ハンディキャップ・マッチを挑む

技術動向 | 業界動向

» 2018/12/28

　最近は色々なところで QR コードによる決済を行う仕組みが増えてきています。各社ともにキャンペーンなどを実施し、広く根付かせようと動きが盛んなのもあり、多くの人が知るところになったと思います。よくよく考えてみると、支払う行為としては便利になったというよりも、手間が増えているのが特徴です。

　それでも恐らくは、何社かは継続して提供するサービスであるとは感じます。サービス単体ではなく、複合的な価値を提供する方向で考えると、手間が増えてもそれで何かしらの特典があるなら、利用するユーザーもそれなりに期待できるところなのでしょう。このような状況を見ていると、エンジニアが考えるあるべき姿と、実際に世の中で求められる姿には、結構な開きがあるのではないでしょうか。

　これは開発者と非開発者というケースに限らず、関東とそれ以外とか、色々なケースに当てはまります。例えば関東であれば Suica でほとんどの支払いが行えてしまうのもあり、Suica 一つで十分と考える人が多いと思います。ところが札幌などでは Suica で得られるメリットが殆どありません。もちろん買い物で利用することは可能ですが、そもそも JR を Suica で利用しても割引がありません。Kitaca という JR 北海道が発行している同種のカードがありますが、デザインがかわいいのを除くと、導入する必要性が関東ほど高くはありません。そのため、交通系 IC カードを所有していない人も珍しくはありません。そのような環境では、Suica に統一されたとしても何もメリットはなく、ただ不便になったと思うだけです。

　個人的に思うのは、サービスが提供するメリットが明確で、利用しないことで感じるデメリットを大きく上回っていなければ、どのようなサービスも広まらないと考えています。ただし、メリットを感じる人数が一定量見込め、提供する側が成り立つ利益を獲得できそうであれば、デメリットをわかりつつもサービスを提供すると決断するところは多いと思います。

　最初に書いた、QR コード決済はそのタイプではないかと感じます。支払う側の手間が増えており、Felica 系統の決済を利用していた人にとっては面倒が増えただけですが、支払い金額の一部キャッシュバックなど、違う方法を合わせることで一定以上のユーザーが期待できるという計算があったのではないでしょうか。

　今後これらのサービスのうち、どれだけの数が生き残るかは未知数です。もしかすると来年 2019 年のうちに殆どがサービス終了となる可能性もありますし、多くのサービスが違うメリットを打ち出すことで生き残っている可能性もあります。どうなるかはまったくの未知数です。ただしサービスの原点としては、便利になったわけではない類なのがどうしても付きまといます。そのハンデをどのように攻略していくか、一人のユーザーとしてそこは楽しみでもあります。

　もし自分たちの仕事として、同種のサービスを提供することになったとした場合、どのような方法でもって勝負を仕掛けるか、こういった方向から考えてみるのも、エンジニアとして役に立つ事かも知れません。