プレビュー版に見る意見の大切さ
6月も終わろうとしている中、いよいよ Windows 8.1 のプレビュー版が一般向けにも提供され始めたので、実際に試されている人も多いのではないでしょうか。併せて Visual Studio 2013 や Windwos Server 2012 R2、SQL Server 2014 といった次期製品群もプレビュー版が一斉に登場し、新製品の登場を喜ぶ声の一方で検証する製品の多さから悲鳴も聞こえてきている所かと思います。特に Windows 8.1 については色々言われている方も多いので注目を浴びているのではないでしょうか。
このように新しい製品が出る際に必ず話題に上がることとして、「旧製品がよかった」という意見があります。Windows の世界で言えば Windows 2000 が登場したあたりから、このような声が見える機会が増えてきたように感じます。Office であればリボンUIを初めて採用した Office 2007 のタイミングが、最もその声が大きくあがっていた様に思えます。このように多くの声は GUI に集中しているのですが、これはやはり一番目に付く箇所であり操作する場面も多いことから最も批判もされやすいと言うことなのでしょう。
この話題は特に Windows をはじめとした Microsoft 製品に限らず、Apple の iOS においても同様の話題が現在持ち上がっています。今回の iOS7 ではフラットデザインを採用したこともあり、見た目が大きく変化しているのでユーザーの中でもかなり賛否両論のようです。
確かに慣れ親しんでいた UI が大きく変更されることは、ユーザー側に相当に負担を強いることになるのは事実です。よくシステムのリプレース等の話題でも、今までの UI を継承した画面にしてほしい、という要望は必ずと言っていいほどつきまとっています。UI 変更に伴ってうける負担が、新しくなることでうける利便性などを上回っていないと考えやすいからでしょう。
しかしこの考えやすい、というのが非常にくせ者なのではないかと私は考えます。どのプラットフォームでも、どのシステムでもそうなのだと思いますが、慣れることによって解消される面が非常に多く、短期的な判断を下すことは非常に難しい話題であると思われますので、新しい UI を見て直感的に下す判断というのがどこまで正しいのか、後々まで踏まえた上でそれは正しいことなのか、となると非常に難しいのではないでしょうか。
恐らくは同じように考えられているためかも知れませんが、Microsoft や Apple、その他の各種ソフトメーカーは、正規リリースの前にほぼ必ずといっていいほど、プレビュー版やベータ版といった事前に触れる機会を設けています。正規にリリースする前に出来るだけ触れる機会を設ける事で、新しい UI にもなれる時間を設けたり既存の資産を移行するために検証を行って欲しいという位置づけでの施策と思われます。ここでユーザーに色々触れてもらうことで意見を募り、最終的にリリースするまでに対応を取り込む目的もあることですので、恐らくメーカーとしてはできるだけ多くの人に試してもらいたいと思っていることでしょう。
このような話は別に大手に限った話題ではなく、規模の大小にかかわらずシステムやアプリを作る人全てにおいて同じなのではないでしょうか。できるだけ早いうちに触ることの出来るレベルで提供しそこからフィードバックを得て最終リリースまでに改善を行う、この方法は私たちエンジニアであれば非常に納得のいく方法なのだと思います。ですが実際の開発の場面で、この方法を採用できているかと言われれば、時間や予算など他の要素の都合もあり、なかなかできていないところが多いのではないでしょうか。プレリリースの期間を設けることが出来ず、本番リリースまでユーザーが触れる機会がなかったために、本番リリース後に UI や機能の仕様変更を行う必要に迫られることも結構な頻度で発生しているのでは、と感じています。
よくウォータフォール型で言われる、フェーズ毎で仕様を確定させできるだけ手戻りを発生させない進め方ではどうしても対応できない部分というのがこのようなケースかとも思われます。実際に触れることで出てくる意見は必ず存在しますので、要件定義、詳細設計、実装、試験と段階毎にしっかりと確定させて進めていたとしても、リリース後に多くのユーザーが触れることで出てくる意見というのは、そこまでのフェーズで想定できるものではありません。もしそこまでで想定しようとすると、非常に多くの人に関わってもらう必要があるのでなかなかできることではありません。
そうは言ってもできるだけリリースを行う前に意見を取り込んでおきたいというのはシステム開発を行う上で、どうしても行いたいと考えます。リリース後の改修よりもリリース前に修正を行う方が、単純に見積もってもかかる費用や負荷の量が異なるためです。しかしそれは現在ほとんど行うことが出来ていません。何故分かっていてもできない、このような状況に陥ってしまうのでしょうか。
時間の都合、予算の都合、人員の都合など色々な理由が考えられますが、私の中ではいきつくところ「システムを作り上げること」に目的を定義してしまい、「使いやすいシステムを作ること」が目的ではないから、だと考えています。本当に使いやすいシステムを作ることが目的であれば、先ほどまでの話のようにプレリリースして意見を募集するなど、何かしら実際に使う人たちから意見を募集するステージが必要であると考えるためです。このステージがないということは、使いやすいシステムを作ることではなく、言われたシステムを作ることが目的となってしまっているからではないでしょうか。システムを作る側として考えると、会社の売上や利益としてはそれでも構わないのかも知れませんが、一人のエンジニアとして考えるとそれは非常にやるせないところでもあります。
エンジニアとして嬉しいと思える出来事の一つには、ユーザーからありがとうと言われること、というのがあります。作成中に多くの苦労をしたシステムであればあるほど、本番リリース後にありがとうと言われることがエンジニア冥利につきるというか、これからも頑張っていこうと思えるモチベーションの源泉にもなります。これは時代が変わり便利な世の中になったとしても変わることがありません。
作り手側も使い手側も、お互いに幸せになるためにも事前に触れる機会というのは必須です。もしこのステージをそれほど重要視していないのであれば、それは不幸な結果を招きやすくもなります。それはどちらにとっても望んだ結果ではありません。そうならないためにも、今一度このステージの重要性を見つめ直してみるのが良いのではないでしょうか。
なお個人的な主観ですが、Windows 8.1 のスタートボタン。あれは戻さなくて良かったよなぁと感じている側です。Windows 8 をしばらく利用していますが、実際に今までのスタートメニューがなくて感じた不便というのが今では殆ど感じていないのと、思っているほど普段利用するアプリというのは少ないのが理由です。タスクバーへのピン留めとスタート画面のカスタマイズで普段利用する分には十分快適なんですよね……。なので Windows 8.1 で今知りたい情報は、スタートボタンを消す方法だったりします。
コメント
初音玲
残念ながら現状は消す方法(または消すためのプロパティ)がないようです。
がんがんフィードバックしなくちゃですね!
Ahf
初音さん、コメントありがとうございます。
>がんがんフィードバックしなくちゃですね!
そうですよね!それがよりよい製品につながることですし。
今フィードバックをあげるとすると、下記フォーラムでしょうか。
http://answers.microsoft.com/ja-jp/windows/forum/windows8_1_pr