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第463回 コミュニケーションの難しさ

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 先日、あるコーチングのトレーニングを体験させていただく機会がありました。私は自前でコーチングを行っていることもあり、他の団体のコーチングの勉強会に触れさせていただくこと自体、かなり久しぶりの体験だったのですが、色んな学びを得ることができました。その中でもコミュニケーションについて気づきを得る機会があったので、今回はそのことについて書きます。

■どうやって相手と共有しますか?

 誰かと会話をしている中で何かしらの情報を共有することは良くあります。例えば、会社や組織の目標を部署内で共有しようとする時を考えてみます。こういった時、一般的には言葉で情報を共有しようとします。伝える側がビジョンや具体例を言葉で伝え、伝えられた側はその姿を自分なりにイメージします。

 キャリコンの場合、こういったことを傾聴で行います。私が普段使っている傾聴では「事柄」「気持ち」「意図」といった情報をクライエントから深掘りして聴き出し、それを共感しながら受け止めることで共有していきます。その際、その時の情景、気持ちや感情の変化、そこから湧き起こる想いなどを、鮮明に具体的にイメージしてもらえるような言葉を投げかけたり、クライエント自身で導き出してもらったりします。コーチングにおいても使われる技法こそ違いはありますが、凡そ同じような方法で情報の共有をしています。

 ここでベースとなるのは「言葉」です。元々コーチングにせよキャリコンにせよ、言葉を媒体としたコミュニケーションですので、言葉を使って情報を共有することは至極当たり前のこと言えます。

■言葉で共有することの難しさ

 ただ、この方法で双方が同じ情報を共有できているかと言われると、必ずしもそうとは言い切れない部分があります。例えば、話し手が「私は人に喜んでもらうことを自分の目標としています」と話したことを、聴き手が話し手と共有してみることを考えてみます。

 話し手がこのような言葉を使って自分の目標を伝えると、聴き手はこの言葉が指し示す具体的なイメージ、感情的な側面、意図や想いなどを明らかにしています。具体的にはこんな感じでしょうか。

・その製品を使っている人から「ありがとう」と言ってもらっている
・その製品がその人の生活になくてなならない存在になっている

 この例は「私は人に喜んでもらうことを自分の目標としています」を私なりに具体化したイメージですが、この言葉に共感していただける方は、恐らく私が抱いたイメージのブレは少ない方だったのではないでしょうか。

 しかし、「ありがとう」の言葉ひとつを取ってみても、面と向かって感動してありがとうと言ってもらえているのか、心の中でそっとありがとうと言ってくれているのか、この言葉だけでも聴き手と話し手ではイメージがかけ離れているかもしれません。こうしたイメージのブレを極力なくしていくためには、より多くの言葉で補わなければなりません。それでも、「ありがとう」のイメージを共有し切れないかもしれません。これが言葉で共有することの限界でもあり、難しさでもあると思います。

■情報を共有する有効的な方法

 それでは、冒頭にお話ししたコーチングの勉強会ではどのような方法で情報を共有していたのか? それは「絵を描く」ことでした。

 やり方は、まず話し手が聴き手に対して自分のイメージ(例えば「私は人に喜んでもらうことを自分の目標としています」)を好きなだけ話してもらいます。その時、聴き手は傾聴に徹します。そうして、話し手がこれ以上話すことはないと感じるくらい話をしてもらったら、次に聴き手と話し手の双方で話し手の話したイメージを絵で表現します。ここでのポイントは絵を描くことに時間をかけないことで、時間は2分程度の短い時間に設定するのだそうです。

 その後、聴き手と話し手の双方が絵を描き上げたら、互いにその絵を見せ合います。その上で、なぜそのような絵を描いたのか、絵の違いがどこにあったのかなどを話し合い、意識のズレがどこにあったのかを明確にしていきます。この時、絵を描く時間を2分間に限定していたことで、絵には伝えたいことが端的に表現されていることが多くなります。つまり、2分間という限られた時間の中で描かれた絵には、その人が真っ先に伝えたいことや強く意識されていたことが表現されているのです。このようにすることで本当に伝えたい情報を共有することができるようになります。

 私は絵を描くのが苦手なので、最初にこの方法を聞いた時、少し毛嫌いした感情を持っていました。しかし、実際にやってみると「そうそう、そうなんですよ! 」ような感じで、相手と強く情報共有を行うことができ、その効果を強く感じることができました。

■コミュニケーションの難しさ

 今回、体験させていただいたワークを通じて、改めてコミュニケーションの難しさを痛感しました。

 私が普段から行っている傾聴一つとってみても、そこには限界があるのだということを改めて感じました。その前提を正しく理解し、相手の言わんとすることを自分はちゃんと共有できないのではないか? という意識は常に持っておく必要があると強く感じました。

 そして、どうすれば相手が私に伝えようとしている情報をより深いレベルで共有することができるのか、その一端を垣間見ることができたように思います。いやはや、世の中にはすごい方法がたくさんあるなぁと感じました。。。

 この技法は私自身今後も使いながら自分のモノにできるよう、ブラッシュアップしていきたいと思います。

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