ローコードたちとAI
9 月が終わろうとし、今年も残すは 3 カ月となり夜に窓を開けていられなくなりました。2008 年から書き始めたここでのコラムも恐ろしいことに 17 年が終わろうとしています。何が恐ろしいかというと、17 年も続けてそれなりに年を重ねたにも関わらず、本人は体力以外年を取った気がしていないということです。気持ちだけは若いままというか、30 代あたりの精神性を保っているのは、よくよく考えなくとも恐ろしいことです。
Vibe Coding に始まり AI を活用した開発はますます広がっていて、これまでの経験値が生かしにくい状況になっています。今ではコーディングだけではなく、上流に位置する要件定義から AI を活用した開発手法が出始めていて、人間が考えて作業を行うよりも圧倒的に高速な開発が行えるようになりつつあります。技術が好きで育ってきた私としては複雑に思うところもありますが、仕事として開発を行っている以上はこの流れに逆らう理由はありません。
社会人になりたてのころからある程度物事がわかり始めた 30 代のあたりで培った経験は、今でも活用できているといえばそうなのですが、AI の進歩はその程度の経験をあっという間に飲み込んでいっています。よほど先進的な分野に関わっているのでなければ、かなりの部分で自分が作業する方が遅い、という悲しい状態になるのは避けられません。
去年であればまだまだ人間がやったほうが良いと考えられていた領域も、今年に入ってから AI が進出してきました。それも想像しているよりも遥かに速い速度で進出してきましたので、活用自体がうまくできていないのが実情です。能力はあっても使いこなさていないのでいまはまだ人間が有利に見えているかもしれませんが、これもきっと遠くないうちに簡単にひっくり返されてしまうでしょう。
このような背景を考えると、これまで私が勧めていた内製化の世界も大きく変わろうとしていることには納得感があります。これまではローコードやノーコードを活用するのは、プログラミングコードでお開発が行えない会社がシステムやアプリを作成するためだったのですが、AI がその立ち位置に入ったため、ローコードやノーコードのメリットが変わっています。システムやアプリを作成するのは AI に任せいかに安定して運用を行うかがポイントとなり、そのために Saas や Paas であるローコード/ノーコードを活用するのがメリットとなりつつあります。あくまでも現時点ですが、インフラ方面での AI 活用はプログラムコードの作成部分と比較するとまだこれからな部分です。そのため、いまはシステム開発を考えローコード/ノーコードを導入するのではなく、安定した運用を委任するためにローコードやノーコードを活用する、そのような形に切り替わってきているのではないかと感じています。
単純にモノづくりだけを考えると、Vibe Coding で進めた方がより高性能なものを作成できます。機能に制約のあるローコードやノーコードを選択するメリットは、この点においてはかなり薄れています。そのような一面もあり、いまいまはインフラ領域や安定運用を感は得た結果、ρコードやノーコードを選択する形になるのではないでしょうか。提供されている部品群を利用した構築も、AI が知見をかき集めて作成した構築も、人によっては中で何を行っているかわからないという点では同じです。どちらを選択してもわからないのであれば、より高性能な方を選択することも間違いではありません。
これからのローコードやノーコードは、一番のメリットとしてプラットフォームの安定性があげられるようになり、開発の部分ではそれほどメリットはないと考えていくのがよいのかも知れません。登場当初に掲げていた市民開発者というものも、これからはそこまでのメリットを出せないかも知れません。
時代の流れに合わせて利用できるものは利用しメリットがなくなったものは利用しない、これまで幾度となく繰り返してきたこの流れが、ローコードやローコードの世界にも侵食してきたのだと感じます。そのまま消えてなくなるのか、または違う価値を生み出すことになるのかはわかりませんが、メリットデメリットを見極めて付き合っていきたいものです。