第68回 コーチングのススメ1
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
キャリア相談をしていると、時々コーチングの話が出てきます。一時のブームは過ぎた感がありますが、それでもコーチングはまだまだ根強い人気があるようで、自己啓発として学びたい人が多くおられるようです。確かに、コーチングは非常に強力な技術・スキルではありますが、その反面、習得が難しいともいわれています。筆者もプロコーチとして活動することもありますが、コーチングを習得するまで、実に1年半以上かかりました。
そこで、「○○のススメ」シリーズの第3段として、今回はコーチングについて取り上げてみたいと思います。コーチングというものがどういうものか、その雰囲気をつかみ取っていただければと思います。
■コーチングとは
コーチングの定義はさまざまですが、一般的には、相手(クライアント)が自らの目標を達成させるために行われる会話型のコミュニケーションを指します。コーチングを行う人のことをコーチと呼びますが、コーチは会話を通じてクライアントがもつ目標を明確にし、その目標にクライアント自らが辿り着けるよう、気づきを与える、選択をうながす、行動を後押しするなどの方法でサポートします。コーチングがコンサルティング、カウンセリング、ティーチングと呼ばれる他のコミュニケーションスキルと大きく違う点はここで、行動を選択し、決定するのはすべてクライアント自身であることです。あたかも、クライアント自らが問題点を深く考え、解決策を模索するようなコミュニケーションの取り方がコーチングだと思ってもらうと分かりやすいのではないかと思います。
そのため、セッション※を受けたクライアントは、『あまりに考えさせられ過ぎて、脳がクタクタに疲れてしまった』といわれることもあります。上手なプロコーチになればなるほど、クライアントに深い考えをうながすようになります。だからこそ、自分自身が納得できる回答をクライアント自らが引き出すことができるようになるのです。
※セッション:コーチがクライアントに対してコーチングを行う場のことをセッションと呼びます。一般的には直接会って行われますが、SkypeなどのWebカメラを使って行われることもあります。通常、30~60分程度が1回のセッションになります。
■コーチングと一般の会話との違い
コーチングも傍からみればただの会話です。そのため、コーチングといえば聞く、話すといった会話に関する技法やテクニックがクローズアップされがちになります。それらもコーチングにとっては重要で必要なことだと思います。しかし、筆者の経験からすれば、それ以上に普段の会話と違う点があります。それは「立ち位置」です。
これは、筆者のやり方ですが、コーチングを行う場合、筆者はクライアント側にも、高橋という筆者個人の側に立ちません。それらから離れた中立、第三者の立場になってコーチングを行います。そのため、極力クライアントの言葉に心を動かされることがないように努めます。一見すると、こういった行為はクライアントに感情移入ができていないとか、薄情な感じがするようにみえます。しかし、コーチというのは、クライアントの目標を達成させること、その一点に存在意義があります。しかし、個人の感情に流されていると公平な判断ができなくなり、クライアントを目標に辿り着かせることができなくなることがあります。そうならないためにも、クライアントにも、コーチ個人にも寄らない中立の立場でセッションを行うようにします。
ところが、こういった話をすると、「それじゃ、高橋さんはコーチングをする際、感情を一切出さないんですか? 」といわれることがあります。しかし、それは別の話です。中立であり心は動かされることがなかったとしても、コーチの感情によってクライアントに何かしらの行動を起こせると思った場合は、どんどん感情を出すようにしています。つまり、コーチは自分の感情すらもクライアントの目標達成に使おうと考えます。このように、コーチングではすべての神経をクライアントの目標達成に注ぎますので、傍から聞いていると同じような会話にみえても、中身はまるで違うアプローチをしています。
■コーチングは独学で学べるか?
このようなコーチングですが、どうすれば学ぶことができるのか? これは程度にもよりますが、例えばコーチングの技法を使って部下を指導するなどの場合は、独学でも対応できると思います。しかし、プロのコーチが行うような本格的なコーチングを学ぼうとするのであれば、独学ではかなり厳しいと思います。それは、コーチングを行う上で必要となるの考え方やとらえ方が独学では学びづらいのです。
筆者の考えですが、コーチングは行おうと思って直ぐにできるようなシロモノではありません。机上で学んだことをそのまま実践したとしても、なかなかうまくいきません。恐らく、失敗するでしょう。しかし、コーチングを学ぶには、この失敗の中から自分なりにどうすればクライアントに伝わるかを考え、修正していくような学び方が必要になってきます。そのため、プロのコーチになろうと思うのであれば、プロとして活躍されているコーチの方から直接指導を受け、コーチングの訓練を積み重ねて行くことで、少しずつ試行錯誤しながら技術やスキルが身に付けていくような方法を取られることが多いのではないかと思います。
ちなみに、巷にあるコーチング本を、コーチングを知らない人とコーチングの訓練を行った人がそれぞれが読んでみると、解釈が違ってくることがあります。それは、コーチングを学んでいる人には、コーチング本に書かれている行間の意味が分かってくるからなのです。本の行間には本を書かれた人の想いや考えがたくさん詰まっています。それはその人の経験から来る内容ですが、コーチングを学んでいると、そこに気づくことができるようになってくるのです。ですので、コーチングを学んでいる人が、過去に読まれたコーチング本を読みなおしてみると、新たな発見をされるといったことがあったりします。
■それでも、コーチングを学びたいあなたに
冒頭にも書きましたが、筆者はコーチングを習得するまで1年半以上もかかりました。その後、プロのコーチとしてコーチングを始めたのですが、1年半かけて学んだ技術は筆者にとってシックリ来るものではありませんでした。そこで、筆者が使いやすいコーチングが何かを考えて試行錯誤を繰り返す中で独自のコーチング体系を作り出しました。筆者はそれを「4Sコーチング」と呼んでいますが、現在はそれを元にコーチングを行っています。
そして、この4Sコーチングはコーチングを学びたいという人にも提供しています。コーチングを学ぶことは大変なことですが、4Sコーチングではその大変さを少しでも軽減させることができればという想いもこめて作っています。次回からは4Sコーチングをかいつまんでご紹介させてもらおうと思います。ぜひ、コーチングの深遠な世界に触れてみていただければと思います。
(注意)当コラムで書かれているコーチングに関する内容は、他のコーチングの考え方を大きく異なる点があります。しかし、それらは他のコーチングを批判するものではないことをご理解ください。