の歪みはContext、Cause、Criteriaいずれかの欠如、もしくはそれらの複合によって生じることが分かります。
① Context(全体像)の欠如
全体像が把握できていない状態では、自身の行動が全体のどこに位置づくのか、今、何が本当に重要なのかが判断できなくなります。
その結果、局所最適な行動を選び続けたり、本質からズレた努力を重ねるといった状態が生じてしまいます。
この状態は怠慢などではなく、全体構造が欠落していることによる認知の歪みです。
② Cause(因果)の欠如
因果関係が見えていない状態では、何が問題の原因なのか、どの行動がどの結果に影響しているのかを特定できなくなります。
その結果、表面的な対処に終始する、同じ問題を繰り返す、行動が場当たり的になるといった状態に陥ってしまいます。
原因が把握できない限り、行動は「正しさ」ではなく「思いつき」に支配されるという認知の歪みを起こします。
③ Criteria(基準)の欠如
判断基準や完了条件が不明確な状態では、何をもって十分とするのか、どこで判断を終えるのかが定まりません。
その結果、判断が人によってブレる、無限に手直しが発生する、行動が止まる、あるいは過剰になるといった問題が生じます。
これは能力不足ではなく、完了条件が構造として成立していない状態です。
■C3を知ることの最大のメリット
このC3、認知の前提構造を知ることで、私たちが認識するモノの捉え方(=認知)が何に基づいて立ち上がっているのかが分かります。
仕事がうまくいかないときや、話が噛み合わないときに、
「能力が低い」
「性格が悪い」
「意識が足りない」
とその人を責めるのではなく、
「C3のいずれかが欠けているだけだ」
と捉えることができるようになります。だからこそ、
「もっとやる気を出せ!」
「本気で取り組めよ!」
「気合を入れろ!」
なんて無理を言うのではなく、
「もう少し範囲を広げてみてみよう(Context)」
「別の原因はないかな(Cause)」
「何を大事にしようとしているのかな(Criteria)」
といった欠けている情報を補うだけで、自然と捉え方(認知)が変わり、行動も変わっていくのです。
■今回のまとめ
今回はここまでです。
今回の内容をまとめると、
- 同じ出来事に対する捉え方(認知)の違いは、性格や能力ではなく、頭の中で無意識に働く「認知の前提構造(C3)」というフィルターの違いによって生じる
- C3は全体像(Context)、因果関係(Cause)、価値基準(Criteria)の3要素からなり、これらが欠けると局所的・場当たり的な行動や判断のブレといった「認知の歪み」が起こる
- C3の仕組みを理解すれば、問題を「人のせい」にして責めるのではなく、欠けている前提情報を補うことで自然と捉え方や行動を改善できるようになる
になるかなと思います。
それでは、次回は「行動の前提構造(AS)」についてお話ししますね。