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第725回 前提構造理論(OST)のススメ4・構造部3 構造の前提構造(AS)

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  こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 「前提構造理論(OST)のススメ」も4回めですね。今回はC3に続き、行動の前提構造(AS)についてのお話です。

■行動の前提構造とは

 良くある話ですが、「分かっているのにできない」「やるべきだと思いながら後回しにしてしまう」といった状態を、意志の弱さや優先順位付けの失敗として説明しちゃうことってないですか。

 この考え方の根本にはそれ以外に説明がつかないという側面があるように思います。

 しかし、認知から生み出される行動は何かしらの前提条件の下で配置されていると考えたらどうでしょうか。

 このように考えると、行動は努力や根性などのマインド論によって選ばれているのではなく、前提によって決まるということになりますよね。

 この行動が選ばれる前提を行動の前提構造(Action Salience:AS)と呼びます。

 ASとは、人や組織において、どの行動が前面化し、選ばれやすくなり、繰り返されてしまうのかを規定している前提構造です。

 ここで扱うのは、正しい間違っている正誤、良い悪いといった善悪、意思・努力・モチベーションなどの強弱でもありません。ASは行動が立ち上がる前にあって、どのような行動が選ばれやすいかを決めてしまう前提のようなモノです。

■ASを構成する2つの要素

 ASは、次の二つの前提条件によって構成されています。

  • 価値(Value)
  • 時間依存性(Time Dependency)

 価値(Value)とは、その行動がどの成果・貢献・評価・意味に接続されていると認識されているか、という前提条件です。

 時間依存性(Time Dependency)とは、その行動がどの程度「今すぐ対応しなければならないか」「後回しにできないか」という制約の強さのことです。

 行動は、この二つの条件の組み合わせによって、前面化しやすさが決まります。そして、これらは、行動の優劣や正誤を決める基準ではなく、行動が「前に出やすくなる条件」を規定する要素であり、本人の自覚とは無関係に起こります。

■行動ポジションマップ(Action Position Map)

 ASは、行動が前に出てしまう条件そのものを扱う構造概念でですが、実際には、

  • どの行動が集中しているのか
  • どの行動が押し出されているのか
  • 何が選ばれ続けているのか

を視覚的に把握する必要がありますよね。そのためのツールとして、行動ポジションマップ(Action Position Map)であります。

 行動ポジションマップは縦軸に価値、横軸に時間依存性を引いた2次元のマップです。このような2次元のマップではASの強弱によって4つの領域に分かれます。

no72501.png

 ここで注意したいのが、この行動ポジションマップは「どの行動が正しいか」「何をすべきか」を示す処方ツールではありません。また、

  • 努力量の比較
  • 業務量の多寡
  • 忙しさの評価

を測定する道具でもありません。

 行動ポジションマップが扱うのは、あくまで「ASによってどの行動が自然に前面化し、どの行動が後景化しているか」というASによる行動の配置を視覚化する目的で使われます。

 特に、7つの習慣やこのコラムでも良く話題にあがる時間管理のマトリックスとは形は似ていますが、意図している所が全く違います。

  • 時間管理のマトリックス...行動を緊急軸と重要軸で表現するツール(行動を4つの領域に分類するツール)
  • 行動ポジションマップ...AS(価値、時間依存性)という前提構造の強弱によって、行動がどのように立ち上がるかを視覚化するツール(ASによる行動の立ち上がりを視覚化するツール)

 ちなみにこのような前提構造を観測するツールは認知(C)にもあり、こちらは認知前提マップ(Cognitive Premise Map)と呼びます。

 尚、ここでお話している内容はあくまで構造の話ですので、行動ポジションマップ上に現れた行動をどうするべきかといった話はありません。この辺の考え方は前提構造理論が原理理論であるが故です。

 そして、これは認知でもそうなのですが、認知を変えたい、行動を変えたいといった場合には認知や行動に対して直接アプローチをするのではなく、その前提にあるC3やASといった前提構造にアプローチをすることで変えていきます。これを前提構造理論では介入と呼び、介入部でご説明いたします。(介入部は理論本体ではありません)

■三層構造モデルとCARの関連

 そして、認知、行動を説明させていただいたことで、私が良くコラムでも紹介している三層構造モデル(Three-Layer Model)とCARの関連が明確になります。

 元々、三層構造モデルは私がキャリコンを行う上で開発したツールですが、実は前提構造理論にも統合させています。

 三層構造モデルは、

1層...事柄
2層...認知
3層...行動

と分かれており、私たちの認知の違いにより行動が変わってくることを図式したツールですが、CAR目線で見ると、三層構造モデルはCARの一部であることが分かります。

no72502.png

 これは原理部の時にもご紹介したCARの図ですが、これを見ると、

外的事柄    →認知→行動
内的事柄(結果)→認知→行動

になっていることが分かります。

つまり、CARにおける内的/外的事柄のことを1層、認知を2層、行動を3層として定義していたのです。そのため、前提構造理論では三層構造モデルを認知の理解を深めるための補助ツールとして位置づけています。

■今回のまとめ

 今回の内容をまとめますと、

  • 「わかっているのにできない」のは意志の問題ではなく、行動が立ち上がる前にどの行動が選ばれやすくなるかを決めている「行動の前提構造(AS)」という仕組みに起因している
  • 行動が前面化する条件は、その行動が持つ意味や成果への接続を示す「価値」と、今すぐ対応すべきかという制約の強さを示す「時間依存性」の二つの要素によって構造的に規定される
  • 行動ポジションマップは、何をすべきかという処方箋ではなく、ASの強弱によって「どの行動が自然に選ばれ、どの行動が後回しにされているか」という現状の配置を客観的に視覚化するためのツール
  • 事柄・認知・行動の関係を示す三層構造モデルはCARのサイクルとして統合されており、認知を観測する補助ツールとして使われる

 それでは、次回は3つめの前提構造である「結果の前提構造(OA)」についてお話ししますね。

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