地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

始めることが武器になる

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 最近、テレビの特集で「社員が辞めない会社」という内容のものがありました。自分が社会人になったころは転職をする方がめずらしい時代でした。もう今では一つの企業にこだわって働くスタイルの方が少数派なのでは、という気持ちで少しだけ見ていたのですが、なんとも難しい気持ちになったのを覚えています。

 その番組では自分たちの親世代にしてみれば、一度入った会社は最後まで務めるのが普通であったのもあり、自分たちの子どもにもそうしてほしいという意見から始まり、退職率が低い会社がどのような取り組みを行っているか、という流れで放送されていました。残念ながら時間の都合もありそこから先が見ることができていないのですが、今のご時世から考えるといろいろなことが思い浮かびます。

 私は以前のコラムでも書いたように転職経験者で、これまでに何度か転職を行って今に至ります。退職を決意した理由はそれぞれであり共通した理由ではないのですが、幸いにも今のところ幸運な出会いが続いていると感じています。他の転職をされている方の話を聞くと、多くは「給与」「職場」「業務」といったところに不満を感じ、その限度を超えたタイミングで転職を行った方が多く思えています。また転職だけではなく、独立起業された方も昨今では一般的な話題になっています。

 ですが多くの方が転職をされている中で、転職を行ったが上手くいっていない方の話もよく聞くようになりました。これは逆に言えば、それほど転職をすることはめずらしくなくなっているのだとも思います。転職される人の数が増えてきたことで、失敗例も増えてきているのでしょう。

 私個人としても転職は特に悪いことでもなく、後々の自分にとってプラスとなるのであればどんどん転職すればよい、と考えている側にいます。先のテレビ番組の話とは逆の考え方であり、特に一つの企業にこだわる必要はなく自分に合った環境を探すことは何ら悪いことではないと思います。

 ただし私も無条件に推奨しているわけではありません。転職先として考えられる先の企業で自分を受け入れてもらうことでどのようなプラスの効果をもたらせることができるか、自分の得意分野や力を入れている分野を発揮できるか、などの条件を満たしていなければあまり転職は進められたものではないと考えます。もちろん、過酷な業務環境下であったためなど違う理由も十分ありますし、それらの理由は給与だなんだという条件よりも遥かに優先すべきところですので、ここでは比較対象になりません。

 極論を述べれば、「転職はあくまでも自分のため」となるのでしょうが、ここが少々難しいところではないでしょうか。単純に「雇ってもらう」という気持ちでいるのであれば、転職を繰り返したとしてもそれが幸せな結果に結びつくのは非常に難しい、そのように私は感じています。特に情勢の厳しい今だからこそ、企業と個人との間にギブアンドテイクの関係が必要なのではないでしょうか。自分を雇ってもらうことで代わりにその企業にこういったプラスがある、そういった点を具体的にではないにせよ何かしら示すものが備わっていなければ、なかなか良い方向へと進んでいくのはままならないのだと思います。

 そのプラス要素とは、別に技術力に秀でているとかこれまでの経験が豊富だとか、そのようなものでなくてもよく、例えば新しいことに常に取り組む姿勢ですとか一点に集中して突き詰めるタイプですといった、何かしらの自分のプラス要素を示すことができればいいのではないでしょうか。

 私の場合でいえば、これまでの時間でほぼマイクロソフト製品系を扱うことが多かったこともあり、ブログなどで仕事とは別に、純粋に興味を持った分野を調べてまとめてみたりといったことをやっていましたので、マイクロソフト系でいろいろやらせてほしい、というのを今まででアピールしたりしました。そういったこれまでの行動の積み重ねが、私自身の特異点とも言える、企業に与えることができるかもしれないメリットとして言えたのだと思っています。

 自分に自信がなく転職をするにしても何も武器がない、と感じている人はたくさんいるでしょう。そこに不安を感じ、転職したくてもできないとジレンマに陥られている方もまた、たくさんいることでしょう。そのように不安を感じるのであれば、何か一つでも良いので「これは面白そうだな」「ちょっと興味あるな」と思えた部分をもっと掘り下げてみるなど、少しずつでも行動を開始してみるのが重要ではないでしょうか。

 仕事でなければ何もしない、というのも一つの考え方ですので否定はしませんが、もし転職や独立を考えられているのであれば、是非その考え方は変えてほしいと思います。仕事とは無関係で単に自分のためだけに、何か手がけてみることが後に大きな結果を生み出すのだと私は感じています。

 実際に行動しているときは途中で放り投げたくなることも多々あります。それでも気の向いたときにでも良いので続けることで、本人も予想できない嬉しい結果に繋がるのではないでしょうか。何か行動することは良いことも悪いことも起きるでしょうが、何も行動しないのであれば良い方向に動くことは非常に稀です。ですので、ぜひどのようなことでもいいので動いてみてください。始めてみなければ分からないことは多々あります。しかし始める前には分からなかったことがたくさん見えてきます。それは何かを始めた人だけに用意された特権なのではないでしょうか。

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