今だからこそ固定メンバーでのチームを切望するちょっとした理由
業務上ある程度の人数が必要な案件を行うにあたり、プロジェクトチームを結成して遂行することは良くあることだと思います。普段一緒に仕事をしないメンバーと仕事を行うことで、今までは気づかなかったその人の性格や長所が見えてくることも多々あるでしょう。また、本来の業務とは異なるタスクが割り振られることで、実は高い適性を持っていた事に気づくことも非常に多くあるのではないかと思います。
よく企業として「人を育てる」「スキルアップしてもらう」という思想をもたれているところも多いのではないしょうか。固定的に一つの案件に常駐させる方法も成長してもらうためには良い手段となることがありますが、私としてはそれには反対で、できるだけ数多くの案件にあたってもらうのが、より成長してもらいやすくなるのではないかと考えています。過去のコラムでも書きましたが、人を成長させることはとてつもなく難しくそうそうできるものではありません。その人自身が何かを感じ取って次のステップへと登ってもらわなければ、なかなか成長してもらうことはできないでしょう。そのためにもある程度の数を経験してもらう必要があるのではないか、と考えているのです。
しかし最近は感じることが他にも増え、単純に数を経験してもらうだけではまだ不足しているのではないか、もっと上手く業務を遂行する為には違う方法を考えていかなければいけないのではないか、というように私自身考え方が変化してきた面があります。
殆どが一人でこなせるような業務ばかりであれば、最初に書いた「数を多く」経験してもらうことで様々な場面にも対応が取れるような人材に成長するようになりやすくなるとは思います。ですが実際の業務を思い浮かべると、一人でこなせるような業務もありますが複数人でなければこなせない業務もまた、非常に多くあります。その場合に感じるのは、単純にプロジェクトチームに参加して業務を遂行しているだけでは、そのチームのリーダーやマネージャーとなるようなきっかけを手にすることは少ないのではないか、という点です。
特に最近では難易度の上昇や短い納期といった、専門性をより求められる場面が増えてきています。過去の経験だけでははかり得ない状況がますます増えているのです。そのような状況をふまえると、ある程度領域を狭めた上でのプロフェッショナル化こそが今の時代には求められているのではないでしょうか。一時期の流行から、幅広い範囲を何でもこなすことが出来るエンジニア、が求められていた事もあったかと思います。勿論IT業界に関わる人間として、多くのジャンルで広い知識を求められることはあるかと思いますが、その全てを身につける必要はもうないのではないでしょうか。ごくまれに本当に幅広く多くの知識を身につけた方も見受けられますが、そのような人は例外中の例外です。決してその人を基準に考えてはいけないのはご承知の通りです。
超人的な人を最初から望むのは業務を遂行するにあたっては大きな間違いです。ではどう考えるのが適しているか、となるとやはり「複数人数」で「適正のあった領域をそれぞれ担う」のが最も業務を遂行しやすいのではないでしょうか。そしてそれを進めるためにも、例え一人でまかなえるものであっても可能な限りは複数人数で業務にあたること、これが重要なのではないかと考えるのです。特にある程度固定的なメンバーで行動することは、プロフェッショナル性を高めるためには効果的ではないでしょうか。
実際に、私も色々な業務に携わってきた中で上記のように思う場面は多々あります。メンバーが得意とする部分についても、何度かの業務を遂行している中でそれなりには見えてきますので、数を重ねる毎にチームとしての総合力を高まらせる配置が取れるようになってきたというのは感じました。反面、メンバーを何か新しいことに挑戦してもらうことが行いにくくなり、任せている領域以外については何かを感じてもらうきっかけを得てもらうのが難しくなったようにも思えました。
そしてこのような考え方をしたときに障害となるのが工数です。何かの業務を行う時には殆どつきまとう事になるこの工数ですが、非常にメンバーのスキルアップ等の人材的な面から考えると障害にしかなりません。企業として考える場合、工数として利益を出すためのラインを踏まえる必要があるのは当然のことです。ですが、そこばかりを優先するとどうしても育つためのきっかけを奪ってしまうことにもなるのではないでしょうか。
確かにこの工数というのは、多くの場面で重要な指針になり得ます。ですが決められた工数の範囲内だけでは、実現できないことも多く存在するのも事実です。自分の中では最終的な結果を判断するにあたって工数を用いることは必要だと思いますが、何かの業務を始めるに当たっての工数というのは余分なものではないか、とまで思います。これがなくなれば、「この人に体験してもらいたい事があるけど、工数ないから参加してもらえない」といった事も減らすことができますので、より多くの気づきを得る場面を用意することができるのではないでしょうか。
単純に勤続年数や経験した案件数だけで、「そろそろリーダーやってみないか」、というやり方もあるでしょうが、それはあまり良い結果を生み出しにくいと思います。チームで対処してきた中で、「この人、他のメンバーと上手くコミュニケーション取れているし先導してタスクに取り組んでいるよな」、というように少し新しいことをやってみてもらおうと思える何かがなければならないのではないでしょうか。更に言えば、その何かというのは、一緒にチームを組んでいる人たちでなければ気づけない・見えないのではないでしょうか。私が今までやってきたこれまでを振り返るとこのように思えます。
何を優先するか、は会社が決めることかも知れません。ですがそこで「成長して欲しい」という願いがあるのであれば、そう動けるような制度が必要になってくるのではないでしょうか。少なくとも「成長して欲しい」という願いが出ると言うことは、現状の方針や体制で叶えられていないからであるのは間違いないと思います。それであれば、その願いを叶えることができる体制や方針にシフトしていくことも会社として必要になっているのではないでしょうか。
願わくば、より多くの人が何かを感じ取る機会に恵まれるように。
コメント
アラファイブ
インターフェースのみ公開で実装は見せないシステムで、ぼろもうけ+他人を引きずり回したプログラマの過去の行動によって、現世のプログラマは低い位置に貶められています。
同様に、人を育てる工数というのも、それを悪用してお金を出す方が鼻血も出なくなる位、マネタイズしまくった人間が居たという過去が有ると思います。
自分らがやった訳でも無いことでも、実際に金をむしってしまった場合、反動が来るのは世の習いです。
その辺を再生するとするなら、だれにもずるさせない、ずるをしたら確実にブーメランが襲ってくるということが明確な、組織・権限設計が要ると思います。
とにかく、複数人数で何かをやるとしたら、じゃぶじゃぶお金をかけるか、さもなくば明確・公平かが絶対に要ると思います。
そして今の世の中、後者以外あり得ないとも思います。
Ahf
あらファイブさん、大変遅くなって申し訳ありませんでしたが
コメントありがとうございます!
>その辺を再生するとするなら、だれにもずるさせない、ずるをしたら確実に
>ブーメランが襲ってくるということが明確な、組織・権限設計が要ると思います。
この点は同意です。組織体制や権限の整理など、このあたりも人材関連の話題には大きく絡んでくるところだと思います。だからこそ難しいのですよね。
ただ「お金をかける」と「明確・公平」の2択でしかありえない、となると
現場側ではどうすることもできなくなってしまいますし、
私個人としては現場側だからこそできることもあるのではないか、
と思う事もあります。
スモールスタート、といえば聞こえはいいでしょうが
何かしら刺激を感じてもらえるような事を少しだけでも
割り振っていければいいなぁ、と思っています。