地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

システムに求めるたった一つの機能

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 オールインワンを謳うシステムが世の中には数多く見受けられますが、本当の意味でそれを実現できているシステムは皆無だと思われます。実際に作れ、ということになると非常に難易度の高い、それでいて正解のない迷路に迷い込んでしまうのではないでしょうか。

 オールインワン、全ての機能が揃っているというのは日本ですと非常に価値の高いように受け取られています。「何でもできます!」と言うのが「○○ができません」というよりもマイナス要素が少ないからでしょうか、日本固有の評価方法として、減点法による評価が広く世の中に蔓延していますので、どうしてもマイナスイメージを持たせない方向へとシステム作りは向かってしまいがちです。

 今でいえば Saas としてサービスを提供する形も一般的になってきているのもあり、望む機能が全て提供されていないものを、工夫して利用することも珍しくはありません。ですがこれも過去から繰り返されている話題で、フルオーダーなシステムではなくパッケージを適用してコストを下げよう、という試みも幾度となく試されていましたが、現実には財務や人事給与といった定型的な業務に用いるのがやっとでした。
 その定型業務ですら、パッケージやサービスに合わせるのではなくカスタマイズしたり独自のアドオンを用意したりと言った利用を行っている会社の方が多いと思われます。

 特に最近個人的に感じることは、システムが保持しているデータを基に資料を作成する機会が増えてきているのがあり、この分野では特にあらかじめ用意しておくことが難しくなってきているという点です。過去では、システムの表現能力的にどうしても文字ベースで帳票資料を作成するのが通例でしたが、現在ではそのようなことはやらなくてもよく、グラフィカルな見栄えの良い資料を作成する事もできてしまいます。
 そして使う側では、システムで用意されている資料だけではできない要件が増え、複数のデータを元にした新しい資料を作成する必要に追われることが増えています。分析系はその流れが特に顕著で、昔はせいぜい数十種類程度で事足りていたのが、今ではもっと多種のデータに対して、さらには多様な切り口で分析を行う必要性が高まっています。バズワードになりそうなビックデータも同じで、今までは分析対象として見ていなかったものも、そこから新しい視点が見いだせるとわかるとそれを利用したくなるのは当然でしょう。

 ですがそれを予めシステムの機能として用意し提供することは、不可能と言って良いでしょう。使う側が求めるものが全て明確になっていれば可能でしょうが、そのようなことはできません。ユーザーは自分たちが求めるものが提供されていないときに、「こんなこともできないの」という台詞を用いることがありますが、実際にはそのユーザーが求めるものが少数派であることも珍しくはありません。
 
 このような現状を踏まえると、今後システムを提供する側とシステムを利用する側、それぞれで考え方を変化させていかなければならない、と思えるようになります。

 作る側としては、多機能にする、という考えを捨てるところから入るのが良いと思います。ここまでで書いたように、今ではマイナスイメージがつきまとうかも知れませんが、実際にそれを回避するのは無理と言ってよいでしょう。どこまでも機能を増やしてしまうと、反対にユーザーにとってわかりづらく利用しづらいものとなってしまいます。私たちが作るシステムで最優先にするのは、ユーザーが利用しやすいものである事、そこなのではないでしょうか。いくら便利なものであっても、使いづらくては慣れる前に利用をやめてしまうことが殆どです。Web 上で紹介される便利なツールの類でも、多機能なだけではあまり利用者が増えることはないように思えます。

 そしてユーザー側としては全ての要件を機能として求めるのではなく、一部は別の手段で用意する事も最初から考えておくのが良いのではないでしょうか。求める機能が全て用意されている事は非常に稀です。多くの場合は、何かしら不足している部分があるでしょう。もし不足しているものが、他のプラスの面を打ち消すくらい大量であるならば仕方ありませんが、そうでないのならば使える機能をどのように用いていくか、不足している部分をどう補っていくかを考えていく方が遥かに生産的だと思います。

 それらを踏まえると、今後のシステムやサービスで是非とも提供してほしい機能があります。それは保持されている全ての情報を、自由に参照するための仕組みです。REST でアクセスできるのでもいいでしょうし、参照用の VIEW を公開するなど、方法はどのようなものでもいいと思いますが、ユーザーが溜めたデータを自由に参照できる機能は非常に必要性が高く、またそうすることでユーザー側で求めるものを用意できる可能性が高まります。

 システム側の思想として、データは公開しない、という考え方で運用されているところもあるかとは思いますが、私にはそれこそマイナスでしかない、とさえ感じます。またユーザーが利用することで溜められたデータは、ユーザーの物であってしかるべきです。システム上で保持しているからと言って、システムの物としてしまうのは非常に勿体ないことなのではないでしょうか。

 システム側の思いとしては、多くのユーザーに利用してもらいたい気持ちは必ずあります。そのためにもデータの公開は進めていくのが、システム側ユーザー側双方にとってプラスな未来を導きやすくなるのではないでしょうか。

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