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第489回 傾聴をアップデートする

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 久しぶりの傾聴ネタです。最近は普段の生活において傾聴が活用されるシーンが増えてきたように思います。傾聴という言葉自体も自然に聞かれるようになり、ある程度の市民権が得られてきているのかなぁと感じることがあります。

 私は普段から傾聴を仕事で使う身ですが、日々色んなことを考えながら傾聴を行っています。そこで今回は、最近の私が考えている傾聴にについてお話しさせていただきます。

■ロジャーズの3原則

 そもそも傾聴とは「相手の話を親身に聴く」ようなイメージがあるかと思います。しかし、傾聴とは本来なんぞや?と言われると中々言葉が出てこなかったりもするのではないでしょうか。そこで、傾聴を学ぶ上で必ず出てくるであろうカール・ロジャーズの言葉を引用してみます。

ロジャーズの3原則

1.共感的理解 (empathy, empathic understanding)
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。

2.無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)
相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴く。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。そのことによって、話し手は安心して話ができる。

3.自己一致 (congruence)
聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認する。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反する。

 ロジャーズはアメリカの心理学者でありカウンセリングの大家でもあります。ロジャーズは傾聴のことを「積極的傾聴(Active Listening)」と呼びましたが、自身がカウンセリングを行うにあたり有効だった事例に共通していた「聴く側の3つの要素」をまとめました。これをロジャーズの3原則と呼びます。このロジャーズの3原則が現在主流となっている傾聴技法のベースとなっていると言っても過言ではありません。

■傾聴における意識の持ち方の変化

 私もキャリコンですのでこのロジャーズの3原則は頭の中に入っていますし、この原則に基づいて傾聴をしているつもりです。

 ただ、私の場合、私という人間が意識的に傾聴をしているというイメージをずっと持っていました。当たり前っちゃー当たり前なんですが、何というか明確に「自分」というモノがベースにあり、その「自分」が意識して傾聴を行うような感覚を持っていました。

 しかし、ここ最近私の心境が少し変化しており、傾聴に対する考え方も少し変わってきました。それは、前回のコラムでもお話しした内容とも重なるのですが、それは自分の話した言葉を相手がどう受け取っているかということをイメージしながら話している感覚を持つことが増えるようになってきました。

 何というか、話し手の自分が居て、その自分が話した言葉をもう一人の聴き手の自分が客観的に聴いており、そこに対して感情が働くような感覚になるのです。例えば、こんな感じです。

「さっきの話、とても残念でしたね。良かったらもう少し具体的に聴かせてもらっていいですか?」

のように私が話したとします。その瞬間、私の中にこんな感情が湧き起こるんです。

「残念だったこと? 後悔もあるし、自分への怒りもあった。それを思い出して具体的なことを話すのかぁ...」

 勿論、これは私自身の中で湧き起こった感情であり、相手が同じ感情を持っているかどうかは分かりません。そのため、私が感じた感情などは極力相手には話さず、自分の中に留めておくようにしているのですが、こうやって自分の言葉を自分が客観的に受け止め、そこに対して感情を抱くようになることが、結果的に共感的理解と繋がっているような感じがするのです。

■傾聴をアップデートする

 それは「私」「あなた」といった視点ではなく、「私たち」のような視点で傾聴をするような感覚に近いと思います。

 先ほども書きましたが、私が自分の言葉で感じた感情を表に出す事はしませんが、私の発したの言葉で「私たちはこう感じた」のような感じになるのです。今まで私は共感的理解を頭で理解してきたつもりでしたが、この感覚を持つようになり、実際に共感的理解を体感するとこういうことなのかなと思うようになりました。それが正しい事なのかどうかは判断のしようがありませんが、もしそうだとしたら、私の傾聴も一段階アップデートしたのかもしれませんね。。。

 私は傾聴は15年以上やってきていますが、それでもまだまだ学ぶことだらけです。恐らく、傾聴については一生学び続けなければならないと思っています。そういった意味では今回のことにしても本当に些細なアップデートかもしれません。それでも、こういったアップデートを重ねていくことで、今以上に相手の身に立った傾聴ができるようになっていきたいと考えています。日々、勉強ですね。

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