情報の多さよりも重大なある一つの問題
Web の技術が発達した昨今では調べられない情報は数少ない、と言えるまでに非常に大量の情報に囲まれています。あまりに膨大な量であるために、ノイズとも言える必要ではない情報の割合が非常に高くなり、欲しい情報をその中から探し出さなくてはならないという、当初の予定とは異なる現状です。ですが検索技術も日々進歩しており、時を重ねるにつれ必要な情報を見つけ出しやすくなってきています。
これまでの流れで、非常に多くの情報を扱うことを目的に、さまざまなアプローチが研究されてきています。ですが、多くの情報を扱うことができるようになった今、別の問題が見えてきているのではないでしょうか。
それは情報の新鮮さというべきもので、既に古くなってしまった情報が多く検索されてしまう問題です。例えばある実装技術を調べようと検索した時などがそれにあたり、今のバージョンとはかけ離れた情報ばかりが検索されてしまう事は、多くの人が経験しているのではないかと思います。.NET 界隈で言えば、Web 開発技術の ASP.NET について調べようと思うと、.NET 1.x や 2.0 世代の情報が多く検索され、最新の 4.5 世代や vNext と呼ばれる次世代についてはなかなか探しにくい状況です。
これと同じ理屈で、一度誤った情報を流通させてしまうとその後に訂正を行ったとしても、その内容は伝わりにくいというものもあります。SNS が浸透したため、この現象は今までよりも多く目にするようになりました。デマ情報とわかっているものが、いつまでたっても流れている事が、その最たるものでしょう。
Blog を書かれている方の中でも、誤りがあった際にはしっかりと元エントリを訂正している方もいらっしゃいますが、個人的な感覚ではこれは少数派に感じます。元エントリを訂正せずに、新しいエントリを投稿している方の方が多いのではないでしょうか。この場合、新エントリよりも旧エントリが参照されている回数も多いので、検索エンジンでは旧エントリを検索結果の上位にしてしまう事が多いように思えます。これは非常にデメリットです。
メディア記事においても同様で、特にライターを生業としている人が書かれる記事ほどその傾向が強いように思えます。明らかに誤っている場合を除き、多少の違い程度では記事を訂正することは稀なのではないでしょうか。
このような現状を思うと、これから求められているのは探し出したい情報に対して、時期を指定することが必要なのかもしれません。ただしこれも現在の検索エンジンで提供されているような、「いつごろ更新されたものか」という類だけでは難しく、「知りたい情報がいつごろ発生・提供されたものか」という、コンテンツそのものに対しての時期指定ではないところが、非常に難しいところだと思います。
また同じような問題として、略語の氾濫があります。これは技術系に顕著ですがアルファベット数文字で表されるものが非常に多く、そのために複数の技術で同じ略称を用いたり、まったく別の物事を同じ略称で表したりと、調べる難しさに拍車をかけています。これは提供する側だけでどうにかするのも非常に難しい問題で、大手企業でさえもリリース後に同じ名称を利用していたものが見つかってしまい、サービス名を変更せざるを得ない事もままあります。
これらの現実を踏まえると、単純に何も考えずに情報を蓄積していくだけの時代は過ぎ、これからはいかに検索されやすく情報を提供するかというのが求められていくのではないでしょうか。もちろん検索されやすくするための技法として、今でも SEO など様々あります。ですがその利用方法はどちらかといわなくてもビジネス的な要素が多く、純粋に目的に沿った検索を行いやすくするため、という理由ではないことが殆どです。このあたりの難題を乗り越えながらも、利用者にとって最もベターな形へと発展していってくれる事を望みます。
私は検索技術に対してあまり明るくないので、今後どのように発展していくのか、どうすることが良い方向へ向かうのかは全く想像もつきません。ですが、間違いに気づいた際は元記事を直すなど、個人個人で対応できることもあるかと考えます。ほんの小さな事で大勢に影響はないでしょうけども、コンテンツを扱う人間として気を付けていきたいものです。
Web の世界では一度広まったものは、それ以上の広がりを持たせない限り消えることがありません。誰もが利用するようになった検索で見えるものだけが、それ自体の正誤に関わらず事実として残り続けるといっても過言ではありません。出来るだけ正しい情報に出会いやすくしていくことは、提供側も考えていかなくてはならない話題ではないでしょうか。