AIエージェントのせいで、最近ちょっと寝不足です。
ここ数か月、夜中に目が覚めてしまうことが増えた。
年齢のせいではない。カフェインの摂りすぎでもない。
原因は──AIエージェントだ。
かつて、エンジニアの夜更かしの理由は決まっていた。
本番障害、深夜リリース、原因不明のエラー、そして「なぜ動かないのか分からないコード」。
ところが今、私の眠れない理由は真逆だ。
「できてしまうから」である。
AIエージェントにタスクを投げる。
要件を書く。
処理の流れを説明する。
少し方向性を修正する。
すると、形になる。
しかも想像以上の速度で。
昔なら「数日かかるだろう」と思っていた試作が、気づけば数十分で動いている。
この瞬間、嬉しさと同時に、妙なざわつきが胸に広がる。
もうコーディングは不要になるのだろうか?
いや、実際にはそう単純ではない。
コードを書かなくても、何を作るべきかを理解していなければ何も生まれない。
むしろ今は、
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設計の意図
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データの流れ
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業務の本質
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技術の特性
を「実践できるレベル」で理解していることの重要性が、これまで以上に増している。
タイピング速度より、思考の解像度。
書く力より、定義する力。
エンジニアの価値の重心が、静かに移動しているのを感じる。
そして何より恐ろしいのは、
これまで頭の中で温めていたアイデアたちが、現実に姿を持ち始めたことだ。
「いつか作りたい」
「時間があれば試したい」
「できたら便利だろうな」
そんなメモ帳の中の妄想が、次々とプロトタイプになっていく。
・業務の効率化ツール
・データ整理の自動化
・ちょっとしたSaaS的な仕組み
・現場の不便を解消する小さな仕組み
これまで「時間がない」で止まっていた世界が、突然動き出した。
これはワクワクする。
しかし同時に、危険でもある。
やれることが増えすぎる。
思いつく。
作れる。
改善できる。
また思いつく。
終わらない。
頭の中の付箋が増殖し続ける。
気づくと、布団の中でこんなことを考えている。
「この業務フロー、自動化できるな...」
「この入力作業、AIに任せられるな...」
「現場のあの不便、システム化できる...」
「これサービス化できるのでは...」
午前2時。
目は閉じているのに、脳内ではプロジェクトが進行中だ。
そして、ふと思う。
エンジニアという仕事の価値は、変わっていくのだろうか?
コードを書く人から、
課題を定義する人へ。
実装する人から、
仕組みを設計する人へ。
技術者というより、
「現実を改善する翻訳者」へ。
もしそうなら、これは衰退ではなく進化だ。
...と自分に言い聞かせながらも、変化のスピードに少しだけ落ち着かない。
そんな夜の思考のループから抜け出すために、最近はひとつルールを決めた。
「まずは目の前の課題をひとつずつ解決する」
世界を変える必要はない。
全部作る必要もない。
今困っていることを、ひとつずつ具体化する。
それで十分価値がある。
とはいえ、安心して眠れるようになったかというと、そうでもない。
なぜなら次の日、また新しい可能性に気づいてしまうからだ。
AIエージェントは便利だ。
とてつもなく便利だ。
だが同時に、
エンジニアの想像力を刺激しすぎる装置でもある。
今夜もきっと、眠る前に思ってしまう。
「これ、もう作れるな」
そしてスマホを手に取ってしまう。
...寝不足の原因は、どうやら未来らしい。
どこかで、エンジニアの価値を少しでもベースアップする手助けが出来てれば幸いです。