地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

ミスを許さない世界が幸せを生むか

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 世の中には、文句を言うだけ、というスタンスの人がいます。どのような理由がそうさせるのかは分かりませんが、何につけても否定的な意見ばかりを口にし、対案を出さない人の数は、非常に多いように思えます。昔から一定の割合でこのようなタイプの人を見受けることがありましたが、今の時代になってその数は増えてきているのではないでしょうか。

 例えば新しい製品が登場した際に、「これは○○だからダメ」、と悪い点ばかりをあげて良い点を見ようともしないケースや、仕事の方針についても「□□じゃなければならない」と考え方が凝り固まっている人は、周りを見渡すと結構な数で見かけるように感じます。このような人が増えてきた原因として、今まで以上にミスが許されない世の中に変わった、というのがあるのではないかと思います。

 同じ不祥事が発生したとして、過去と現在では取り扱われ方も全く異なり、場合によっては過剰なまでに叩かれることもしばしばです。そして日本人はその性質もあり、ミスを許さない精神が非常に顕著です。過去は許されても、現在ではほとんどが許されることなく徹底的にまで追い詰める風潮があります。そのような流れがあるためか、ミスを過剰なまでに警戒し異常なまでにリスクを気にする体制が常となってきたのではないでしょうか。

 このような状況では自由な発想、挑戦的な行動はなかなか採れるものではありません。「もし失敗したら」とリスクを危険視すると、どうしても守りに入るしかなく攻めの姿勢をとることができなくなってしまいます。今の日本の IT 業界はどちらかと言わなくとも、守りの姿勢が大勢を占めています。ハイリスク・ハイリターンが許される環境ではなくなってしまったのです。そのため失敗の少ない、安定した方法を採用せざるを得なくなり、どこか 1 社でも冒険的な事を成功させた場合、その他の企業は非常に大きなマイナスをかぶらされる事となるのです。海外から進出されてきたソリューションに、日本企業は対抗できていないのもこれと同じ理由でしょう。

 これは作る側、使う側どちらか一方に限った話題ではなく、私たち全員が変わっていかなければならないところだと感じます。今のままではエンジニアとして充実を感じる仕事をすることも難しく、またユーザーとしてもいつまでも変わり映えのしない使い方を選択するしかありません。そのような状況で何が進歩できるでしょうか。以前にエンジニアは新しい事に挑戦し続ける必要がある、という旨のコラムを書いたことがありますが、これはエンジニアに限らず全ての人が取り組む必要がある課題なのだと思います。

 ミスはないに越したことはありませんが、ミスが許される状況は絶対に必要です。そこでの試行錯誤こそが、次の時代へとつながるなにかを得られる唯一の場面だと思うのです。仕事においても同様で、少しずつでも新しい事を取り込んでいかなければ、提供できるものが良くなるはずはありません。現状維持は後退しているのと同意なのです。周囲が 1 進んでいるのに 0 のままであるというのは、後々に取り返そうとした時は必要以上の労力が必要になります。そこまでの労力をかけられるのであれば、もっと早くから取り組むことでもっと多くの進展を得られるのではないでしょうか。

 そうなるために私達はどうしていくのがよいか、これは難しい問題です。簡単に言ってしまえば、ミスを許容できる環境に切り替えていく、気持ちを広く持ち続けることに他ならないのですが、それは非常に険しい道で自分たち以外の要因も数多くあります。ですが先ほどの新しい技術への取り組み同様、今からでもやっていかなければこの先の未来においても、何も変わることはありません。むしろもっと厳しい状況に陥ることが容易に想像できます。
 小さなことからコツコツと、とは昔に良く聞いた言葉ですが、今こそその言葉通りに少しずつでも変革させていかなければいけない、私はそのように考えます。一人一人ができる事はほんの些細な事だけしかありません。ですが、その些細な事がなければより大きな変化というのは生まれしはないのです。

 厳しくすることは簡単です。やってはいけない事を増やしていくのも簡単な事です。しかしそのように道を狭めるだけでは、良い結果を作り出す流れは起きません。ミスを許す、失敗を受け入れる、リカバリの機会を与える、そういった空気をどれだけ作ることができるかが、私達の未来にそのままつながっていくのだと思います。

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