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第187回 教える側の傲慢

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 以前にもお伝えしましたが、現在2冊目の本を執筆しています。まだ、公開できるレベルではないので詳細はお伝えできないのですが、執筆に関してはほぼ毎日編集者の方とやり取りをしています。その中で本を書く上での考え方のようなモノを学ぶきっかけがありました。そこで、今回はこのことについて書きたいと思います。

■現在の執筆状況

 今回の本はある出版社さんから出版されている有名シリーズからの出版で、出版社さんからお話をいただいて執筆する依頼執筆です。本のネタは初心者向けのプログラミングに関する本で、過去に私が1冊目の本を出版させてもらったことがキッカケでこのお話をいただきました。既に打ち合わせも頻繁に行っており、本のテーマ、構成などの取り決めを行い、現在は執筆活動に入っています。進捗は全体の60%程度が終わった感じで、年末から年始に向けて原稿のアップを目指し、日々編集者の方とメールでやり取りをしています。

■読者のニーズと著者の想い

 そんな中、編集者の方とあるやり取りがありました。それは、プログラミングを説明する上でどこまで他の情報を書くべきか、という話でした。例えば、ExcelでIDE(統合開発環境)であるVBE(Visual Basic Editer)を立ち上げる方法を説明するという話があったとします。一般的にExcelからVBEを立ち上げる場合、2つの方法があります。

  • [開発]タブ - [コード]グループの[Visual Basic]ボタンをクリック
  • [Alt]+[F11]

 どちらの方法でもちゃんとVBEは立ち上がります。例えばこの本が初心者向けのプログラミング本だったとします。この場合、著者は初心者にも分かりやすい説明を心がけるあまり両方の説明をしようとします。そうすることで読者の疑問を少しでも減らしたいと思うからです。

 しかし、読者側の考えはどうでしょう。この本を選ぶ初心者の人はVBEの立ち上げ方を事細かに知りたいと思うでしょうか? もちろん、そのように考える人もいると思いますが、実際には、

  • VBEの立ち上げ方なんかどうでもいいから、プログラミングのことを説明してほしい(難しいことがダラダラ書かれていたら、読む気が失せる)
  • 初心者が読む本にVBEの細かい説明は求めてない(そういう本が欲しければ別の本を探す)

と思うのではないでしょうか。つまり、先ほどの例は少し乱暴に思えるかもしれませんが、

[Alt]+[F11]キーでVBEを立ち上げます

の1文で話は通じるのです。編集者さんの話では、むしろこのように端的に説明した方が、本全体の内容が理解しやすくなるそうです。

 私は今回の本を執筆するにあたり、丁寧に言葉を選んで原稿を書いているつもりでした。それはその時々の説明においては効果的なのですが、全体で見渡すと説明が冗長的になり、読者からすれば完読しづらくなってきます。しかし、著者は読者に内容を分かってもらいたいと思うあまり自分の知識を本に込めようとし、その結果たくさんの言葉を使ってしまいます(私がそうでした)。私はこのことを編集者さんとのやり取りで気づかせていただくことができました。

 そのため、現在はこれまで書いた原稿を見直しし、書き直す作業を行っています。

■教える側は相手の「何」を想って行動するのか?

 今回のような文字を使うこともそうですし、研修などで直接人に何かを教えようとするとき、教える側は相手に理解してもらいたいと思います。だからこそ、分かりやすい説明、丁寧な説明を心がけようとします。それ自体は間違っていませんし、むしろ正しい行為だと思います。しかし、同時に教える側は、相手が何を想って自分に教えを乞いているのかを考え、感じ取らなければならないと思います。そうしなければ、教える側は自分を基準にして物事を考え、それを相手に押しつけようとするかもしれないからです。それは、私にとって「教える側の傲慢」のように思えてします。

 私は研修やキャリコンを仕事にしている関係上、人に何かを教えるようなことをさせていただくことが多いです。だからこそ、私自身が「教える側の傲慢」にならないよう、細心の配慮をしなければならないと思いました。

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