若手の目からみたこの業界のアレコレ、気の向くままに書いてみます。

資格の死角

»

【Intro】

 皆様は資格をお持ちですか。ちなみにわたしは、IT関係だと基本情報技術者や初級システムアドミニストレータを持っています。IT系以外だと普通免許、変わったところでは第二種電気工事士(どちらもペーパーですが)くらいです。

 これらはすべて高校時代に取得したもので、社会人になってからは、「資格」とは縁のない生活を送っています。時々思い出したように「資格でも取ろうかな」と思うのですが、なかなか実際に行動を起こすまでのモチベーションが出てきません。皆さんはいかがでしょうか。

【学生時代の「資格」】

 学生時代。「資格」というものは、自分の望む道へ進むための有効な武器でした。実務経験のないオコチャマでしたので、即戦力にはならないことは自覚してました。でも、アピールには使えるはずです。そういった意味で、資格を取得する事に対するモチベーションとなりえました。

 当時わたしは地方に住んでおり、東京の会社を志望していました。入社試験を受けに行く道中で、「俺はこれだけ資格を持ってるから大丈夫」と自分に言い聞かせていたのを覚えています。今思い返すと、壮大な勘違いな気がしますが、それは言わない約束です。少なくとも、わたしが通っていた学校では、単位として認められる資格がありました。「単位を取得する」という意味でも、資格を取得するということは意義のあることでした。

 また、ある程度難しい資格を取ると、「ちょっとした自慢になる」というのも、資格取得に対する十分なモチベーションだったように思えます。当時のわたしは、普段の授業や部活動、それと生徒会活動などでそれなりに充実した(当時の感覚で言うと「忙しい」)学生生活だと思っていました。でも、今思い返すと、その割にはそれなりにまとまった時間も取りやすく、なによりも十分なモチベーションがあったように思えます。資格を取得するには理想的な環境だったのだなと、いまさらながらに思います。

【社会人時代の「資格」】

 一方、社会人になってからはといいますと、なぜか急に資格取得へのモチベーションが一気に落ちたような気がします。

 資格がアピールポイントにならなくなってきたということも、理由の1つかもしれません。社会人になってすぐの頃ならいざ知らず、ある程度この業界で年数が経過すると、資格よりもそれまでの業務経験で判断されるようになります。少なくとも、わたしから見える範囲では。

 後は、身近な範囲で「資格を取ろう」という空気が皆無である、というのも理由の1つかもしれません。これは個々人が置かれた環境に大きく左右されることかと思いますが、わたしの周りでは、積極的に資格を取ろうという雰囲気がほとんどありません。もっとも、若手の数人かは基本情報処理技術者試験や初級システムアドミニストレータ試験を受けてはいるようですが、その翌年度以降、自発的に試験を受けようという雰囲気はみられません。これは若手連中の周りにいる先輩方の影響も強いような気がしますが……。

 わたしは残念ながら該当しませんが、いわゆる「デキル人」にとっては、資格試験の勉強時間を確保しにくいというのもあるかもしれません。業務に忙殺され、疲れて家に帰ってから勉強する気が起きないのは、想像に難くありません。

 話は若干変わりますが、会社によっては資格取得に関して各種手当てが出るところも、さほど珍しい存在ではないと思います。資格取得に必要な参考書の代金が支給されたり、試験費用を負担してくれたり、資格を取得した際に手当を支給してくれたり、月給に資格手当が加算されたり……。わたしが今までに在籍してきた会社ではありませんでしたが、資格取得に必要な勉強会を開催してくれるところもあると聞いたことがあります。金銭的なサポートだけではなく、こういったサポートが充実していれば、「資格を取ろう」と思う人も増えていくものなのでしょう。

【資格の死角】

 先に挙げた「アピールポイントにならない」のも、「資格を取ろうという空気が皆無である」のも、資格自体に実用性がないのが原因なのでしょう。言い方を変えれば、「実務に則していない」といったところでしょうか。わたしは、IT業界というものは「資格」でレベル付けをするのが困難であると感じていますが、それは、「目に見えないものを作る」という仕事に共通して存在するジレンマなのかもしれません。

 一口にIT業界といっても、その業務の遂行に必要となる知識は多岐にわたります。全般的な知識に対し、一定基準のレベルを定めようとすると、どうしても現状のような「現実とマッチしない」部分が出てきてしまうのも致し方ないとは思います。そもそも、「全般的な知識」でレベルを定めようというのが間違っているようにも思えます。

 もちろん、ここに挙げたものとは逆に、十分アピールポイントとなりえるものや、「是非とりたい」と思わせる資格試験もたくさんあることは承知しています。が、そのような試験は試験料が高額であったりして、なかなか気軽に受けることができるとは言い難いものが多いような気がします。

【Outro】

 さて、つらつらと好き勝手なことを書き連ねてみましたが、1つ気付いたことがあります。結局のところ、資格試験を受けない理由をでっち上げているだけですね。

 暑苦しい夏が過ぎ、過ごしやすい秋が訪れた今、「食欲の秋」や「芸術の秋」に加えて、「資格取得の秋」にしてみるのも悪くないかもしれません。わたしも資格取得に挑戦してみようと思います。……この気持ちが続けば、ですが。

 結局のところ、一番の「死角」はわたしの「心」そのものだったようです。

■□■

 当コラム「若人視点」へのご意見・ご感想・ご批判等、歓迎いたします。コメント欄に記入いただくか、el@hyec.org宛にメールしてください。

 いただいたメッセージはすべて拝見させていただきますが、個別にお返事させていただくことが難しいかもしれません。

 なお、特に当コラムに対するご質問や誤字・脱字、認識の誤りについてのご指摘をいただいた場合は、個人を特定できないようにした上で、当コラム中で使用させていただくことがございます。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する