登場する前から周回遅れ
まだまだ AI を始めとした IT 技術の進歩のスピードが速く、去年はやっていたことが今年はすでに遅れているといった状況を生み出しています。当時の最新を盛り込んで構築した仕組みが、次の年には周回遅れになっていることも珍しくはありません。技術に関わる身としては、できるだけ新しく便利なものを提供したい気持ちがあるのですが、気持ちだけではどうにもならないほど進歩は早くなっています。
数年前であれば、市民開発では大したことはできないから広まらない、AI を業務に用いられる場面はそれほど多くない、そのような意見を持っていた人も多かったと思います。ですが今ではどちらも利用を検討するどころか、利用していてもなんら不思議ではないほどです。
どのような技術もそうですが、実際にできることは限られている面はあります。何も考えずに利用していては、それほどの効果を生み出すことはできません。利用できる場面に利用できる技術を用いる、ここ数年で発展したものは活用するための場面を広げすぎずに扱うようにしていたことも、広く浸透するに至った一因なのではないかと思われます。
ただ、ここ最近においてはさらにスピードが速くなっているようで、作成する仕組みで利用しようとしている技術が、作成途中で前提を覆すような進化を遂げてしまうことも出てきています。例えば GPT モデルの 3.5 Turbo を利用するよう考えていたものが、4.0 が登場し機能も向上、ただコストの兼ね合いで 3.5 Turbo を継続しようと進めていたら、4o が登場し増えるコスト以上に能力が向上していたといった感じです。この場合では、ランニングコストが増えるデメリットよりも、向上する能力を重要視して 4o を利用するよう方針転換することがあったりします。そうなると考えていた仕組みを調整する必要があったり、新しい機能追加を求められたりしてしまい、決めていたスケジュールをリスケして引き直すことにもなりえます。
これまでであれば、利用としている技術やサービスの次期バージョン登場といったことは大きなポイントですので、それを見越した開発計画や運用計画を立てることが多いです。クラウドが一般的になってからも、何かしらの技術を主軸にし今後のアップデート予定を踏まえて計画を立てることはあります。開発言語や DB、Iaas で利用する OS などは、オンプレ時代もクラウド時代もどちらでも同じような指針になりやすいです。それに従って開発を進めることで、開発途中からバージョンアップを考える必要性を減らし、安定したものを作る時間を増やすのです。しかし、AI に始まるここ最近の技術では、開発途中で新バージョンが強力な機能を引っ提げて登場してくることも珍しくなくなりました。
このような問題を避けるためにとれる手段となると、かなり限られてきます。バージョンアップに付き合わない、というのも一つの方法ですが、システムを実際に利用するユーザーにしてみると、なぜ新しいものが利用されていないのか、と不思議に思われるでしょう。明確な答えを返すことができればよいのですが、多くは開発側の事情がほとんどです。それはユーザーにはあまり関係がありません。
となると、できるだけ短期間で開発を終わらせることが必要になるのではないでしょうか。大きな案件では別でしょうが、一般的な案件であれば一つ一つの仕組みが扱う範囲を限定的に小規模にし、世の中の流れが変わったとしてもついていきやすくするようにする、今後のシステム開発ではこのような方針が必要になるのかもしれません。
以前であっても、開発当初は新しい要素を盛り込み先進的でしたが、実際に完成して利用を始めたときには周回遅れになっていた話は耳にすることはありました。これからは同様の話が、より多く出てくるかもしれません。自分たちの仕事がそうならないように、色々と考えて手を進めていきたいものです。