地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

触れるべきは新しい道具

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 Windows10 が登場して 1 年以上が過ぎていますが、登場当初の混乱も今ではすっかり見ることもなくなり、最新の OS らしくより使いやすくなってきたと感じられます。私自身も早いうちから Windows10 環境に移行していたこともあり、今では 10 でなければ不便に感じるほどになっています。スタートメニューが復活したことには少々困りものですが、全体を通して非常に良い感じに仕上がってきていると思います。

 OS に限らず私たちの利用する環境は、常に進歩を続けています。開発用 IDE として著名な、Visual Studio もまもなく Visual Studio 2017 が登場しますし、Mac 向けの VS for Mac も登場が控えているようです。エディタとしての機能を優先している Visual Studio Code もありますし、開発そのものを強力にサポートしてくれる時代になりました。私は Windows を主に対象にした開発を行っているため、ほかのプラットフォームには明るくないのですが、同じようなことが起きていると思います。

 最近ではこういった開発環境を利用するのと利用しないのとでは、生産性に大きく差がつくことは当然のように認識されています。今でもやろうと思えばテキストエディタだけでコードを書き、コマンドラインからビルドして実行させることも可能ですが、IDE を利用している場合とは圧倒的に差があります。

 このように進化を続ける開発環境ですが、ものによっては残念ながらその流れから取り残され、旧来のツール群を利用しなくてはいけないケースも存在しています。一部の POS レジやハンディターミナルといった機器向けの開発ですが、利用するプラットフォームはその性質上、通常よりも長い期間利用できなくてはなりません。このような環境向けに開発を行う場合、どうしても古くなったツールを利用しなくてはなりません。

 私が携わった開発の中では、Windows Embedded と呼ばれる組み込み向け環境用アプリを作成したことがあるのですが、これは Visual Studio 2008 環境でなければ開発できないという制限があります。名称からもわかるように、既に登場して 8 年以上が過ぎており、製品サポート自体もすでに終了しているのですが、今でもこの環境でなければアプリのメンテナンスもできない状況となっています。別の案件で新しい環境を利用していると、このような古い環境を利用しなくてはならない場合にかなりのストレスを感じることとなります。

 常に新しい環境を利用できるのがベターなのですが、上記のように古い環境でなくてはならないケースが残ります。一開発者としてはこのような取りこぼしが起きないよう、メーカーには留意してもらいたいのですが、色々な事情があるのでしょう、なかなか対応してくれることは稀です。

 こういった状況を考えると、一部の人が言われるように新しいものだけを利用していくことはよい事ではないように感じることもあります。ですが、新しい環境を利用することで気づくことも多いのではないでしょうか。.NET 環境で言えば、新しい Visual Studio を利用することで、新しい言語構文を利用することができますが、従来の環境を利用しているだけではなかなかそのようなところまで手を伸ばしにくいかと思います。2016 年になった今でも LINQ を使ったことがない人を結構な頻度で目にするのもあるように、一部の人を除いてはなかなか新しいところに手を伸ばすことはできません。しかし環境が変わることで、より多くの人が手を出しやすくなるのは大きなメリットではないでしょうか。

 古い環境だけでは気づきにくいメリットというのも、世の中にはたくさん存在しています。変に食わず嫌いにならずに、色々と手を出してみることも時には必要なのだと思います。それで得られた気づきが、古い環境でも役立つことになるかもしれません。何が役に立つかは、その時点では気づけないものです。技術に対しての目利きがどうこう言われることもありますが、あまりそのようなところは気にせずにやっていくのがよいのではないかと思います。

 と、色々書いてはみましたが、心の奥底では Embedded 開発が新しい Visual Studio に対応してくれないものかと常々思っています。これは新しい環境になれた弊害、ということになるのでしょう。ないものねだりなのでしょうが、どうにかなってほしいものです。

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