第731回 前提構造理論(OST)のススメ10・介入部3 A介入(TVD)
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
今回は「前提構造理論(OST)のススメ」も10回めになりました。介入の3回めになる今回は行動(A)に対する介入であるA介入のお話です。
■A介入が行われるケース
CARでは認知が起こると行動が立ち上がります。しかし、この時、認知の通りの行動が立ち上がらないことがあります。これがA欠損と呼ばれる状態です。この時、行動の前提構造(AS)の内、価値、時間依存性のいずれかが前に出てこない「後景化」と呼ばれる状態になっています。
この状態ではでは以下のようなことが起こります。
- 分かっていても行動できない
- 重要だと分かっている行動ほど後回しになる
- 同じような行動パターンが繰り返され続ける
- 行動の優先順位を実質的に変えられない
これらが典型的なA欠損の例です。例えば、
- 勉強をしようと思っていてもついスマホを触ってしまう
- ためになる本を読んで実践しようと思っても、なかなか実践できない
- みんなで決めたルールがいつの間にか形骸化してしまい、誰もやなくなっている
こんな感じです。このような場合、つい自分のやる気やモチベーションのせいにしたり、環境のせいにしたりしませんか。OSTはこのように行動が立ち上がらない状態を個人のマインド論などにせず、前提構造に問題があるとして、この前提構造を整えることで、自然と行動が立ち上がるような状態を作っていきます。
■A介入の具体的な方法(TVD)
A介入は時間価値設計(Time Value Design:TVD)と呼びます。TVDも基本的にはCUP同様に統合型CAR介入プロセスを踏襲していますが、実際にはこのようになります。
StepA:ASの可視化
StepB:偏りの一点特定
StepC:一点再設計
StepD:再配置
StepA:ASの可視化
最初のステップでは、過去に紹介した行動ポジションマップを使い、過去の自分の行動を行動ポジションマップに表現してみます。対象とする行動は概ね過去1週間程度で構いませんが、これらを行動ポジションマップ上の4つのゾーンに配置していきます。
αゾーン(頂位):価値が高く、時間依存性が高い行動
βゾーン(要位):価値が高く、時間依存性が低い行動
γゾーン(緊位):価値が低く、時間依存性が高い行動
δゾーン(底位):価値が低く、時間依存性が低い行動
ここで注意しなければならないのは行動の前提構造である価値と時間依存性の考え方です。これらは理想で考えるのではなく、実体で考えます。
例えば、「ネットサーフィン」という行動について、その時の自分はこのネットサーフィンに価値を置いていたのであれば、α、もしくはβゾーンに入ってきます。
逆に「資料作成」という行動について、その時の自分は資料作成をやる必要性を感じていない、つまり時間の引力に引っ張られていないと考えていたのであれば、それはβ、γゾーンに入ってきます。
つまり、このASの可視化で行う行動ポジションマップへのマッピングは理想(=やるべき姿)を置くのではなく、その時の自分の実体(=やってきた姿)で置くようにします。
StepB:偏りの一点特定
次に行動ポジションマップを見て、自分の行動に偏りがないかを見定めます。
例えばαとβゾーンに行動が偏っていた場合、その時の自分は「価値」に重きを置いた行動を取っていたことになります。
また、αやγゾーンに行動が偏っていた場合、その時の自分は「時間依存性」に重きを置いていた行動になります。
このように、自分の行動が「価値」「時間依存性」の視点で見た時の偏りを1つ選びます。
StepC:一点再設計
StepBで選んだ行動の前提構造の偏りを見直します。
例えば、
価値に重きが置かれていた場合 → 本当に価値の高い行動ばかりだったのか?
時間依存性に重きが置かれていた場合 → 本当に時間依存性の高い行動ばかりだったのか?
のように、その前提構造の捉え方、前提条件を再度見直します。
StepD:再配置
ここは行動再配置(Repositioning)と呼ばれるのですが、StepCで見直した価値、時間依存性のいずれかの考え方に従って、これからの行動を行動ポジションマップに再配置してみます。
ここは未来の行動を行動ポジションマップに配置するのですが、その行動は概ね1週間を基準にします。こうすることで、自分が見直した前提構造に従って行動が自然と立ち上がる状況を作り出しています。
ここで注意するべきこととして、やるべきことは前提構造の捉え方を変え、その前提で行動を再配置することです。行動だけ見て、これを本来あるべきゾーンに配置するようなことはしません。
こうしたところが、7つの習慣の時間管理のマトリックスなどに代表される規範系(正しい事)マッピングとの決定的な違いになります。
■今回のまとめ
今回の内容をまとめますと、
- A介入とは、認知しても価値や時間依存性が後景化して行動できない状態(A欠損)に対し、マインド論ではなく行動の前提構造(AS)を整えて自然な行動を促すアプローチである
- TVDは、過去1週間の行動の実体を4つのゾーン(α・β・γ・δ)に可視化し、偏りを1点特定、再設計した上で、未来1週間の行動を再配置することで偏った前提構造を見直し、新たな行動を立ち上げる(前景化)する
- 「あるべき姿」で行動を分類する時間管理マトリックス等とは異なり、行動ポジションマップは前提構造によって立ち上がってくる行動を表現している
このようになります。
それでは、次回は結果に対する介入であるR介入(REP)についてお話ししたいと思います。