地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

チーム規模を大きくする危険

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 最近では多種多様なツールを業務に用いている環境も、さして珍しくはなくなりました。昔ではメールで連絡を取り合う程度だったものが、メッセンジャーでリアルに近い速度でやりとりを行い、大容量ファイルをオンラインストレージで送付、Saas で提供されているグループウェアで各関係者のスケジュールを把握できるようにしているというのも、今ではよく聞く話となっています。

 数年前では考えられなかったほど、数多くのサービスが登場し私たちの業務を便利にしてくれているのですが、場所によっては上手く活用できていない話も、また同じようによく聞く話となっています。

 基本的には守りの姿勢を良しとするのが企業姿勢の見本ということもあり、社内端末からしか各種サービスを利用させないセキュリティルールを設けてながらも、新たにメッセンジャーサービスを導入したので、ぜひ利用してくださいといった依頼を投げてくるような環境は、笑い話ではなく思っている以上に多くの会社がそのようにしていると言われています。

 場所と時間を問わずに利用できるのがメリットの一つなサービスであるにも関わらず、それを見事なまでに打ち消すルールを適用するのです。これはルールそれ自体が悪い、ということではありません。守るべきルールと、導入するサービスをしっかりと併せて検討していないのが悪いのです。同じ社内にいるというのに、わざわざメッセンジャーを通してやりとりするのは便利でもなんでもなく、ただただ不便になっていくだけです。このような環境で導入することには、何もメリットはありません。

 また今では、マルチテナント型のサービスを開発・提供している企業も多くなっています。この場合、一台のサーバ上に複数テナントのデータが混在することになり、より一層セキュリティルール的に厳しくすることが一般的です。ところが、各テナントに対応する要員が異なり、正しく情報の連携を行っていない場合、あるテナントに対してはしっかりとしたセキュリティを適用していたのに、同居している別テナントに対しては抜け穴のある環境としてしまっていた、なんていうことも実際に起きています。

 なぜこのような事が起きるのか、と考えると、関係者間での連携が非常に弱い、ことが一番の理由ではないでしょうか。

 よく言われる、縦割り構成、なのですが色々言われ続けているにも関わらず一向に改善できたという話は聞きません。一時的には改善することがあるかもしれませんが、時間がたつにつれて元通りに収まることも非常に多いです。

 これらをふまえて考えると、ある程度以上の規模では連携を上手く行う手段はない、と言い切っても良いのかもしれません。もちろん程度の差は、関わる人の資質に左右されることはあります。組織にあまり囚われないで動くことができる人が多ければ、ここまでに書いた事例は大体が防げる話題だとも思います。

 しかしそのような資質を持つ人の割合は、なかなかに稀です。何事においても同様ですが、全員が全員そのように振舞うことは確実に不可能なのです。その前提がどうしてもある限り、一定以上の規模では連携を上手く行うことは不可能、とまで言えるのかも知れません。

 この前提が正しいとすると、連携を上手く取り合うための条件に、規模が含まれることとなります。連携の問題だけにとどまらず、ほかにも多くの問題は大規模チームにつきまといますので、いかにチームの規模を抑えるかということは、開発を行う上で非常に大切な課題なのではないでしょうか。

 案件的に大規模であっても、中小規模チームを多数並列に動かせるような体制を構築できれば、今抱えている問題はある程度解決できるのかも知れません。もちろんそうすることで、今までは発生していなかった別の問題が出てくることになりますが、少なくとも大規模なチームにすることよりも、対応策が存在しているのではないかとも思えます。

 規模を小さくすることに注力しすぎると、個人個人へかかる負担が大きくなりますので、サジ加減が難しいところではあります。関わる人達の能力によっても、適した規模というのは異なってきますので、これ、という正解は存在しないとも思います。その時その時で、最も解決しなくてはいけない課題は何か、という基準にもとづいてどのくらいの規模が適切かというのを決めていけばよいのではないでしょうか。

 開発に必要な人員数を見積もった際、非常に大人数でなくてはならないと算出することは多々あります。ですが、大人数必要であるということと大規模のチームであることは同じではありません。現状では、大規模チームで発生するデメリットよりも、中小規模チームで発生するデメリットの方が、解決手段も多く出そろっているかと感じます。可能な限り規模を抑えることも、上手く案件に対応するためには必要なのではないでしょうか。

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