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第60回 人前で話すことについて考えてみる

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 前回のコラムにもありますが、筆者はキャリア・コンサルティングの他に研修の仕事もしています。大勢の方を前に話をする仕事なので話上手な体でみられることが多いのですが、実際には逆で、話すことは苦手な部類だったりします。そこで、今回は人前で話すことが苦手な人がどうすれば話せるようになるのかを考えてみたいと思います。

■話すことが苦手な人にみられる徴候

 筆者も含め、話すことに苦手意識を持っている人にはいくつかの似通った徴候があります。まずはそれらをざっとあげてみます。

  • 緊張する
  • 話すことが思い浮かばない
  • 声が出ない

 他にもいくつかの徴候はあると思いますが、特にこの3つは話すことを苦手にしている人にとってよく出てくる徴候ではないでしょうか。ところで、実はこれら3つの徴候は互いに関連を持っており、1つずつ順を追って身体に変化を与えていきます。それは以下のような流れで表れてきます。

《3つの徴候が身体に表れる流れ》

1.人前に出ることで緊張してしまう

2.緊張すると話すことが飛んでしまい、思い浮かばなくなる

3.話すことが思い浮かばなくなると、声が出なくなる

話すことに苦手意識を植え付けてしまう!

 このような一連の変化が身体の中で起こることによって、たいていの人は知らず知らずの間に人前で話すことに苦手意識を感じるようになってしまいます。

■人前で話せるようになるワーク

 それでは、どのようにすれば人前で話すことができるようになるのか? ここで、筆者が実際に研修で行っているワークを1つご紹介します。

 まず第1段階。人前で緊張してしまう人に、絵本を手渡してそれを人前で朗読してもらいます。これは人前であってもほとんどの人がスラスラ読むことができます。また、それほど緊張もしないようです。それは、絵本の文字量は極端に少なく簡単な文字で書かれているから読みやすいとういうこと、また、絵本自体に集中することができるため、極端に周りの人を気にすることが少なくなってくるからです。

 それでは第2段階。今度は絵本を朗読する際、抑揚を付けた朗読してもらいます。ここでは数回の練習をしてもらうのですが、どの人も抑揚を付けた朗読ができるようになってきます。これは、何度か繰り返し練習することによって、朗読の際の抑揚のリズムを身体に覚えさせることができるからです。

 そして第3段階。今度は絵本を極力みないようにして、なるべく人の目をみて、先ほどと同じような抑揚を付けて朗読してもらいます。これも数回の練習をしてもらいますが、第2段階をクリアされた人であれば、ほとんどの人がこの段階もクリアされます。これは、第2段階で朗読のリズム自体を身体が覚えてしまっているので、余裕をもって話すことができているからです。

 ここまでをひと括りとして、これを数回繰り返します。その後、これまでのワークで自分の中に起きた変化まとめてもらい、最後に1分間という時間を使って抑揚を付けてスピーチしてもらいます。話す内容は事前に内容を考えてもらい、数回練習した上で人前で話してもらうのですが、最初のときはうって変わって、多くの人が抑揚を付けてご自身の体験を話せるようになっています。その姿は、最初に人前で話すことが苦手だといっていた人とは思えないくらいの変わりようです。

■話せるようになることと苦手意識は別物

 ところが、これで話すことの苦手意識が消えたかというと、半数以上の人がNoと答えられます。これはなぜか?

 この答えから考えられることとして、人前で話せるようになることと、人前で話すことに苦手意識を持たなくなることとは全くの別物ということです。先のワークでは人前で話すためのフレームワークを使ったのですが、最後のスピーチはそのフレームワークを使って人前で話せるようになっただけなのです。そのため、苦手意識を克服したというより、決められた型に従ってやってみたらうまくいったという方が正しいいい方になります。つまり、苦手意識自体は残ったままなのです。

 ですが、このことは2つの側面を私たちに教えてくれています。一つは、苦手意識を持っていても人前で話すことはできるということ、そしてもう一つは、人前で話すということは決められた型に話すことで効果的に話すことができるようになることです。

 人前で話すことはどのような仕事をしていても求められます。そのため、当然抑揚を込めて話せるようになると、それは他の人を惹き付けるとても強力なスキルとなってきます。そのスキルは、どのようなキャリアを形成する上でも大きな役割を果たしてくれます。

 ですので、もし人前で話すことが苦手だなぁと思われる人は、その苦手意識を持ったままでも構いませんので、人前で話せるスキルを身に付けてみてはいかがでしょうか。それは、あなたのキャリアを大きく切り開く一手になる可能性を秘めています!

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