第594回 3つの「きく」
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
今回は傾聴ネタです。傾聴という言葉は広く耳にされるようになりましたが、その実態は「話をしっかり聴くこと」のように解釈されるケースが多いように感じています。この表現自体間違いではないのですが、傾聴の全体像ではなく一部を表しているように感じます。そこで今回は3つの「きく」から傾聴を考えてみたいと思います。
■3つの「きく」
3つの「きく」とは「きく」という言葉を漢字で表現したら3つあるということなのですが、それぞれこのようになっています。
訊く(ask) 尋ねる、質問する(能動的表現)
「道を訊く」聞く(hear) 耳に入ってくる音を感じ取ること(受動的表現)
「川のせせらぎを聞く」聴く(listen) 意識をして音を感じ取ること(能動的表現)
「音楽を聴く」
こうやって見てみると、私たちが普段よく使う「聞く」という言葉は、実は「音が勝手に耳に入ってくる」という受動的な表現だったんですね。従って「相手の話を聞く」のように表現してしまうと相手の話が勝手に耳に入ってくるようなニュアンスになってしまうため、意図した表現にならない可能性があります。そのため、私はこういう場合「相手の話をきく」という書き方をすることが多いです。
■傾聴における「きく」とは?
傾聴はアクティブリスニング(Active Listening)とも呼ばれますが、これは積極的(アクティブ)に相手の話を聴く(リスニング)と解釈されることが多いため「傾聴=聴く」と解釈されることが多いように感じます。しかし、この「聴く」だけだと対話は成立しません。なぜなら、対話は「きく」と「伝える」から成り立っているからです。
傾聴も一つの対話の形ですので、「きく」と「伝える」の両方の側面が必要になります。そうした場合「きく」は「聴く」で良いのですが、「伝える」はどうなるでしょうか? 実は「伝える」は「訊く」、つまり質問をするということになります。
これはなぜか? それはどちらの「きく」も能動的表現だからです。つまり、傾聴というのは
「聴く」で相手の話を能動的に聴き入り、「訊く」で相手に能動的に訊き取る(質問する)こと
です。このように解釈すると傾聴で何をすべきかがハッキリしてきます。相手の話を一生懸命に聴き入ることと同時に、相手から話を引き出すための質問する。そうすることで、相手はより多くの言葉を話すようになり、それをまた一生懸命聴き入るのです。
■積極的にきこう!
傾聴が「聴く」と「訊く」から成り立っていることが理解できれば、「聴く」だけでなく「訊く」ことにも意識を向けることができるようになります。そのための方法はまた別の機会でお話したいと思いますが、こうすることでより具体的に傾聴という技法に取り組めるようになります。
傾聴を実践しようとされる方は、是非「聴く」ことだけではなく「訊く」ことにも意識を向けてみてくださいね!