Windows Serverを中心に、ITプロ向け教育コースを担当

クラウドのリスク

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 いくら催促されないからといって、さすがに半年は放置しすぎなので何か書く。

 すでにご存じの通り、IDGの日本法人が4月末でなくなっている。IDGジャパンは月刊Windows NT WorldやWindows 2000 World、Windows Server Worldの発行元で、私も記事を書いたり読んだりで、ずいぶんとお世話になった。このブログも、当初はWindows Server Worldの連載記事『IT嫌いはまだ早い』を再掲したものだった。

 IDGは、著者の権利をきちんと認めてくれる良い会社で、「IT嫌いはまだ早い」がまだ雑誌連載中であるにもかかわらず、数カ月以上前のものであれば掲載しても構わないと言ってもらった。著作権(COPYRIGHT)というのは、著者が自分の作品を複製(COPY)して配布する権利(RIGHT)である。レイアウトされた出版物には別の権利が発生するが、内容そのものをどう扱うかは著者の専権事項である。

 雑誌が売れなくなり、IDGジャパンの雑誌媒体はほとんどが休刊し、会社も事実上の活動停止となった。あとを引き継いだのが、Webサイト「Computerworld」を運営する「IDGインタラクティブ」である。Computerworldにもずいぶんお世話になった。ときには『本の特盛り』と題して、IT分野とは必ずしも関係ない「読書案内」も連載させてもらった。

 日本法人解散後、米国IDGは、日経BP社と提携して新たな「Computerworld」を展開している。ただし、過去の記事は提携対象ではないようで、すべてが新しい記事である。

 実際のところ、私は本当に閉鎖されるまでComputerworldのコンテンツはどこかの会社が引き継ぐだろうと思っていた。しかし、IDGは予定通りすっぱりサイトを停止してしまった。サイト閉鎖については、著者や広告主、読者登録している利用者には個別に案内したようだが、Webサイトには何の告知もされていない。

 親会社の方針により、Webサイトのトップページはもちろん、記事を含めてどこにも明確なことは書いていなかった。ただ、連載記事が終了するお知らせや、それとなくWebサイトの閉鎖を思わせる記述だけが行われただけだ。検索すると、今でも随所にリンクやキャッシュだけ残っているようだが、本体にたどり着けず戸惑った人も多いのではないだろうか。

 雑誌の休刊などめずらしくもないが、何の告知もないのはめずらしい。また、紙の雑誌だと手元に残っていたり、図書館で閲覧できたりするが、Webサイトだと本当にすべて消えてしまう。頭では分かっていても、実際に消えてしまったときの衝撃は大きい。そして、これがWebサイトという媒体の特性なのである。

 さて現在、多くのWebアプリケーションがインターネット上で利用できるが、サービス撤退で慌てることも増えてきた。IDG日本撤退ほど大きな事件でなくても、たとえば最近だとGoogle Readerのサービス停止が話題になっている。

 クラウド採用を巡って、さまざまなリスク分析が行われている。最大の課題はセキュリティだが、次の課題が「サービス継続性」である。Amazon Web Servicesが主力サービスを突然やめることはないだろうが、副次的なサービスをやめる可能性は十分ある。Googleはときどきサービスの見直しを行い、多くのサービスがなくなっている。クラウドは、立ち上げは早いが、サービスを継続して提供するにはもしかしたらリスクが大きいのかもしれない。

 クラウドの利用は、「少ない初期投資で、最短時間でサービスを提供する」だけの時代から、「継続的にサービスを提供するためのリスク管理」も意識する時代になった。

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