第215回 会話上手になるためには
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
最近、会話が苦手な人から相談を受けることがありました。その人は自分の考えを話すことが苦手なようで、自分から話をすることができないことに悩んでおられました。そこで、ある方法をお伝えしたところ、人と会話をすることが楽になったのだそうです。そこで、今回は会話上手になるための方法についてお話ししたいと思います。
■伝え方を改善しても会話は上手にならない?
二人の人がいて、そこで会話が行われるとき、通常は話し手と聴き手に分かれます。話し手は自分の考えや想いを相手に伝え、聴き手は話し手の内容を理解しようと努めます。会話を苦手としている人の多くはこの「伝える」ことを苦手としている人で、自分の考えや想いをうまく相手に伝えることを不得手としています。その理由は大きく二つに分かれ、
- 気持ち(引っ込み思案、恥かしがり屋など)
- スキル(話し方、伝え方など)
のいずれか、もしくは両方を苦手としているケースが多いようです。
そのため、会話が上手になるために「気持ち」や「スキル」を改善しようとするのですが、実はこれらを改善してもあまり会話上手にはならないことが多いです。むしろ、改善しないことで、更に苦手意識を持ってしまう人もおられます。
■会話上手のポイントは「伝える」ではない
実は会話が上手になるためのポイントは「伝える」ことではありません。むしろ「聴く」ことなのです。この話をすると、大抵「伝えることが苦手なのに聴くことが大事なの? 」と聞かれますが、「そうです」と答えています。そうすると「ちゃんと相手の話は聞いてるつもりなんですけど...」と返されるのですが、ここの考え方が少し違うのです。
会話は「伝える」と「聴く」で成り立っています。片方の人が何かを伝えていれば、必ずもう片方の人はその話を聴いています。つまり「伝える」と「聴く」は同時に行われています。
会話が上手な人というのは、実は聴き上手な人なのです。こちらが聴き手になると相手は当然話し手になります。こちらが聴き手で相手の話を聴いている時間が長くなるということは、相手はそれだけの時間、話を続けていることになります。つまり、聴くことが上手になると、相手はずっと自分のことを話している状態になります。相手がどんどん話をしていると、そのうちに「この人は自分の話をよく聞いてくれているなぁ」と感じるようになり、更に話をしてくれるようになります。その結果、自然と会話が進んでいくのです。
■問題はどうやって「聴く」か?
そのため、まずは相手の話を徹底的に聴くことが求められます。しかし、ここで問題になるのが、どうやって「聴く」か? です。この「聴く」は「聞く」ではありません。「聞く」というのは受け身的に音や声などを耳に入れる行為ですが、それに対して「聴く」というのは自発的に音や声を耳に入れる行為で、人の話はこちらの「聴く」を使います。この「聴く」は傾聴という言葉でいわれることもありますが、具体的にはこのように聴きます。
- 感情を込めて、相手の話に耳を傾ける
- 相手の話に対して、あいづちやうなずきを入れる
- 適度に言葉を返す(オウム返しや言葉のいい換え)
そして、ただ単に「聴く」だけでなく、相手がもっと話しやすくなるような合いの手を入れてあげるようにします。この合いの手は過去のコラムでもお話ししましたが、
- 話題を掘り下げる(もっと詳しく聞かせてください)
- 話題を相手に委ねる(それはすごい! 大変だったんですね...)
- 話題を振ってみる(他の方法はありますか? 途中で止めたらどうなってたんでしょうね? )
のような合いの手を入れてあげると、相手は更に話を続けてくれることが多くなります。
■会話上手は聴き上手
いうなれば、会話上手になるということは聴き上手になるということです。もちろん、伝え上手になることも必要ですが、それは聞き上手になってからでも遅くはありません。そのため、会話を苦手としている人は、まず「聴く」ことの練習をしてもらうようにしており、これだけでも会話に対する苦手意識が少なくなる方が多くおられます。
もし、会話が苦手だなぁと思われる方は「聴く」ことから始めてみてはいかがでしょうか?
コメント
ハリコフ
会話上手の有無とは、一言で言えば社交性の有無。それは、一種の資質では?努力や工夫で補えるのは極わずかで、もともと出来る人には到底及ばないのが現実では?
私もかなり内向的で、努力で他人と多少は会話出来るようになってきましたが、それは30も半ばを過ぎたあたり。それじゃあ、遅いです。
なので、私は自分の考えを資料にまとめて、上司や同僚に何度となくレビューを行って理解してもらい、その人たちに対外交渉を委ねるようにしました。
自分ひとりで何でもできるようになれ、って考え方ではなく、自分に出来ること、出来ないことを割り切って、周りの人間を上手く使う(言葉は悪いですが)。そういう方が、現実的だと思うのですが、どうでしょうか?
たーじん
ハリコフさんの意見にすごく同意できます。
私も聞き上手ではありません。上手にできないことを認識して周りにヘルプしてもらっています。
っで、話せる人が「聴き上手になれ!!」は耳にタコができるほど聞いていますが、相手の話を充分に聴いてから自分の意思・意見を通すように持っていくのはかなりの高等テクニックだと感じます。
また、最近では「聴き上手になれ」は会話上手な方からの「上から目線」であるとも感じます。
PCが苦手でできない人に、「基本のウェブ閲覧とメールから」と言ってもできない人がいるようにできない人はできないのです。
会話上手でない私が会話上手な人に求めることは、苦手な人もいるという認識を持ってもらいたいという点です。
苦手な人の、苦手な個所を正確に把握してフォローする。これも有りなのではと思います。
ちなみに、私は自分より会話が下手な人にはフォローしています。
キャリアコンサルタント高橋
ハリコフさま、
コメントありがとうございます!
ハリコフさまはご自身で努力で会話下手を改善されたのですね。本当に大変だったかとも思います。。。
過去のコラムにも書かせていただいたことがありますが、私は会話上手な方ではありません。むしろ会話下手です。しかし、私は訓練で会話ができるようになったタイプだと思っております。また、研修などのサポートによって会話を苦手としている方が会話が苦手でなくなった人を何人もみてきております。今回のコラムはその体験に基づき書かせていただきました。
そのため、私はコミュニケーション系のスキルは訓練によって改善できる立場をとらせてもらっております。
ハリコフさまは「周りの人間を上手に使う」ということをおっしゃておられますが、私もそのように思います。
伝えることが難しいと感じている人がどうやったら会話ができるようになるのか? 伝えることが苦手なのであれば、苦手なことを受け入れ「聴き手」に回ることもあってもよいのではないかと思います。これだけでも会話は進むのではないかと思います。これも、相手をうまく使って会話をしていることになるのかなと思っております。
たーじんさま、
コメントありがとうございます!
ハリコフさまのコメントにも書かせていただきましたが、私自身は会話上手な方ではありません。しかし、このコラムが上から目線のようにお感じになられたのであれば、私の配慮が足りませんでした。申し訳ありません。
今回の話はあくまで相手の方が会話下手を直したいと相談があっての話です。伝えたいことをうまく伝えれない人がどうしたら会話が上手になるのか? 私なりの答えが「聴き上手」になることだと思っておりますので、それを紹介させていただきました。決して、普段から会話が苦手な人に対して「聴き上手になれ!」といっている訳ではありませんので、その点ご理解いただけると幸いです。
ちなみに、普段行っておりますキャリアコンサルティングやコーチングなどでは会話を苦手とされている方も大勢おられます。そのような場合は当然のことですが、相手に気持ちよく話をしていただけるよう、こちらも全力でフォローさせていただいているつもりでおります。