第315回 傾聴の2つの壁
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
最近は傾聴のトレーニングをさせていただくことが多くなってきています。一昔前までは上意下達で意思疎通が計れている時代でした。いい換えるならばトップダウン型組織ということですが、今はそれでは人が動かなくなることも増えてきました。そのため、上司は部下と綿密にコミュニケーションを取る必要性が出てきました。ですが、上司は部下の意図が理解できない、上司の伝えたいことがうまく伝わらない、そういった声も良く聞かれます。だからこそ傾聴のニーズが高まっているのかもしれません。
しかしながら、傾聴を実際にやってみると、なかなかうまく行かず苦労される方が結構おられます。それは、傾聴によるコミュニケーションが普段私たちが行うコミュニケーションとは異質なモノであるからですが、その中でも壁のようなモノがあると感じました。そこで、今回はこのことについて書きたいと思います。
■傾聴における2つの壁
傾聴については、このコラムで何度も出てきていますが、相手の話に聴き入り、相手と信頼関係を構築するための聴き方です。傾聴を習得するために、私は以下のような方法をご提示させていただいております。
- 話題を掘り下げる
- 話題に対する反応をする(事柄を返す、気持ちを表すなど)
- 話題を振ってみる
これらは過去に会話を継続させるテクニックとしてご紹介しましたが、傾聴においても効果があります。また、比較的難易度も低いので、初めて傾聴を実践される方によくお勧めしています。
しかし、傾聴をトレーニングしていると「自分や相手の気持ちを言葉に表すこと」がなかなか難しいようです。それは、私たちは自分や相手の気持ちをを常日頃から言葉に表すことをしていないからではないかと思います。これが傾聴をする上での最初の壁のように感じています。
ただ、トレーニングをしているとこの壁は比較的早い段階でクリアできます。特にキャリコンのトレーニングをされていたり資格を持っている方はとても上手に対応されます。ただ、そういった方は凡そ次の壁にぶつかります。
それは「場当たり的な傾聴」をしてしまうことです。傾聴で話を進めるということは、傾聴をする側が主導となって会話を進めることになります。そのため、傾聴をする側は傾聴を続けようとするあまり、いろんな角度からの話を投げかけてしまう傾向があります。その結果、結局気づいたら質問攻めになっていたり、何を聞きたいのか良く分からないような会話になってしまいます。これが2つめの壁です。
なぜそのようなことが起こるのか? これは、私なりの考えですが、これは傾聴が目的となってしまっている場合にこのようなことが起こることが多いように思います。本来、傾聴には目的があります。例えば、相手との「信頼関係の構築」であったり、相手自身のことを理解してもらう「自己理解」のためだったりします。だからこそ、傾聴はただ単に傾聴すれば良いのではなく、信頼関係を構築したり、自己理解を促すような傾聴にしなければなりません。
そのためには、全体像を理解しておく必要があります。例えば、どういったことが信頼関係を生み出すのか? 自己理解に必要な情報は何なのか? その凡その枠組みを知っておくことです。その枠組みをあらかじめインプットした上で傾聴をするからこそ、傾聴本来の目的にたどり着けるのではないかと思います。
それでは、その枠組みはどうすれば理解できるのか。私は経験と学習があると考えます。
経験は文字通り、傾聴を実際に経験することで少しずつ全体像を理解する方法です。この方法は時間がかかりますが、その人に応じた全体像をつくり上げることができるようになります。
学習は技術、スキル、理論などを学び取ることで全体像を理解する方法です。この方法は比較的時間をかけずに行うことができますが、学んだ内容を自分なりにカスタマイズしなければ使えないこともあります。
■全体像を理解する
全体像を理解しておくことの有用性は何も傾聴だけに留まりません。私たちの仕事はすべて何かしらの目的があります。人によってはその一部を担っている方もいれば、大半を担っている方もおられます。そうしたときに、自分の仕事の範囲留まらず、全体像を理解しておくことができれば、仕事の効果や効率は上がりますし、また仕事の本質を理解することにも繋がります。
仕事の本質を理解しているかどうかは、仕事をする私たちにとってとても重要なことです。仕事の全体像を理解するのは限界があるかもしれませんし、難しいかもしれません。しかし、普段から全体像を理解するように振る舞うことで、本質を考えた行動ができるようになってくるのではないかと思います。