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第44回 四方山話(26) 論理思考のススメ3

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 論理思考ネタも3回目になりました。今回は論理思考の2つの要素の1つである「論理的な考え方を身に付けること」の最後の1つ、「論点がズレていないか? 」を考えてみたいと思います。

■「論点がズレていないか? 」

 これまで、「話の筋道が通っているか? 」「選択肢の抜けがないか? 」について考えてきました。「話の筋道が通っているか? 」では話の筋道や理屈が通っているかを考えることで、演繹法帰納法という考え方を紹介しました。また、「選択肢の抜けがないか? 」では論理的な判断をするために、判断の基準となる選択肢をすべて見付け出しておくことで、MECEという考え方を紹介しました。

 それでは、前回、前々回に例として出したプログラミングの進捗が遅れていた原因を今一度考えてみます。今回はその原因を「体調が悪かった」ということにしましょう。この答えは、MECEによって導き出された選択肢から選ばれており、命題と答えは話の筋道が通っていることとします。これまでの話を踏まえると、この答えは論理的に考えられているといえます。

 しかし、この命題のバックボーンに「技術的な視点からリスク分析したい」という想いがあったとしたらどうでしょうか? 体調が悪かったという原因はそもそも的外れということになります。

的外れ:この場合、体調が悪かったことで技術的に何が欠落してプログラムの進捗が遅れたか、と考えるようにすると、意図した原因を導き出すことができるようになります。

 このように、どれだけ物事を論理的に考えたとしても、そもそも考える上での論点がズレていると、意図した答えを導き出すことはできません。そこで、論点をズラさない方法として、因果関係という考え方があります。これを「物事を論理的にとらえる方法」にあてはめると以下の図のようになります。

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■因果関係とは

 因果関係とは、「ある物事に対する原因と結果の結び付き」のことをいいます。例えば、この例をみてください。

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原因:りんごを食べる

結果 :りんごがなくなる

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 当たり前過ぎて、何いってんだ! って感じですが、この事象を詳しくとらえてみると、りんごを食べるという行為がりんごがなくなるという結果に結びついているといえます。このような繋がりを因果関係といいます。論理思考で物事を考える場合、物事の因果関係は正しくとらえておく必要があります。特に、起こっている事象や状況から原因や結果を推測する場合は、因果関係を正しく見極めておかないと、想定した答えを導き出せないことがあります。

 それでは、次の例をみてください。

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事象:未成年が喫煙をしている

結果1:未成年者喫煙禁止法に抵触する
結果2:肺機能が低下する

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事象:人の言うことが聞けない

原因1:親が躾(しつけ)をしてこなかった
原因2:耳の機能が低下していた

――

 これらの例はすべて正しい論理展開がなされていますが、因果関係のとらえ方が違うため、異なる答えが導き出されています。どちらの答えが本当に必要なのかは、解答を欲している人(モノ、コト)の立ち位置(立場)を考えることで分かってきます。この答えの立ち位置を明確にしてみると、このようになります。

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事象:人の言うことが聞けない

原因1(環境面の立ち位置):親が躾(しつけ)をしてこなかった
原因2(身体面の立ち位置):耳の機能が低下していた

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事象:未成年が喫煙をしている


結果1(法律の立場):未成年者喫煙禁止法に抵触する
結果2(健康の立場):肺機能が低下する

――

 こうやって立ち位置や立場を明確にすると、かなりスッキリとした感じにみえますね。このように整理することで、論点がズレることなく意図した答えを導き出しやすくなります。

■それでは、問題です!

 それでは、因果関係についても1つ問題を出してみます。一緒に考えてみましょう。

――

命題:システム開発の現場で、周りの人の指摘を聞かず仕事をしているITエンジニアがいる。この先、どのようことが起きるか?

結論1:(開発チームとしての立場)???
結論2:(本人の立場)???

――

 実際によくありそうな話ですが、命題のような人が仕事をしていると、この先どうなるのか? 開発チーム、個人の立場で考えてみてください。筆者はこのように考えてみました。

結論1:一緒に働いてる開発チームとしての立場

    • 開発チームの調和を乱す
    • 成果物の納期や品質が変わる

結論2:本人の立場

    • 開発チームから孤立する
    • 本人の評価が変わる

 これもいろいろな答えが考えられますが、筆者と同じような答えを出された人もいるのではないでしょうか。ところでこの答え、何となく歯に衣着せたような物言い(? )になっていることに気が付きましたか? そうです、「~が変わる」といいういい方をしている所に注目してください。

 素直にこの命題を考えると、「指摘を聞かない=悪い」という印象をもってしまいがちですが、この命題だけだと指摘を聞かないことが良いことか悪いことか、その定義がされていません。そのため、因果関係の結論を良い方向、悪い方向どちらに振ったらよいかを結論付けることができないので、ここでは「~が変わる」という表現を使いました。

■因果関係を攻略しよう!

 こうやってみると、因果関係は少し取っ付きが悪そうに感じますが、因果関係を考える場合にもコツのようなものがあります。

《因果関係を考えるコツ》

  • 立ち位置(立場)を決める
  • 起こっている事象や状況を客観的な視点(第三者的な視点)で俯瞰(ふかん)してみる

 先の例のように何かしらの評価判断が入る場合、主観的な立場(当事者的な立場)だと見えてこないモノがあります。そのため、事象や状況から一歩引いて客観的な立場で見渡す癖付けをしておくと、的を得た因果関係を見つけ出すことができるようになってきます。

 正しい因果関係で物事をとらえることができるようになると、俗にいう「話が脱線する」ことが減り、的を得た話ができるようになるのでオススメです! ぜひ、因果関係を攻略してみてくださいね!

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