第295回 「人への感じ方」について考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私たちはおおよそ誰かしらとの関わりをもって生きています。当然、人それぞれ相手への感じ方は違いますが、相手に認められたいと考えるならば、相手が自分のことをどのように感じているかといった「人への感じ方」が重要になってきます。私はこの「人への感じ方」を「興心動」という言葉で考えています。そこで、今回は「人への感じ方」について思うことを書きます。
■「興心動」とは
「興心動」とは人への感じ方を示す言葉で私の造語です。「興」「心」「動」はそれぞれ人への感じ方の段階を表しており、一番浅い感じ方は「興」で、一番深い感じ方は「動」です。
「興」は「興味」のことで相手に対して興味を示しているような感じ方です。相手に対する感じ方の一番最初の段階です。尚、これより前の段階は興味がない状態(=無関心)です。
その次は相手のことを心に留めておくような感じ方で、これが「心」の状態です。この状態になると、相手に対して何かしらの価値を見出していますので、相手に惹かれている段階ともいえます。
最後は相手のことに心が動くような感じ方で、これが「動」の状態です。これが一番深い人への感じ方で、この状態になると、相手はあなたに対して唯一無二の価値を見出していますので、相手から積極的にあなたに関わりを持ちたいと思うようになってきます。
この「興心道」は人への感じ方を表した言葉ですが、このようにいい換えることもできます。
第一段階「興」:感興(=関心のこと)
↓
第二段階「心」:感心
↓
第三段階「動」:感動
つまり、最初は相手のことに感興(=関心)を覚える段階、次に相手のことを心に留めておく段階、最後は相手のことで心が動く段階。これが私の考える「人への感じ方」に対する3つの段階です。
■「興心動」を相手の立場になって考えてみる
それでは、この「興心動」を仕事の面から考えてみます。例えば、上司が部下に仕事の指示をし、部下がアウトプットを出してきました。そのアウトプットが以下のようになっていたとします。
アウトプット1:単に仕事の指示をクリアしただけのアウトプット
アウトプット2:仕事の指示をクリアした上司の思惑にまで及んだアウトプット
アウトプット3:仕事の指示をクリアした上司の思惑外(=想定外)にまで及んだアウトプット
アウトプット1を部下から提出された上司の心情を考えてみます。部下から提出されたアウトプットは、上司である自分の依頼した仕事の指示をクリアしています。ですので、「こいつ、ちゃんと仕事ができるな」といった印象をもつのではないかと思います。部下は仕事の指示をちゃんとクリアしていますので決して悪い印象を与えることはありませんが、特別良い印象も与えられていないかもしれません。その意味では「感興(=関心)」といった言葉が合うのではないでしょうか。
次にアウトプット2を部下から提出された上司の心情を考えてみます。部下から提出されたアウトプットは、上司である自分の思惑まで汲んだ内容になっていました。ですので、「おっ、こんなことまで考慮して作ってくれているのか」といった印象になりそうですね。上司の心情としては、上司である自分の考えを汲み取ることができている部下に「感心」している状態ではないでしょうか。
最後にアウトプット3を部下から提出された上司の心情を考えてみます。部下から提出されたアウトプットは、上司である自分の思惑外(=想定外)の内容にまで及んでいました。このような場合、上司は「こいつ、すげぇな...よくこんなことまで考えられるな...」のような印象を持つこともあるでしょう。上司の心情としては、自分の期待をも超える部下のアウトプットに「感動」している状態といえるのではないでしょうか。
■「興心動」から考える人への接し方
だとすれば、どうすれば相手に接すればよいのでしょうか? 私はこのように考えます。
相手に「感興」を持ってもらいたい:相手の要求を過不足なく実現する
相手に「感心」してもらいたい :相手の立場に立って、相手の要求を実現する
相手に「感動」を与えたい :相手よりも上の立場に立って、相手の要求を実現する
といったことが考えられるのではないでしょうか。
人との接し方は千差万別です。「感興」を持ってもらいたい人、「感心」してもらいたい人、「感動」を与えたい人...、一人ひとり接し方が違うように、人への感じ方も変えた方がよい場合もあります。「感興」であれ「感心」であれ「感動」であれ、ベースにあるのはすべて相手です。そう考えると、相手のことを考えて行動するということは、実は人への感じ方を考える上で最も基本的なことなのかもしれませんね。