Windows Serverを中心に、ITプロ向け教育コースを担当

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 出版不況だそうで、コンピュータ系の雑誌も次々と休刊している。Webサイトまで廃止したところまである。たとえば「Computer World」を運営していたIDGインタラクティブは日本から完全撤退した。その後、日経BP社と業務提携し「Computer World」として運営されているが、Webサイトは日経BP社のドメインに属しているし、以前のスタッフは基本的に誰もいない(転職した人はいるかもしれないが)。Computer Worldの過去の記事については契約の範囲外だそうで、以前の記事が再掲載される可能性は薄い。

 一昔前ならWindows ServerやWindowsネットワークの勉強をするための定番雑誌があった。例えば「日経Windowsプロ(日経BP)」や「Windows Server World(IDGジャパン)」である。ところが、数年前から休刊(事実上の廃刊)する雑誌が続いた。最後まで残ったのがIDGジャパンの「Windows Server World」だが、2009年12月号で休刊となった。同誌の前身は「Windows NT World」で1995年12月に創刊準備号を発刊し、翌1996年6月に月刊化がスタートした。2000年4月には「Windows 2000 World」としてリニューアルされたが、まさかWindows Serverが2003、2008と変化するとは予想しなかったのだろう。2003年には「Windows Server World」に変更された。

 私は、創刊間もないころから何度も寄稿しており、懇意の編集者も何人かいた。「ライバル誌がなくなって丸儲けでしょう」などと軽口を叩いていたが、実際には紙媒体全体の売り上げが低迷していたようだ。

●Webサイトの利用

 入れ替わるように登場したのがさまざまなWebサイトだ。編集者が内容をチェックし、専任のデザイナーがページレイアウトを行なう商業ベースのものから、一般企業のエンジニアが趣味で書いている個人ブログまで、さまざまなものがある。@ITは商業ベースWebサイトの代表例だ。

 検索エンジンの発達により、個人ブログであっても有益な情報は発見しやすくなった。もちろん検索エンジンは内容のチェックをしないから、誤った情報が上位に来ることも多い。しかし、全体としてはそこそこ信頼できる内容が得られることも確かだ。

 Webサイトの利点は無償であること、コピー&ペーストによる流用が容易なことだ。掲載されたスクリプトを流用したい場合でも手打ちする必要はない。レイアウトが不完全だったり、読みにくかったりすることもあるが、我慢できないほどではない。肝心の内容が間違っていたりすることもあるが、複数のWebサイトを照合することである程度は検証できるだろう。

 Windowsに関して言えば、マイクロソフトのWebサイトがお勧めである。マイクロソフトのWebサイト、特に英語版は以前から情報量の多いことで有名だった。ずいぶん昔、「Windows NT 5.0」の記事を書いたとき(これが私の「月刊Windows NT World」のデビュー作である)は、ベータ版の一般公開すらされていないのに、多くの情報が公開されており驚いた。

 ただし、マイクロソフトのWebサイトは検索性が悪いことでも有名だった。今でも決して分かりやすくはないが、検索エンジンが進化したため多少はマシになった。

 そして、もっと重要なことはマイクロソフト社員によるブログやTwitterが活発になったことだ。特定の技術分野に詳しい社員のブログを講読していれば、最先端の技術情報が簡単に入手できる。マーケティング担当のTwitterをフォローしていれば、最新の製品アップデート情報が分かる。便利な時代になったものだ。

●勉強会の利用

 評論家の岡田斗司夫によると、ある技術を習得するには4つのステップがあるという。「理解する」「やってみる」「成果(対価)を得る」「人に教える」だ。

 雑誌や書籍、Webサイトで到達できるのは単に「理解する」だけである。ただし、Webサイトに記載された情報は断片的であり、自分の疑問は解決しないかもしれない。

 そこでお勧めするのが各種の勉強会の利用だ。マイクロソフトでは「テックフィールダーズ」サイトで無償の各種勉強会を紹介している。マイクロソフト以外にも、多くの団体が無償か実費程度で勉強会を主催している。実際に目の前で行われているデモを見るのは深く印象に残るし、スピーカに直接質問をすることもできる。映像がオンラインで公開されることもあるし、録画を視聴できる場合もある。

 勉強会に参加したら、必ずやってほしいことがある。セッション直後の質疑応答時間にスピーカに質問をすることだ。終了後に行う個別の質問は、他の人と共有できないため、自分はいいかもしれないが勉強会全体の価値を向上させない。また、スピーカも思い違いをすることがあるし、質問の意味を取り違えることもある。質問内容を全体で共有できれば、他の人が間違いを指摘してくれるだろう。だからスピーカーの間違いに気付いたら受講者は指摘をすべきだ。私も、質問の意図を取り違えていたのを指摘してもらったことが何度かある。

 「成果を得る」は、実際の仕事に応用することだ。実際の環境で応用しない限りなかなか身につくものではない。ただし、新しい技術を業務システムにいきなり応用することは難しいだろう。その場合は頭の中で考えるだけでもいいと思し、テスト環境を構築するだけでもいいと思う。

 最近ではVMwareやHyper-Vで試用版を使えば「やってみる」ことは簡単になった。Windows Azureなどのクラウドサービスも使える。自分のブログで結果を公開すれば、知識の整理もできてなお良い。やってみなくても、勉強会で得たことをブログに書いて整理するのは良いことだ。「家に帰ってブログを書くまでが勉強会です」という言葉もある。

 最後のステップは「人に教える」だ。学んだ知識は人に教えることで初めて本物になる。理解したつもりでも、人に説明していると自分の知識の不十分なところが分かるだろう。たとえ業務に生かしていたとしても、それは自分の環境の範囲内である。人に教え、質問を受けることで、自分が経験していない内容を説明せざるを得なくなる。こうして本当の意味で技術が身につく。

 だから勉強会に参加して、自分の役に立ったと思ったら、次のステップは自分がスピーカになることを考えて欲しい。これはボランティアでもなんでもなくて、純粋に自分のためだ。スピーカのなり手は少ないので、どの勉強会でも常に募集している。もっと手軽な「ライトニングトーク」という場もある。ライトニングトークは、1人あたり5分程度のプレゼンテーションを次々と披露するスタイルだ。失敗しても受講者の時間的損失は少ないのは利点である。気軽に参加すればいい。

 本当は数分間のプレゼンテーションは、数時間のプレゼンテーションよりも難しい。スピーチの名手であった、かつての英国首相チャーチルだってそう言っている。だから私はできるだけライトニングトークはやらないことにしている。

●講習会の受講

 最後にもうひとつ。勉強会は、通常1トピックあたり1時間から2時間の枠で企画される。正直に言うと、勉強会でまとまった技術を習得するのは難しい。もし、全体を理解したいのであれば少々値は張るが、専門の教育会社によるトレーニングを受講して欲しい。

 たとえば私の所属する「グローバルナレッジネットワーク」などはいかがだろう。運が良ければ(悪ければ?)私が担当させていただくことになる。

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