働いている世のエンジニアの手助けになることを願う独り言

就職氷河期世代のベテランエンジニアがAI時代に管理職として最近ちょっと思うこと

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就職氷河期世代のエンジニアとして、気がつけば現場でコードを書くだけではなく、マネージャーや部長といった管理職の立場で仕事をする時間が増えてきました。

若い頃は「仕様書がない」「納期がない」「予算がない」「でも気合いはある」という、今思えばなかなかワイルドな環境で育ってきました。サーバーが落ちれば夜中に対応し、CSSが崩れればブラウザごとの差分に泣き、Internet Explorerに心を削られながらも、なんとか納品してきた世代です。

そんな私たちが今、AI時代の管理職になっています。

正直、少し不思議な気分です。昔は「検索力」が強いエンジニアの武器でした。今はAIに聞けば、コードも文章も設計のたたき台も出てきます。便利です。とても便利です。ただ、便利すぎて少し怖い。

AIは優秀。でも「いい感じによろしく」はまだ危険

AIを使うと、たしかに作業は速くなります。コードの雛形、SQL、エラーメッセージの原因調査、ブログ記事の構成案、議事録の要約。昔なら半日かかった作業が、数分で形になります。

ただし、AIに「いい感じにやって」と丸投げすると、たまに本当に"いい感じ風"のものが返ってきます。

見た目は整っている。文章もそれっぽい。コードも動きそう。でも、よく見ると仕様と違う。セキュリティ的に危ない。古い情報が混ざっている。存在しない関数を自信満々に使っている。

まるで、会議でやたら堂々としているけれど、実は要件を半分しか理解していない新人時代の自分を見ているようです。

AI時代の管理職に必要なのは、AIを使うこと自体ではなく、AIの出力を判断できる経験です。つまり、ベテランの勘がまだまだ重要です。

ベテランエンジニアの価値は「全部知っていること」ではない

昔は、知識量そのものが大きな価値でした。サーバー設定、PHP、JavaScript、CSS、DB、メール設定、DNS、FTP、SSL、WordPress、謎の古いCMS。何でも知っている人は重宝されました。

しかし今は、AIや検索で情報にアクセスしやすくなりました。では、ベテランエンジニアの価値は下がったのでしょうか。

私は、むしろ価値の場所が変わっただけだと思っています。

ベテランの価値は、「全部暗記していること」ではなく、「どこが危ないかがわかること」です。

この仕様は後で揉めそうだな。このスケジュールは無理があるな。この設計は今は楽だけど半年後に苦しむな。この担当者は返事が早いけど、たぶん中身を読んでいないな。

こういう"事故の匂い"を感じ取る力は、AIだけではなかなか代替しにくい部分です。

管理職になるとコードより人間のバグに向き合う時間が増える

エンジニアとして長く働いていると、バグには慣れます。エラー文も読みます。ログも追います。原因を切り分けます。

しかし管理職になると、技術的なバグだけではなく、人間関係や組織上のバグに向き合う時間が増えます。

仕様を決めた人と作る人の認識が違う。営業が言った納期と現場が可能な納期が違う。ディレクターが進行管理しているようで、実は各制作担当に丸投げしている。後半工程のコーダーやプログラマーにだけ負荷が集中する。

これはもう、システム障害です。しかもログが残っていないタイプの障害です。

こういうとき、管理職として必要なのは「誰が悪いか」を探すことではなく、「どこで情報が詰まったのか」「どこで判断が遅れたのか」「次に同じことを起こさないには何を決めるべきか」を整理することです。

正直、コードのバグのほうが素直です。人間のバグは、再現条件が日によって変わります。朝は動いたのに、夕方には機嫌が悪くて動かない。まるで古いプリンターです。

就職氷河期世代は「根性論」と「合理化」の間で揺れている

就職氷河期世代は、なかなか独特な世代です。

若い頃は「仕事は見て覚えろ」「とりあえずやってみろ」「納期前は仕方ない」という空気の中で働いてきました。今なら完全に改善対象になる働き方も、当時はわりと普通でした。

だからこそ、根性で乗り切る力はあります。多少のトラブルでは動じません。徹夜明けでも、なぜか普通の顔でメールを返せます。いや、普通の顔をしているだけで、内側ではOSが再起動中です。

一方で、今の時代にそのまま根性論を持ち込むのは危険です。若手に「俺たちの頃はもっと大変だった」と言っても、何も生まれません。むしろ空気が凍ります。

これからの管理職に必要なのは、昔の苦労を武勇伝にすることではなく、その苦労を仕組み化して、下の世代が同じ地雷を踏まなくて済むようにすることです。

AI時代の管理職は「答えを出す人」より「問いを整える人」

AIが発達すると、管理職の役割も変わります。

昔の管理職は、経験から答えを出す人でした。「これはこうしよう」「このやり方で進めよう」「この見積もりでいこう」と判断することが求められました。

もちろん今も判断は必要です。ただ、AI時代にはそれ以上に「問いを整える力」が重要になります。

何をAIに聞くのか。どこまで任せるのか。どの情報を前提として渡すのか。出てきた答えを誰が検証するのか。最終責任は誰が持つのか。

AIは便利な部下のようであり、優秀な壁打ち相手のようでもあります。ただし、放っておくと勝手に正しそうなことを言います。だからこそ、管理職はAIに対しても、人に対しても、目的・条件・判断基準を明確にする必要があります。

つまり、これからの管理職は「命令する人」ではなく、「問いと判断基準を設計する人」になっていくのだと思います。

ベテランは若手に勝つ必要はない

AI時代になると、若いエンジニアの吸収速度は本当に速いです。新しいツール、フレームワーク、開発環境、AI活用。どんどん使います。

正直、「え、もうそんなことできるの?」と思うこともあります。こちらが公式ドキュメントを読んでいる間に、若手はAIに聞いてサンプルを動かしています。

でも、そこで張り合う必要はありません。

ベテランが若手に勝つべきポイントは、タイピング速度でも、新しいツールの習得速度でもありません。むしろ、そこは若手に任せたほうがいい場面も多いです。

ベテランの役割は、若手が速く走れるように道を整えることです。危ない方向に全力疾走しそうなときだけ、「そっちは沼だよ」と声をかける。それくらいでちょうどいいのかもしれません。

管理職こそ、少しだけコードを書けたほうがいい

管理職になると、コードを書く時間は減ります。しかし、完全に現場感覚を失うと判断が鈍ります。

見積もりの妥当性、実装難易度、AIが出したコードの危険性、エンジニアの負荷感。これらは、ある程度自分でも手を動かしていないと見えにくくなります。

もちろん、管理職が全部の実装に口を出す必要はありません。それをやると、現場からは「また部長が細かいことを言い始めた」と思われます。

ただ、最低限の技術理解を持ち続けることは大切です。コードを書かない管理職でも、コードの匂いは嗅げたほうがいい。怪しいコード、危ない設計、無理なスケジュールには、だいたい独特の匂いがあります。

これからのベテランエンジニア管理職に必要なこと

AI時代のベテランエンジニア管理職に必要なのは、偉そうにすることではありません。

  • AIを使って作業効率を上げること
  • AIの出力を経験でチェックすること
  • 若手のスピードを邪魔しないこと
  • トラブルの原因を人ではなく仕組みで考えること
  • 過去の苦労を武勇伝ではなく改善策に変えること
  • 現場感覚を完全に手放さないこと

このあたりなのだと思います。

就職氷河期世代は、決して楽な時代を歩いてきたわけではありません。だからこそ、しぶとさがあります。泥臭さもあります。なんとかする力もあります。

ただ、これからは「なんとかする」だけではなく、「なんとかしなくても回る仕組み」を作る側に回る必要があります。

まとめ:ベテランエンジニアのキャリアは、まだまだ面白い

AIが進化しても、ベテランエンジニアの価値がなくなるとは思いません。

むしろ、AIによって単純作業や調査の一部が効率化されるからこそ、人間側には判断力、調整力、設計力、そして少しのユーモアが求められるようになります。

管理職という立場は、正直めんどうです。コードだけ書いていた頃のほうが楽だったと思う瞬間もあります。人の調整、予算、納期、品質、社内政治、若手育成、外注管理。気づけばタスク管理表の中で、自分自身がタスクになっていることもあります。

それでも、現場を知っているベテランが管理職になる意味は大きいです。

なぜなら、現場の痛みがわかるからです。無茶な納期の怖さも、曖昧な仕様の危険性も、後半工程にしわ寄せが来るつらさも知っているからです。

AI時代の管理職は、偉い人ではなく、現場と未来の間に立つ翻訳者なのかもしれません。

AIの力を借りながら、若手の力を活かしながら、自分たちの経験を仕組みに変えていく。

就職氷河期世代のベテランエンジニアにとって、キャリア後半戦はまだまだ消化試合ではありません。むしろ、ここからが本番です。

とはいえ、無理は禁物です。昔のように徹夜で乗り切ろうとすると、翌日の回復に2日かかります。AIより先に、自分の体力がレガシーシステム化していることにも気づいておきたいところです。


どこかで、エンジニアの価値を少しでもベースアップする手助けが出来てれば幸いです。

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