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第71回 コーチングのススメ4

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 これまで、筆者が実施している4Sコーチングについて、System、Spiritについて紹介してきました。今回から3つめのSであるSkillについてお話したいと思います。

■コーチングにおけるスキルとは

 4Sコーチングでは、会話の要素である「聞く」「話す」「」「流れ」に対してコーチング的なアプローチをします。このコーチング的なアプローチをするためにはスキルを駆使します。つまり、

聞く」 → 「聞く」スキル
話す」 → 「話す」スキル
」 → 「」のスキル
流れ」 → 「流れ」のスキル

のようにそれぞれの要素に対応するスキルがあります。そのスキルを使うことで、会話全体に対してコーチング的なアプローチを行うのです。

コーチング的なアプローチをします:詳細は、『第69回 コーチングのススメ2』の『■会話とコーチングの関係』をご参照ください。

■コーチングに適した環境

 それでは、コーチングにおける「場」のスキルとは何か? ひとことでいえば、コーチングを行うのに適した環境をつくり出すことです。このコーチングに適した環境とは以下の2つのことを指します。

コーチとクライアントの意識が、相手にだけに向けられる環境

  • 1対1で会話が行える個室、もしくはブースで仕切られた場所(「その場でコーチング」では正しい効果が得られません)
  • 人の往来がない場所(クライアントの立場からすれば、コーチングではクライアントの内面を話す機会が多くなるため、第三者が介在しない環境であることが望ましいです)
  • 落ち着いた色合いの部屋、整然としている部屋(落ち着いた色合いの部屋や、整然としている部屋は気持ちを落ち着かせます)
  • 不快感を与えない服装(落ち着いた色、清潔な服装は相手を落ち着かせます)

コーチとクライアントの発した言葉が、正しく相手に届く環境

  • 周囲の雑音が入りづらい場所(雑音が入る場所でのコーチングは、お互いの言葉が届きづらいばかりでなく、集中力を欠く環境であるため、コーチングには適しません)
  • 電話やメールが入らない環境(コーチング中、コーチは携帯電話OFFが鉄則です)

■ラポールの構築

 コーチングは、コーチとクライアントとの間に信頼関係があることで初めて機能します。逆にいえば、信頼関係がない所にコーチングは成立しないといっても過言ではありません。しかし、1回のコーチングは一般的に30~60分と時間が限られているため、コーチは限られた時間の中でクライアントとの信頼関係を築かなければなりません。

 そのため、4Sコーチングでは「ラポールの構築」と呼ばれる方法を使い、短期間でクライアントとの間に信頼関係を築き上げ、コーチングを行うための「場」をつくり出します。

 ラポールの構築には大きく分けて3つの段階に分けられます。

1.位置関係の決定

 ラポールの構築の第1段階は、コーチとクライアントが座る(位置する)場所を決めます。具体的には距離立ち位置視線を決めることです。

 距離とはクライアントとコーチの距離のことで、通常は0.5~1メール程度が望ましいです。ただ、クライアントとの親密度が高い場合は、ある程度近いづいても問題ありません。

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 立ち位置とは、コーチとクライアントの立ち位置(座る場所)のことです。クライアントは、コーチの立つ位置によってコーチとのとの心理的な優位が変わります。基本的にクライアントに配慮した位置に立つことが望ましいので、コーチは、通常L字(できれば、クライアントの利き手側)に立つことが望ましいですが、部屋の状況やクライアントとの関係に応じて臨機応変に切り替えます。

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 視線とは、コーチとクライアントの視線の高さと方向のことです。基本的に、コーチとクライアントの視線は同じ高さに合わせます。立ち位置がL字や側面の場合、身体はクライアントの方向を向いていませんが、視線は必ずクライアントの方向を向けるようにします。

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2.コーチングの宣言

 ラポールの構築の第2段階は、コーチングの実施を宣言します。この宣言によって、コーチとクライアントとのコミュニケーションが、単なる会話ではなくコーチングであることをクライアントに植えつけます。これによって、クライアントは相手のことをコーチとしてみるようになります。

3.アイスブレイク

 ラポールの構築の第3段階は、アイスブレイクを行います。アイスブレイクとは、会議や集まりの場で、参加している人の緊張や固まった気持ちを解きほぐすために使われる手法で、非常にたくさんの種類があります。

 コーチングでアイスブレイクを使う場合、会話を主体にして行います。以下はコーチングで使われるアイスブレイクの例です。

アイスブレイクの例:

  • クライアントの興味、趣向、気になっていることを聞き、そこから話題を広げてみる。
  • クライアントの昨日1日の行動を調査し、そこから話題を広げてみる。
  • コーチングからコーチの印象を聞き、そこから話題を広げてみる。

 なお、ここでのアイスブレイクは、直接コーチングの内容と関連づける必要はありません。あくまで、クライアントの緊張や気持ちを解きほぐすことを目的に行います。ただし、その際もコーチは中立の立場にいることを忘れないようにします。

中立の立場:詳しくは、『第70回 コーチングのススメ3』の『■中立に立つということ』をご参照ください。

■「場」のスキルを活用する

 今回は、4SコーチングのSkill(スキル)について、「場」のスキルを紹介しました。実際にコーチングを行う際は、場のスキルを使い、まず最初にコーチングに適した環境をつくり出した上で、コーチングに入っていきます。

 そして、この「場」のスキルはコーチングだけに留まるモノではなく、会話によるコミュニケーションを必要とするシーンであれば、日常会話、ビジネス会話などを問わず、そのまま活用することができます。「場」のスキルを使うと、相手は会話に集中し、あなたに話しやすい環境になってきます。もし、調整ごとや頼みごとをする場合があれば、ぜひチャレンジしてみてくださいね!

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