第723回 前提構造理論(OST)のススメ2・構造部1 前提構造(Operating Structure:OS)
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
前回より始まりました「前提構造理論(OST)のススメ」ですが、今回からは構造部に進みます。ここは前提構造理論の原理部であるCARを回すための構造についてお話しています。
まずはこの理論の名前にもなっている前提構造についての話からです。
■前提構造とは
原理部では認知、行動、結果が循環するCARスパイラルのお話をしました。ここでは物事が成功する、失敗をする、そうした変化を含め全てCARという同一の原理によって成立しています。
しかし、ここで新たな問いが起こります。
なぜ同じ原理で動いているにも関わらず、変化するしないという差異が起こるのか
例えば、二人の人が何かを一緒に学びました。片方の人はそれを実践することができていますが、もう片方の人は全く実践できていません。
一般的に個の際は認知や行動そのものが違っていると捉えられることが多いんじゃないかなと思います。
でも、ですね、その認知や行動の違いって何なんでしょうね。どちらも同じことを学び、これは価値があると思っています。両名とも実践したいと思っています。しかし、片方の方は実践できて、もう片方の方は実践できていない。
ここの説明って難しいんですよね...。結局、明確な説明をすることができないので、
- 学びの価値が理解できていない(本当に理解できているなら行動できるはず)
- 実践できていない人の環境が悪い(忙しすぎて実践的でいないはず)
のような答えしか導き出せないのが現状なのではないでしょうか。
しかし、この状況をもう少し深く見てみると
- 認知が立ち上がる前に、どのように認知を捉えようとしているかが決まっている
- 行動が選ばれる前に、既に選ぼうとしている行動が限定されている
- 行動によって生まれた事柄(内的事柄)が生じた時点で、それがどのような結果として意味づけられるか、あらかじめ決まっている
という特徴がありませんか。
つまり、認知、行動、結果というのは、その都度自由に考えて選ばれているのではなく、元々前提としてある条件の下で立ち上がっていると考えられます。
これを前提構造(Operating Structure:OS)と呼びます。
前回の原理部では客観である事柄(内的・外的)は、そのままでは主観であるCARの循環には接続されません(主観と客観の非連続性(Discontinuity)。客観である事柄を主観に変換し、CARへと取り込むための「変換構造」として前提構造があると定義しています。
ここで注意したいのは、前提構造は
- 思考内容そのもの
- 価値観そのもの
- 意図的に選ばれた信念
ということではないんです。前提構造は人や組織にとって
- 当たり前の現実
- 当然の選択肢
- 自然な反応
として蓄積されているので、通常は意識されることはありません。しかし、この「当たり前」こそが認知や行動の範囲を決めているモノなんです。
■Operating Structure:OSの定義
OSと聞くと、コンピュータのOS(Operating System)をイメージされる方は多いのではないでしょうか。この「Operating Structure」もOSと呼びますが、これ比喩ではありません。
コンピュータのOSは、
- アプリケーションがどのように動作するかを決めている
- OSが変わらなければ挙動の本質は変わらない
という特徴があります。この視点に立つと、
- 思考法の改善
- スキルの習得
- 行動習慣の変更
というのはすべてOS上で動作するアプリケーションの変更に相当しますよね。例えば、OS上のアプリケーションを入れ替えてもOSが同じであれば、挙動はすべてOSの制御に委ねられます。
これと同じで、認知や行動そのものを変えようとしても、OS(Operating Structure)が変わらなければ状態はそのまま維持されてしまいます。
つまり、Operating Structureとは、
- 常に背後で作動している
- 意識しなくても働き続ける
- 可能な行動や認知の範囲を制限する
- 結果によって自らの状態を維持・強化する
という性質を持っています。
■3つの前提構造
世の中の多くの理論では、何かしらの問題があった時、
- 思い込み
- 認知の歪み
- マインドセット
といった形で、問題は主に認知の領域に存在すると考えられてきました。
しかし、現実にはこんなことが起きますよね。
- 状況は正しく理解しているのに行動が伴わない
- 行動をしても結果が次に反映されない
- 同じ失敗を繰り返してしまう
こうしたことは、認知だけでは説明がつかないんですよね...。
そこで、前提構造ではOSを認知のみに限定せず、
- 認知がどのように立ち上がるか
- どの行動が選ばれるか
- 内的事柄がどのような結果として意味づけられるか
というCAR全体に存在する構造として捉えます。つまり、前提構造とは認知だけに存在するものではなく、行動や結果にも存在します。これらの前提構造を
- 認知の前提構造(Cognitive Precondition Structure:C3)
- 行動の前提構造(Action Salience:AS)
- 結果の前提構造(Outcome Axis:OA)
と呼び、これらをまとめて「三前提構造」と呼びます。
■今回のまとめ
少し長くなってきたので、今回はここまでにしますね。
今回の内容をまとめると、
- 認知・行動・結果のすべてにおいて、選ぶ前に「選べる範囲」をあらかじめ決めている構造がある
- 学びや意志(アプリケーション)をいくら入れ替えても、土台となる前提構造(OS)が変わらなければ、挙動の根本は変わらない
- 前提構造(OS)には認知(C3)・行動(AS)・結果(OA)の3点があり、それらが連動することで今の状態(CAR)を循環させている
こんな感じでしょうか。一言で言うならば、
「何をどう変えるか」の前に、その選択を支配している「見えない前提」そのものがOSである
ということですね。
それでは、次回はこの「三前提構造」について一つずつ詳しく見ていきましょう。