コントロールパネルに歴史あり
Windowsを使っている人のほとんどは[コントロールパネル]の操作をしたことがあるだろう。[コントロールパネル]は、Windowsの基本的な構成機能を含んでいるからだ。しかし、この[コントロールパネル]には2つの大きな問題点がある。設定内容が多岐に渡ることと、設定範囲が不明確なことである。
●設定内容
コントロールパネルの個々の設定項目を「小さなアプリケーション」という意味で「アプレット」と呼ぶ。「et」は「小さな」を意味する接尾語である。「オペラ」に対する「オペレッタ」もそうだし、小説「不思議の国のアリス」には「小さなワシ」という意味で「イーグレット」という表現が出てくる。Javaの「サーブレット」も「小さなサーバ機能」という意味だ。
Windows XPでは[コントロールパネル]に[カテゴリ表示]機能が追加され、設定項目が内容別に分類されるようになった。しかし、この分類は必ずしも分かりやすいものではない。特に[システムとメンテナンス]という項目には、システム設定の大半が含まれる。また、マウスの設定が[プリンタとその他のハードウェア]に含まれることは、アイコンを見ないと分からない。だいたい「その他」が何かを知るには、他の項目のすべてを知らないと分からない。たとえばキーボードの設定は[日付、時刻、地域と言語のオプション]にあるし、サウンドデバイスは[サウンド、音声、およびオーディオ デバイス]にある。
さらにややこしいのは、どのカテゴリにも属さないアプレットがあることだ。特にサードパーティ製のツールに多いが、Windows標準機能にもある。たとえば、RemoteAppの構成はカテゴリからは選べない。この場合、カテゴリ表示をやめるか検索機能を使う必要がある。検索にはキーボードから文字列を入力するのだが、これではせっかくのGUIが泣くというものである。私はキーボード入力が苦ではないが、コンセプトとして何か間違っているような気がする。
結局、コントロールパネルの分類には失敗したと考えるべきだろう。カテゴリ表示ではなく、従来の表示方法(Windows XP/Vistaのクラシック表示、Windows 7の「大きいアイコン」または「小さいアイコン」)にしている人が多いのは、その証拠である。
Windows VistaやWindows 7ではサブ項目が追加され、カテゴリ名の下によく使うアプレットへのリンクが張ってある。これは案外使いやすいが、一種のショートカットなので1つの操作をするのに複数の方法ができてしまい、説明はしにくくなった。
●設定範囲
コントロールパネルには、その人だけに有効な設定と、そのコンピューターを使う全ユーザーに有効な設定がある。時刻設定などは全員に有効になることは容易に想像できるが、よく分からないものもある。例えばスクリーンセーバーは個人設定だが、スクリーンセーバーの設定画面からリンクされている[電源オプション]は全員に有効だ。
本来、全員に有効な設定を行うには管理者権限が必要であり、一般ユーザーにはできない。しかし、Windowsは歴史的な経緯から管理者権限を厳密に管理する習慣がなく、混乱の元であった。
Windows Vistaから管理者権限が必要なアプリケーションやアプレットにはシールド(盾)のアイコンが付き、一目で分かるようになった。シールドアイコンはUAC(ユーザーアカウントコントロール)機能を必用とするマークでもあり、利用者にも分かりやすかったと筆者は思っている。ただ、一般にはあまり受け入れられなかったようで、Windows 7からは管理者権限が必要な操作であっても(つまりシールドアイコンが付いていても)UACが動作しないアプレットが増えたのは残念である。
●コントロールパネルの将来
カテゴリ表示もシールドアイコンも、コントロールパネルの複雑さを軽減するための試みであることは評価できる。しかし、カテゴリ表示の問題点は本文で指摘した通りである。シールドアイコンは評価できるが、特権操作と非特権操作が混在していること自体が問題である。[個人設定]と[システム設定]のように分離すべきだろう。
コントロールパネルの本質的な問題は、Windows 3.x時代のGUIを引きずっていることにある。過去のしがらみはなかなか断ち切れないものだ。次にコントロールパネルを使うとき、ソフトウェア開発者の苦労を想像していただければ、いらいらも少しは解消されるかもしれない。
●グループポリシーの利用
グループポリシーの設定は多岐に渡るため、社内のシステムを一括設定したいという要望は昔からあった。そこで、Windows NT 4.0時代に登場したのが「システムポリシー」である。設定対象としてはWindows NT 4.0とWindows 9xだった。
そしてシステムポリシーの経験を元に、作り直したのがActive Directoryとともに提供される「グループポリシー」である。
グループポリシーの設定項目は、Windowsのバージョンが上がるたびに増え、単純な個数だけを数えた場合3000を超えている。ざっと半分がコンピューターの構成であり、半分がユーザーの構成である。
クライアント管理者は、グループポリシーを使うことでシステム管理コストを大幅に軽減できるが、意外に参考書が少ない。
そこで、8月に日経BP社から「グループポリシー逆引きリファレンス厳選92」という書籍を出版できることになった。この書籍は3章構成で、第1章でグループポリシー全体の設計や構成手順を解説し、2章でコンピューター設定、3章でユーザー設定を扱っている。ただし、個々のポリシーはWebで検索した方が早いので、特に重要な設定や間違えやすい設定に限って紹介している。
特徴的な章が第1章で、グループポリシーを効果的に利用するためのActive Directory設計まで扱っている。ここまで記述した文書は意外に少ないので、きっとお役に立てるはずだ。