第110回 本物の技術スキル
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
先日、あるベテランのITエンジニアと話をしていたとき、技術スキルについて話題になりました。今回はこの技術スキルについてのお話しです。
■私の技術スキルはツギハギだらけのスッカスカ
そのベテランITエンジニアを仮に三井さんとします。三井さんは自分の技術スキルについて、このように話されていました。
「私にはこれまでたくさんの開発現場を渡り歩いてきましたが、私には技術スキルがなくていつもヒヤヒヤしていました。
私の場合、その現場で必要とされる技術スキルを必死に覚えて、何とかお客さんに迷惑がかからないようにやってきただけなんです。
他の社員は私の技術スキルが高いといいますが、私からすれば、私の技術スキルはツギハギだからのスッカスカのスキルなんですよ(笑)」
三井さんの年齢は既に40歳を超えており、大型プロジェクトのプロジェクト・マネージャやシステム・アーキテクトといった仕事を次々とこなしています。傍からみれば、その部署のエース級の実力をもっているといっても過言ではない実績をもっています。それにも関わらず、三井さんは自身の技術スキルをそれほど高くはないと思っているようでした。
三井さんの言葉には自身に対する謙遜の意味も含まれていると思いますが、それを差し引いたとしても、私には三井さんが自身の技術スキルを高くないと思われていることが気になりました。そこで、三井さんに突っ込んで話を聞いてみると、このように答えてくれました。
「私の技術スキルが低いと思う根拠は、プロジェクト参加時の技術スキルでは仕事をこなせないからです。
なぜかいつも私は自分の技術スキル以上の現場で働くことが多く、入場時のスキルだけでは知らない技術ばかりでまともに会話すらすることもできません。だから、プロジェクトに参加したときは、いつも技術スキルの習得から始まります。大急ぎで技術スキルを習得しながら、プロジェクトやお客さんの特徴、ルールを覚え、そこに自分を馴染ませるようにしていくのです。
このときは、いつもハッタリをかましているような感じになります。私の場合、そうしなければ仕事にならないんですよ」
■本物の技術スキルとは?
このように聞くと、三井さんの言い分も分かるような気がします。ただ、三井さんは参加したプロジェクトで知らないことを自ら積極的に学び、プロジェクトを無事成功させています。私には三井さんの技術スキルがハッタリであるとは到底思えませんでした。
ITエンジニアにとって技術スキルは切っても切れない関係にあります。技術スキルは自らの仕事を完遂するために最低限必要なモノで、これがなければITエンジニアの仕事は成り立ちません。しかし、この技術スキルに対する捉え方は人それぞれ違います。三井さんのように考えるITエンジニアもいれば、常に生みだされる最先端の技術スキルを身につけておくべきと考えているITエンジニアもいます。
ここでは、どの考え方が正解かを論じるつもりはありませんが、技術スキルがITエンジニアの仕事を全うする上で最低限必要とされるモノであるならば、今、正に参加しているプロジェクトを完遂させることができるだけの技術スキルを有していることが、本物の技術スキルなのではないかと私は思います。ITエンジニアが自らの仕事の結果を出すために必要となる技術スキルこそが、本物の技術スキルなのではないかと思います。
■本物の技術スキルを身につけるためには
ITエンジニアという仕事は、常に学びを求められる仕事であると思います。そのため、プロジェクトに求められる技術スキル要件を100%満たさなかったとしても、ある程度近しい技術スキルをもっていれば、そのプロジェクトに参加することはよくあります。そのような人は、三井さんのようにプロジェクトで仕事をしながら必要な技術スキルを身に付け、プロジェクトを完遂させています。
そう考えると、ITエンジニアが本物の技術スキルを身につけるためには、仕事を遂行する上で足りないモノを貪欲に補い、何としても目先のプロジェクトを完遂させる強い意志をもつ必要があるのかもしれません。