地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

SI だって捨てたものじゃない

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 気が付くと幾度目かの誕生日も過ぎ、いい年齢になってしまった気もするのですがこの業界で長く働いていると、ある程度自分の理想とする仕事というのが見えてきます。簡単に言えば、現場にも出るしコードも書くし設計もする何でも屋的なエンジニアが私の理想とする仕事なのですが、これは今の世の中やメディア記事や Blog で発せられて目にする多くの意見とは反対方向を向いているとも感じます。

 特に私が携わっているのはそれこそ SIer と呼ばれる領域ですので、忌み嫌われる Excel 方眼紙がデファクトスタンダードな魔境でもあります。そのような環境に長いこと身を置いていたから、だけではないのですが私はこの SI という仕事が好きな方です。
確かに Web 界隈や一部の企業のように流行技術をふんだんに盛り込めるような仕事と言うのには、なかなか出会う事はありません。むしろ今でも VB6 の名前が平然と聞こえてくることもある非常に独特な時間の流れを持っている世界だと思います。技術が好きな人間にとってこれは、非常にストレスを感じるところでしょう。

 ですが私の中で技術を用いることは最優先とは考えていないのです。散々これまでのコラムで、技術者は常に勉強する必要がある、とむしろ煽っている側なのは承知しています。しかしそれでも仕事の上では最優先とは考えていません。

 それでは何を最優先とするか、ですがこれは簡単なところで、利用してくれるユーザーのためであること、です。これを叶えるためにベターな方法を設計し、それに基づいて実装を行いリリースする。それで実際にユーザーの役に立つものが出来たときはそれこそ非常に嬉しいものです。

 私が現場に出たいと思う理由もここにあり、いつでもユーザーとやりとりをして実際にその空気を肌で感じ取りたい、そう考えているからいい年齢になった今でも現場に出たいと思っています。設計するだけ、コードを書くだけ、テストをするだけでは自分の欲が満たされないとも感じているからでしょう。

 じゃあそんなに技術の勉強しなくてもいいじゃないか、と言われるでしょうがこれはまた違うと思っています。例えすぐに利用できる場面がなくとも、そこで身に着けたものは必ず役に立つことがある、それを実際に感じ取っているからこそ勉強も必要だというのが実感できているのです。

 ユーザーとの会話に限らず、ちょっとした場面で出てきたキーワードに反応できるためには日頃からアンテナを高く持っておく必要があり、それを維持し続けるのはなかなかな労力だと思う人も多いでしょう。実際「労力」などと考え出した時には、それがすごい負担になっているというのは分かります。調子の良い時には何も考えずにできていることが、不調な時にはできないのと同じで、実際にそれが出来ている時は殆ど気にならないものなのではないでしょうか。私の場合は、このような「労力」とかを考え出した時は何もしないことにしており、無理をしないようにしているのが案外今でもどうにかできている理由なのかもしれません。

 SI の世界は現在では非常に蔑まれている面もありますし、将来的にはなくなる世界だとも言われていますが、私はそうは思っていなかったりします。悪い面が多々あるのは仕方ありません。IT 業界の中でも比較的ここまでの歴史がある分野ですから、どうしても膿がたまってしまう事はあります。ですが、SI という仕事がなくなるかというと決してそういう事はないと思うのです。

 特に私は地方在住(ここ最近は怪しい)エンジニアですので体感しているのですが、地方企業や世の中の中小零細企業が Saas なサービス群を組み合わせて自分達の業務に利用できるか、と言われればそれは「ありえない」と言い切ることができます。そんなことはないだろう、と思う人がいるかも知れませんが、例えば PC に詳しい人がいない小さい会社は、この世の中にどれだけあるかというのを考えてみたり、簡単なマクロを組んで業務に生かすことができる人がどれだけいるか、というのも考えてもらえればすぐにイメージできると思いますが、IT 業界にいると気づきにくいように Saas をはじめとしたクラウドな世界だけではなく、IT と呼ばれるもの全てが「どんな人でも利用できる」ものには程遠いからです。私たちが触れているものはそういった類のものなのです。

 だからこそ SI は無くならないでしょう。なくなるのではなく、今まで以上に求められるものが増えより高度なものを提供できなくてはならない、そのような事こそが今後に起きうる状況だと私は考えています。

 Web 界隈とそれほど変わらない面も多々あるのですが、直接ユーザーと面と向かって会話を持ちやすいのは SI です。言葉だけでは感じ取れないものを、感じ取れる事もあるのはやはり直接会ってこそのものでしょう。そう思うからこそ、この SI という仕事を続けていきたいと思えるのです。

 世の中でいかに叩かれようともこの考え方はそうそう変わらないかな、と私は思います。実際に必要としている人はなくならないでしょうし、上手く要求に適したものを提供できたときの嬉しさはやはりかけがえのない体験です。現場でコードを書いているだけではなかなか味わうことができないからこそ、私はいつまでも現場に出ていきたいと考えているのだと思います。

 こういった魅力もあるということを、できればもっと伝えていきたい、伝えていってほしいと感じてはいるのですがなかなか難しいところです。ですが、そう捨てたものではないですし必要とされている世界ですので、若い人たちにも飛び込んできてもらいたいものだと思います。やってみて初めてわかる面白さ、というのも間違いなくこの業界にはあるのですから。

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