第298回 ディズニーから行動変容について学ぶ
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
先日、TDR(東京ディズニーリゾート)が主催するサービスの研修に参加させていただきました。研修自体は2時間半と短かかったのですが、研修後は東京ディズニーシーで働くキャスト(従業員)の仕事っぷりを拝見したり、生インタビューを聴かせていただくなど、とても素晴らしい内容でした。そこで今回はディズニーが実践するサービスについて思うことを書かせていただきます。
■ディズニーの研修に行ってきた
私が参加させていただいたのは、ディズニーアカデミー(ディズニーの教育機関)が主催されている「東京ディズニーリゾート・ゲストサービススタイル」という公開セミナーでした。
元々、私が参加させていただいた目的は、この研修が『ペア・トレーナー』という二人のトレーナーの掛け合いで行われるという珍しい形の研修をされているとの話を聞き、その技術を学ばせていただくためでした。勿論、その内容もそうでしたが、それ以上にコンテンツがとても素晴らしく感じました。
この研修ではディズニーが実践するサービスについて、その行動基準である『SCSE』の考え方を元に、キャストへの教育や育成方法が紹介されています。内容もワークショップの形態を取りながらも、ティーチング、コーチング、ファシリテーションをうまく使い分け、二人のトレーナーがシームレスに登壇されるスタイルは、相当練り込まれ、トレーニングしないとできない素晴らしい研修だったと感じました。
■ディズニーの行動基準『The Four Keys~4つの鍵~』
東京ディズニーリゾートには『ゲスト(来客者)にハピネス(幸福感)を提供する』というゴールがあるのだそうです。今回参加した研修は、このゴールを実現するためにあるディズニーの行動基準『The Four Keys(4つの鍵)』がテーマになっています。
具体的には、キャストが従うべき行動基準、判断基準を優先順位の高い事柄からSafety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)と定義し、キャスト一人一人がこれを自ら考え、実践されているのだそうです。しかも、驚くべきことにこれらについてのマニュアルなどはなく、すべて上司から部下、先輩から後輩へと受け継がれているモノなのだそうです。
Safety(安全) ディズニーランドで楽しんでもらうためにはゲストキャストにとって安全が最優先であること
Courtesy(礼儀正しさ) すべてのゲストがVIPであるという考え方に基づき、子どもから大人にまで相手の立場になった心からのもてなしをすること
Show(ショー) すべてのモノがショーであるという観点。掃除や点検といった作業においてもショーであることを意識し、ショーを演じること
Efficiency(効率) 安全、礼儀正しさ、ショーが実現されている上で、効率を考え行動すること
なぜ、これらのことがマニュアルもなく実践できるのか、それはこの考え方を実践するためにキャストが日々ある行動をされているからなのだそうです。それは、
- 気づく
- 考える
- 行動する
- 振り返る(以下、1.に戻る)
という4つの段階を一人一人が考え、実践されているからなのだそうです。
■ディズニーの考える行動変容
しかし、実際問題として、こういった行動基準があるからといってキャストの行動が変わるものなのでしょうか? その答えは研修中のワークで分かりました。そのワークでは、ある1つの事例が紹介されます。それは、こんなお題でした。
~掃除係のキャストがゲストから写真を撮ってもらうことをお願いされました。しかし、そのキャストは目の前にポップコーンが散らばっていることに気づきます。SCSEに則って考えると、このキャストはどのような行動をすべきでしょうか? ~
これを3人1組チームを組んで考えるのです。そうするといろんなチームから答えが出てきました。
ポップコーンが散らばっていると、子どもが食べてしまうかもしれない。これは安全の考え方から第一優先で考えるべき。だから、まずはゲストに断ってポップコーンを片付けた後に写真を撮る
これは確かにSCSEの考え方に基づいた行動をしていることになります。また、こんな意見もありました。
ポップコーンをほったらかしにしてはおけないので、他のキャストに連携し、ポップコーンを片付けてもらいながら、自分はゲストの写真を撮る
これも確かにSCSEの考え方に基づいています。ちなみに、私たちのチームではこのように考えました。
写真を撮ろうとするとき、わざと背景にポップコーンが入るようにする。そして、「あっ、いけない!ポップコーンがこぼれている。これじゃ写真が台無しだ! 」といって、先にポップコーンを片付けてから写真を撮る
こうすることで、安全を最優先にしつつ、ゲストに対するする満足感(礼儀正しさ)を与えるようなショーを演出できます。さらに、ポップコーンを片付けつつ写真を撮るという効率を実現するといったことを考えました。
ここまでのワークを行ってみると、私自身、自然とSCSEの考え方が身についていることに気づきました。それは実際の事例をSCSEの行動基準になぞらえて、私自身が考えているからなのだと思いました。このワーク自体は簡単なモノですが、それでも行動変容を起こすには十分すぎるぐらい効果があると感じました。これを実務で行える環境があるとしたら、確かにマニュアルがなくても浸透するような気がしました。
■行動変容に必要なモノ
一般的に行動変容を起こすことは難しいとされています。しかし、「問題点に気づくこと」「そのことについて考えをめぐらすこと」「そして行動すること」「最後に振り返ること」この4つを繰り返し行うことで、自然と行動変容は起こすことはできるのだと思えるようになってきました。このことは私にとっても大きな気づきでした。ぜひ、普段の生活や仕事にも取り入れてみたいと思いました。
ところで、ディズニーランドやディズニーシーに「隠れミッキー」というミッキーマウスのマークが至る所に隠れているそうですが、研修会場にもあったのだそうです。1つは会場のプロジェクターに繋げられていた延長ケーブル(延長ケーブルがミッキーマウスのマークになっていたのだそうです)、そしてもう1つはテーブルクロスの柄...。そのサービス精神は本当にすごいですよね。。。ディズニー、恐るべし!
コメント
匿名
TDL:東京ディズニーランド
TDR:東京ディズニーリゾート
ではないでしょうか?
キャリアコンサルタント高橋
匿名さま、
コメントありがとうございます!
修正させていただきました。。。