若手の目からみたこの業界のアレコレ、気の向くままに書いてみます。

Re: 就活生からの『ITエンジニアの仕事についての質問』

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【Intro】

 ここ最近公私ともに余裕のない(よく言えば充実した)毎日を送っておりましたため、こちらに書くのをしばらくの間サボらせていただいておりました。

 さて、復帰(?)第1弾の記事ですが、ちょうどよく「エンジニアライフ時事争論」のネタの案内が届いておりましたので、そのネタで書いてみようと思います。

【わたしについて】

 さて、本題に入ります前に、まずはわたし自身について軽くご紹介しておこうと思います。特におもしろいことを書くわけではございませんので、興味のない方はお手数ですが読み飛ばしていただければと思います。

 わたしがこの業界を目指すきっかけとなったのは、叔父からもらった1台の古いコンピュータ(MSX2)でした。それに搭載されていたMSX-BASICでいろいろと遊んでいるうちに、コンピュータ自体やプログラミングに興味を持ち、この業界を目指すようになりました。

 わたしは地方に住んでいましたので、最初は地元で就職するんだろうなぁとぼんやり考えていました。しかし、いざ仕事を探す時期となり、学校に届いた求人票を眺めていると……その選択肢の少なさに愕然としました。そこで「地元での就職」から「東京での就職」に方向転換、そのなかで一番惹かれた会社の面接をうけることにしました。

 その会社で3年ほど働いていたのですが、いろいろとありまして最初の転職をすることにしました。わたしにとって2社目となるある会社で1年間働きました。そこで直属の上司だった人が会社を興すことになり、そこに誘われたのもあり、2回目の転職をすることになりました。3社目となる会社でまたまた3年ほど働いたのですが、このご時世となり、会社丸ごと合併することとなり今に至る……という感じです。

 今勤めている会社で4社目になるのですが、3度の転職のうちまともに転職活動をしたのは最初の1回だけで、後は周りの流れに身を委ねてきたようなものですね。

 仕事的には、汎用系、C/S系(クライアント/サーバシステム系)、Web系はある程度バランスよく経験してきました。基本はWeb系のプログラミングを仕事としていますが、インフラ(主にLinuxサーバ方面)の方もやっていたりします。今現在は、「プログラム3割、インフラ7割」といった感じです。

 ……と、身の上話を長々と続けても、ほとんどの方にはおもしろくないと思われますので、この辺で。移行はそんな経歴の持ち主が見聞きしてきた薄っぺらい実体験をベースに書かせていただこうかと思います。

【ワークライフバランスとわたし】

☆仕事と私生活、両立できていますか?

 正直なところ、答えに困ります。別段仕事一筋なわけではないのですが、1年を通してみると仕事に偏りすぎている自覚はあります。

 一例を挙げてみましょう。ここ最近はいろいろと周りにご配慮いただいてはいますが……と前置きしておきますが、プライベートでも仕事の電話がかかってきますし、お休みの日でもノートPCとデータ通信カードを持ち歩いています。

 といっても、これはわたしが「兼業環境屋」だからかもしれません。ソフトウェア開発だけやっていたのなら、おそらくここまでにはなっていなかったでしょう(し、わたしがソフトウェア開発だけをやっていた頃は、プライベートに割く時間の方が多かった気がします)。

 わたしは仕事大好き人間です。というよりも、趣味もプログラミングや「サーバいぢり」だったりするので、趣味の延長線上に仕事があるイメージです。ので、この生活もあまり苦ではありません(まったく苦ではないとはいいませんが)。インフラをやり出したのも、自分のスキルアップのために趣味で始めたサーバ構築がきっかけですし。

 周りの同年代なエンジニアをみても、同じような境遇の人間は見あたらないので、わたしの方が少数派なのかもしれません。もっとも、経験も考え方もわたしとはまったく違うので、比較するのが適切なのかはわかりませんが……。まあ、少なくとも最初の数年は両立できると思います。経験が増え、職位があがっていけばこの限りではありませんが、それはこの業界に限った話ではないでしょう。

☆どうすれば両立できますか?

 とりあえず、「力の抜き方」を覚えることが第一でしょうか。間違えてほしくないのですが、「手を抜く」ではなく「力を抜く」です。ある結果を出すためには、いろいろな手段があります。その中から一番楽で確実な方法をチョイスする、それがわたしの「力の抜き方」を考えるときの指針です。

 簡単に言ってみたものの、実際に行動に移すのは難しいと思います。わたしは全然できていません。まず、「一番楽で確実な方法」を選択するためには、選択肢を用意しなければいけません。この「選択肢」は、自身のスキルや経験によって増えていくものだと思います。この選択肢、言い方を変えると「引き出し」をいかに多く持つかで、両立できるかどうかは左右されるのではないかと思います。

 そして、「一番楽で確実な方法」をチョイスし続けていくと、自然と余裕が生じます。「ある人が1時間かかることを、30分でやった」とするなら、その人に比べて、30分の余裕が生まれます。その30分を有効活用するのが次のポイントでしょう。例えば、自分の作業のチェックに使うのもよいでしょう。すぐに次の作業に取りかかってもよいでしょう。あるいは、他の人を手伝ってもいいでしょうし、可能なら自己鍛錬のための時間(「引き出しを増やす」時間)に費やすのも悪くありません。これを繰り返すことで、他の誰かよりも密度が濃く、精度の高い仕事をすることができるようになるはずです。

 最後に忘れてはいけないのが、「残業はしない(させない)」こと。難しければ、残業が最小となるようにすることです。周りが残っていると、帰りづらい心境になるのはよくあることです。わたしのような、この負のオーラに負けやすい人は、「こんだけやってるんだけど、文句ある?」と思える(いえる)空気を自分で作ることをおすすめします。前述のとおり、他人より密度の濃く精度の高い仕事をしていれば、ある程度この手の空気が自然と作られていくでしょう。

 「早くて確実」でなければならないことに気をつけてください。「遅くて確実」なのはインパクトが足りません。「早くて不確実」なのは目も当てられません。「早くて確実」であるからこそ、自分や周りへの説得力が増すのだと考えています。

 「そういうおまえは実践できているのか?」という質問には、ノーコメントとさせていただきます。

【デスマーチ】

☆デスマーチの経験はありますか?

 個人的には、デスマーチという言葉は多用されすぎており、「広義のデスマーチ」としてとらえた場合、人によってそこにイメージするものはまったく別物なのではないかと思っています。

 たとえば、

  1. プロジェクト関係者に死亡者が出たからデスマーチ
  2. 体や心を病んでプロジェクト関係者が次々と離脱しだしたからデスマーチ
  3. 当初のスケジュールから大幅に遅延しても終わらない(終わらなかった)からデスマーチ
  4. プロジェクト終盤で根底を覆す問題が発覚したのに、スケジュール調整が不可能だからデスマーチ
  5. 徹夜が続く(いた)からデスマーチ
  6. 休日出勤がある(あった)からデスマーチ
  7. 残業続きで終電がデフォルトだ(だった)からデスマーチ

 以上はわたしが見聞きした中で触れた「デスマーチの定義」なのですが、実際にはもっといろいろな定義があるのではないでしょうか。

 噂レベルではちょくちょく耳にするのですが、幸いなことに1に該当するプロジェクトには関わったことがありません。

 2に該当するプロジェクトでしたら、関わったことがあります。というより、わたしが病んでプロジェクトを抜けました。もっとも、「病んだ」とはいっても比較的軽微な状態でしたが、人によってはこの業界に見切りをつけた人もいると聞きます。頻度的には、数年に1回程度でしょうか。

 程度の問題ではあるのですが3以降に該当するプロジェクトだったら、1年に1回は必ず経験しているような気がします。もっとも、ほとんどは一定期間(数カ月)経過すればある程度は落ち着くので、デスマーチとは言えないと思います。ある種の風物詩みたいなものです。

 では、「わたしはどう考えるか」というお話ですが、一言で言えば「明るい未来がイメージできないプロジェクト」はデスマーチだと考えています。さすがに死亡者やメンバーが次々と病んでいくプロジェクトは論外ですが、どんなに辛くても、どんなに徹夜が続いても、3カ月を超えない程度の有限期間を耐えれば終わるなら、それはデスマーチではないと思っています。

 ……かなり甘めな定義な気がしますが、それはそれとして。この定義に合致するようなプロジェクトに参画したことがあるかと聞かれると……、「ないとはいえません」といった形でお茶を濁させていただこうかと思います。

【ブラック企業】

☆ブラック企業にいたことはありますか?

 これも「デスマーチ」と同様、人によって定義がまったく違うような気がするのですが、「○○(会社名)はやめとけ」といった話はたまに耳にします。

 わたし自身は、「これはいただけないな」と思うことはそれなりにありますが、違法行為が常態化していたり……といった会社に在籍したことはありません。

☆ブラック企業の見分け方はありますか?

 わたしが知りたいくらいです。という冗談はさておき……。

 正直なところ、外側からでは見分けるすべはないのではないかと思っています。知り合いや知人にこの業界で働いている人がいて、その人が信頼できるなら、その人に聞いてみるのが一番ではないでしょうか。そういう人がいないなら、インターネットなどを活用するのも悪くないでしょう。

 いずれにせよ、この手の話はいろいろなバイアスがかかっているのが常なので、あまり盲信しないことだけ注意するとよいでしょう。

【学生時代の経験】

☆学生時代に学んだことは役に立ちますか?

 何を学んだかにもよると思います。個人的な経験で言えば、教科書で学んだことよりも、それ以外で学んだ事に関しては「役に立ってるな」という印象を持っています。

 高校時代のエピソードを少しだけご紹介しようとおもいます。

 わたしは、工業高校(電気・情報処理科)に通ってました。「情報処理科」といっても、やるのは「ワープロソフトの使い方」とか「C言語入門」、あるいは「UNIX入門」といった授業内容で、簡単なものであるとはいえ、今の業務でやっていることの縮尺版のようなものが多くありました。「基礎知識」という意味では、今の業務に通ずるものがあると思っています。

 他には、基礎的かつ重要なAND/ORなどの論理演算がらみの授業などは記憶に残っています。NANDかNORがあれば、AND/OR/NOTなどを作れるのですが、「ブレッドボードとNAND/NORのICを使って自分組んでみよう」という授業がありました。机上では理解したつもりでいたものの、いざそれを実際に回路として実装しようとしてみると以外と苦戦した事を覚えています。この授業で試行錯誤したことで、その後プログラミングをやるときの理解が多少は楽になったのではないかと思います。

 先に紹介したUNIXの授業では、初めてWindows以外のシステムに触れました。確かIRIXとFreeBSDが教材だったと記憶しているのですが、それいらいUNIXの世界にはまってしまい……今に至るという感じです。元々インフラ的な部分には興味すら持っていなかったので、そのとき触れていなかったら今のわたしはいないでしょう。

 これらの教科書に載っている授業は、それはそれでおもしろかったのを覚えています。基礎的な内容が多いこともあり、それだけでは物足りなくなったりもしました。そこで、当時個人的に勉強し始めていたC言語の本を何冊か買い、「放課後や家(この当時、PC-9801VMやRXを使ってました)で自習し、わからないところは要点をまとめて先生に聞く」ということを繰り返していました。

 先生方に教えてもらいながら、学校にあるPCをお借りしてLinuxをインストールしてみたりもしました。グラフィカルなインストーラが用意されている時代なので、インストール自体は非常にすんなりいきました。ただ、このときはLinuxはもちろん、ネットワークの知識も皆無だった頃でしたので、1つ失敗してしまいました。

 自分が構築したマシンが原因で、校内ネットワークが正常に動作しないようにしてしまったのです。原因は単純明快。今思えば当たり前のことなのですが、このマシンのIPアドレスを、校内ネットワークのゲートウェイのそれにしてしまっていたのです。数分後、先生に呼び出されて説明を受けるまで、自分が何をしでかしたのかさっぱりわかっていませんでした。このとき「怒る」のではなく、きちんと「何がいけないのか」、「どうすればいいのか」を無知なわたしに説明してくださったことに感謝しています。

 この経験から、わたしは「IPアドレスとは同一ネットワーク上では一意でなければならない」ということを学びましたし、「DHCP」という存在を知りました。ネットワークの初歩の初歩をこの一件で学んだと思っています。そして、インフラの世界に足を踏み入れる遠因になっているのではないかと思っています。また、このときにその先生が私に教えてくださった過程から、「どうやって人に教えるか」という方面でも勉強させていただいたのではないかと思っています(実施できているかはわかりませんが……)。

 オーバーだと感じられるかもしれませんが、それはご愛敬。長々と書き連ねましたが、学校というのは結局のところ本人の気の持ちようでいろいろなことを学べるところなんだなと思っています。「学生時代に学んだことが役に立つか」という質問に対するわたしなりの答えは、「貴方次第なんじゃない?」といったかんじでしょうか。世の中、何が役に立つかわかりませんから。

【コミュニケーションスキル】

☆人と話すのが苦手なですが、エンジニアになれますか?

 わたしは「人見知りが激しい」ですし「人前に立つと緊張しやすい」のですが、一応エンジニアを名乗らせていただいています。さすがに「人と話すのが嫌い」だとお話にならないかと思うのですが、単に「苦手」なだけだったら全然やっていけると思います。

 ただ、「苦手だから、人と話さなくてよい」というわけではないので、どこかのタイミングで一歩を踏み出さなければならないことでしょう。別にこの業界に限った話ではないですが、そのときが来たら「苦手だから」と尻込みせず前に出る心構えだけは持てるように努力すべきでしょう。

 余談ですが、わたしが「人見知りなんです」というと、必ずといっていいほど「またまた~(笑)」といったリアクションをされます。一度仲良くなると、普通に話せるタイプなだけなのですが……。

 「人と話す」ということも大事だとは思うのですが、「コミュニケーションスキル」という観点からいえば、「相手にわかりやすく伝える」というスキルの方が重要な気がします。口頭であったり、電話であったり、メールであったり……、シチュエーションは様々だと思いますが、TPOに応じた伝え方ができれば多少人との会話が苦手でも十分素質はあるかと思います(もっとも、仕事をやっていく中である程度は身についていくものだとは思いますが)。

【Outro】

 長々と駄文を書き連ねさせていただきましたが、いかがでしょうか。他のコラムニストの皆様方と比べて、特段深みもない、面白味もない記事になってはしまいましたが、ご容赦いただければと思います。

 自分の書いたものを読み返してみると、「理解したとしても、実践するのは難しいのだ」ということを痛感します。まさに「日々勉強」ですね。

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