地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

負の連鎖、正の連鎖

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 いろいろな案件をこなしている中でスケジュールが厳しくなってくると追加の人材を投入することで後れを取り戻そうとすることは多々見かけると思います。残された時間から考えると、とにかく頭数をそろえてこなせる量を増やそうという考えのもとに行われるのですが、実際にそれで上手くいくケースというのはほとんど聞かないのが現実です。そして多くの人はそういった失敗を繰り返してきているのですが、未だに人の投入で対処できると考えている人が多数存在しています。

 昔から話題に上がる問題なのですが、いつになってもこの問題を解決できているところはありません。それはいったいなぜなのでしょうか。

 頭数を増やすことで対処できるのは、実のところあまり存在せず、ほとんどが人並み以上の実力を持った人が投入されなければ解決できないことがほとんどです。人が増えることで対処できるケースは、やるべきことがはっきりとしており、かつ、それを解決するためには標準的またはそれより低いスキルでも十分に可能な難易度のタスクが大量に散見される場合に限られます。ですが、私も長い間この業界で仕事をしてきていますが、そのようなケースを見かけたことは一度もありません。

 ほとんどの場合は、なんでもできる超人が必要で、そのような人材が望めない場合は仕切り直すか期間を延長するか、または期間内の作業範囲を減らすことでしか解決は不可能です。スケジュールは変更できず、作業量も減らすことはできないのであれば、どう考えても人を増やして増加する作業量と人を増やして増加する手間の割合が、手間にかたむいてしまい改善するどころか更なる悪化を招いてしまうのは明らかです。

 ですが、そこでハイレベルな人材を投入、と簡単にいかない事情もあります。そもそもそのような人材がいるのであれば、開始当初より投入されていてもおかしくはないのです。今その案件に集まっている人材は、開始時点で投入できる最高戦力(またはそれに近い)であるのが多いでしょう。スタートの時点で投入できていないということは、よほどのことがなければ覆すことは難しいのです。

 また案件の内容がその会社にとってオーバースペックである事もあります。力量を見分けるのを誤り、実力以上のスペックを必要とする案件に手を出してしまっている状況もあるでしょう。他にも政治的な理由で難易度の高い案件を行う必要がある場合など、望が薄い状況で奇跡を信じて手を出すこともないとは言えません。

 実際に現場で働く人間にとっては、もっとできる人を投入してくれ、という気持ちになりがちですが、そうそう簡単に投入できないのが殆どですし投入できる人材がそもそもいないことも多々あります。現場側で見ていると見えない事情が、その裏には隠されているのです。

 また運よく素晴らしい人材を投入し案件を解決したとしても、恐らくまた同じことを近いうちに繰り返すことになります。案件を受ける側、案件をこなす側それぞれに問題を抱えている現状では、この問題を解決できるようになる望みは低いと言わざるを得ません。

 ではどうすれば、どうすることが解決につながるのでしょうか。

 明確な答えはありませんが、少なくとも相手側に文句を言うだけでは何も良いことがないのは間違いありません。自分たちの側の問題を棚上げし、相手側にのみ改善を求めていたところでそれほど状況に変化は起きないのです。変化を起こすためには、自分たちも変わる必要があるのではないでしょうか。極端なことを言えば、自分たちがハイレベルな人材となることで、今までであれば確実に炎上していたであろう案件も無事に終了を迎えられる可能性は高まります。手持ちに駒がないのであれば、自分たちが先陣を切って成ってしまえばよいのです。少なくとも相手が改善されるよりも、自分たちのレベルを上げる方が遥かに簡単です。それは自分の心持次第で如何様にもなるのですから。

 何も行わずにただ口だけを動かしているような人には、本来文句を言う資格はないと私は考えています。自分たちはこれだけのことを行った、だから貴方たちもこれだけのことをやってくれ、というのは交渉としてありですが、単にあれやれこれやれと言うだけでは何も解決に至りません。もし自分がこのような文句を言われる側にあったとして、言うだけの人の望みを叶えたい解決したいと思うでしょうか。私にはそこまで聖人ではないのもあり、まったく思うことはできません。

 文句を言うな、というのではありません。不満を持ち文句を言うことは避けられないことです。またそういった不満を感じることで、次につなげることもできたりします。悪いのは不満に思うだけ、文句を言うだけ、であり何も行動を起こさないことなのです。そのような状態に陥ると、本人も周りも決して良い影響は起きえません。不満が不満を生みだし、さらに状況が悪化してしまう悪循環にはまってしまうのです。そのような状況でまともに仕事を行うことなどできるはずもありません。

 現状に不満を持たれている人は多いでしょう。ですがその中で、何か実際に行動を起こしている人となると途端に割合が少なくなります。それは確かに難しいことですが、決してできないことではありません。何かを始める前にいろいろ考えすぎてしまうから、ありもしないものを怖がり動けなくなってしまっているのです。

 世の中を見渡すとSNS上でいろいろ言いながらも多くの功績を残している人が多数見受けられます。そういった人との違いは単純に何か行動を起こしたかどうか、だけなのではないでしょうか。

 考えて行動して、その結果どうにもならないのであれば会社を変えるなど、さらなる方法もあります。昔ほど転職も難しくはないですし、勉強のしやすさも遥かにやりやすくなっています。転職だけではなく独立するという手段も今では一般的に聞こえるようになりました。ある程度以上の年齢の方であればわかると思うのですが、少なくとも10年以上前とかであればここまで独立することが好意的に迎えられることは少なかったのです。独立するならばそれなりに繋がりを作ったうえでなければ、どこからも相手にされない状態でのスタートとなるのがほとんどで、軌道に乗せるまでにかなりの年月が必要でした。その時代と比較すると、今では当時はなかなか取れなかった方法も採ることができるようになってきています。土台となる環境は改善されてきたのです。

 このような環境にあるのですから、何もしないで文句を言うだけでは確実に良い方向へ向かえないことが感じられると思います。また反対に何かを行えば、それに見合った良いことが起こる可能性が高まっているのも、同じく感じられると思います。何をしても無駄だ、などという状況は実際には減少してきているのではないでしょうか。

 何をすればいいか分からない、というのであれば今の環境や今周りにいる人たちに認めてもらえるよう少しずつ勉強するといったことから始めるのもありです。すぐに効果が発揮されるとは言えませんが、それでも何もしないのとは比較できないほどに良い方法です。誰にも気づかれずというのはなかなかに難しく、どこかで誰かにその姿が見られることを避けることは難しいです。ですからあなたが努力している姿は、ほぼ誰かに気付かれます。それでいいのではないでしょうか。

 誰かが起こした良い方向への流れに多くの人が乗れれば、その動きはさらに多くの人を巻き込んで必ず連鎖反応を生み出していきます。そして、それこそが今の環境を変えていくためのただ一つの方法なのではないでしょうか。

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