地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

2025年の壁まであと3年

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 今から 3 年前の 2018 年に、経済産業省のレポートに 2025 年の壁という言葉が登場しました。企業が抱えるレガシーシステムの問題をはじめ、デジタルトランスフォーメーションを推進していかなくてはならないといった内容です。問題とする 2025 年がまで今年を含めてあと 3 年となったいま、世の中はどの程度変化してきたのでしょうか。

 レガシーなシステムや過剰なまでの最適化がシステムにかかるコストを増大させ、会社経営にまで影響をあたえる問題点やそれにまつわる人材不足の問題が、このレポートにより多くの目に触れることになりました。特に人材不足については、新しいトレンドや技術に対応できる人が数十万人規模で不足する可能性もあると言われています。

 コロナ渦によりある意味で強制的にデジタルトランスフォーメーションを行う形となった企業もありますが、本質であったレガシーからの脱却にはなかなか至ることができません。コストや不可などを考慮した結果、レガシーな部分はそのままで新しく何かを導入することで見かけ上乗り切ることにした企業も多いでしょう。企業の規模によっては、そうそう簡単にシステムを入れ替えることができないのはよく知られています。ただそれでも、部分的にトランスフォーメーションが進んでいるのは良かったことの一つです。

 対して人材については今に至ってもあまり解決のめどがたっていないのではないでしょうか。というのも、人材が不足しているのは 2025 年の壁が言われるよりも前から業界的に言われ続けている話題だからです。IT業界は慢性的に人材不足となっているのですが、やはり求められるスキルセットを持つ人材は非常に少ないことがあります。

 現在の開発業務において、人数が不足していると感じられるのはコーディングを行う層よりも設計を行う層、さらには要件をまとめる層やプロジェクトを管理する層といったように、上流工程になればなるほど不足していると感じることが多くなります。もちろん元々アサインできる人数が少ない状況だったため、コーディングを行う人を外部の企業から派遣してもらう場面もありますので、一概に上流だけが不足しているとは言い切れません。企業によってはコーディングを行う部分をまるまる外部企業に依頼することもあるでしょう。そのような場合もあるでしょうが、多くは上流工程を扱える人材が不足しているのだと思われます。

 コーディングを行う人たちの中でも、クラサバ型ばかりやったのでクラウドには疎い人もいますし、Web系から業界に入ったのでクラサバ型をやったことがない人がいるように、企業の中ではどうしても人材が不足する領域は発生するものです。別にデジタルトランスフォーメーションが言われ騒がれることになったために発生した問題でもありません。
 
 世の中的にデジタルトランスフォーメーションが求められていて対応できる人材が不足しているというよりも、世の中とは関係なくもともとデジタルトランスフォーメーションを考えられる人材が不足しているのが今のIT業界の現状だと私は考えています。求められるスキルをもつ人材が不足している、求められていないスキルを持つ人材は豊富、と言い換えるとこれまでと何ら状況は変わっていないと感じられるのではないでしょうか。

 ベンダー側、ユーザー側でもしかすると異なる事情はあるのかもしれません。ですが共通しているのは、これまでと同様に求める人材は不足していた、という事実です。これからの時代は、もっと流動的に人材を扱えるようにすることが企業に求められるかもしれませんし、自社内で人材を育てるために教育関係をもっと注力することを選択する企業も出てくるかと思います。どういった方針を打ち出すかは企業によって様々になるでしょうし、社員として勤める側としても自身の思想と企業の方針の合う・合わないが大きな問題になってくることも十分に考えられます。どの考え方が適しているのかは、これが正解というものは勿論存在しません。

 2025 年の壁とは別に IT 業界として常に求められるスキルセットを持つ人材は不足していることと、それほど求められなくなったスキルセットを持つ人材は多数存在していることを踏まえると、どのようにすれば求められるスキルセットを身に着けられるかを考えていく必要があります。それを所属する企業に求める方法もあるでしょうし、独自にやっていく方法もあります。最終的に求められるスキルセットを持つ側となれるよう、常に意識し実践していくのが大切なのだと私は考えます。実践した結果、開発側からユーザー側へと移ったり、反対にユーザー側から開発側へと移ったりしてもよいのではないでしょうか。

 その時のご時世により使われる言葉は異なりますが、本質的には求められる人材は常に不足しているということだと思います。それをふまえてどうしていくかは、自身で考えて実践するしかないのかもしれません。

Comment(1)

コメント

名無し

デジタルで実施出来ると、能力によって物理的に置き換えてる土木空間では出来ない事も、プログラムのスキルではコードの修整及び確認で成果が変わるんです。この業界、いつまでも言いなりになるスーパープログラマー待ってるから、設計ファーストとか、スパイラルできっちり検査までやりきろうってプロジェクト自体少ないと思います。

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