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第183回 キャリアコンサルタント国家資格化について(さらに続報)

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 去る11月16日に国家資格であるキャリアコンサルティング技能検定を実施しているキャリアコンサルティング協議会からキャリアコンサルタント国家資格についての情報が出てきました。以前、第2報としてお伝えしたキャリアコンサルタント国家資格の情報を補完する内容でしたので、今回はこの情報をご紹介したいと思います。

■キャリアコンサルタント国家資格化に関するQ&A

 キャリアコンサルティング協議会は国家資格であるキャリアコンサルティング技能検定を実施している団体なのですが、ここからキャリアコンサルタント国家資格化に関するQ&Aが発表されました。このページによると、あくまでこのQ&Aは確定情報ではないことが付け加えられているものの、現時点では最新の情報になります。そこでQ&Aから読み解けることを書いてみたいと思います。

●受験資格について

 受験資格については4点あげられています。

  • 厚生労働大臣の認定を受けた講習(現在の標準レベルの養成講座と同等の講習を想定、下記「6.試験科目」参照)を修了した者。
  • 3年以上の実務経験(職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談業務)を有している者。
  • キャリア・コンサルティング技能検定の学科試験又は実技試験の合格者(片方合格者、下記「2.試験免除」を参照)
  • これらと同等以上の能力を有する者として別途厚生労働大臣が定める者。

 最後の「これらと同等以上の能力…」については一般的には考えづらいので割愛します。そうすると、

  • 標準レベルの講習を受講している人 + 3年以上の実務経験を持っている人
  • 技能検定に合格している人

の2つに分かれるように思います(技能検定の受験資格には3年以上の実務経験と標準レベルの講習を受講していることが求められる、技能検定合格者は既にこの要件を満たしています)。ただ、これらの受験要件がいずれか1つでOKということであれば、3年の実務経験があれば標準レベルの講習を受けなくても、国家資格が取れることになります。ここは続報を待ちたいと思います。

 また、時限対応として2016年3月31日までに標準レベルの講習を受講した人は2021年3月31日までの期間は受験資格である標準レベルの講習を受講済みになる措置が受けられるようです。

●試験免除に関して

 これまで標準レベルの試験免除については謳われていましたが、どのような形で免除になるのかが明記されていませんでした。また、技能検定が試験免除になるかどうかの情報も開示されていませんでした。これらに対しては以下のようになるようです。

  • 技能検定合格者は試験免除(実技、学科の片方が合格している場合は合格している試験を免除)
  • 2016年3月31日までに標準レベルキャリアコンサルタント試験に合格した場合、2021年3月31日までの限定で、国家資格の合格者とみなす(実技、学科の片方が合格している場合は合格している試験を免除)

 これによると技能検定合格者はいつ国家資格を取得しても試験が免除になるみたいです。それに対して、標準レベル合格者は2016年3月31日までに標準レベルに合格した場合、2021年3月31日までの期間であれば国家資格の合格者とみなすことができるようです。そのため、2016年3月31日までに標準レベルに合格していた場合でも、2021年4月1日以降に国家資格を取ろうとした場合、国家資格の合格者とみなされないため、再度学科、実技試験の両方を受け直さなければならなくなります。また、現在標準レベルを勉強中の方で2016年3月31日までに学科、実技のいずれかに合格している場合、2016年3月31日までの期間は合格している科目の試験が免除になる措置もとられるようです。

●更新講習に関して

 新たに申請される国家資格には5年ごとの更新講習が課せられる予定になっています。それらについての情報も出ています。これによると、更新講習は以下の2つあるようです。

  • 知識に関する講習を8時間以上
  • 技能に関する講習を30時間以上

 ただし、1級キャリア・コンサルティング技能士は技能講習は免除。1級キャリア・コンサルティング技能士から実務指導を受けた時間と、キャリア・コンサルティング業務に従事した時間を合わせて10時間までは講習を受けた時間とみなされる(技能に関する講習時間30時間から免除される)ようです。

 これは、なるほど! と思いました。これまで国家資格と技能検定の位置づけがあいまいな感じがしていたのですが、ここに来て技能検定と国家資格の位置づけがハッキリしたように思います。1級キャリア・コンサルティング技能士はキャリア・コンサルティングの階層で一番高い「指導レベル」に位置づけられています。今回の更新講習の位置づけで、1級キャリア・コンサルティング技能士は更新講習によって熟練、標準レベルのキャリアコンサルタントの指導にあたることが明言されたことにより、立場がとても明確になったのではないかと思います。ただ、1級キャリア・コンサルティング技能士の講習を受けなくても、実務を10時間以上やっていれば減免措置は達成されてしまうので、ここは少し残念な気がします。

●試験科目について

 試験科目については、以下のように記載されています。

イ この法律(改正職業能力開発促進法のことです)その他関係法令に関する科目
ロ キャリアコンサルティングの理論に関する科目
ハ キャリアコンサルティングの実務に関する科目

この他、厚生労働省令(案)では次の事項が科目として定められています。

・キャリアコンサルティングの社会的意義
・キャリアコンサルタントの倫理と行動
・その他キャリアコンサルティングに関する科目

 ここはさほど目新しい内容はなく、標準レベルの試験内容に統一されてくるのではないかと思います。ただ、これは私個人の主観ですが、標準レベルの実技試験の中にはカウンセラー寄りの試験を重んじている団体があるようですが、ここは技能検定のようなコンサルティング(問題解決)に寄せた実技試験になってくるのではないかと推測しています。

■キャリアコンサルタントが国家資格化されることで

 以前のコラムでも書きましたが、私はキャリアコンサルタントが国家資格化され、免許制度になることに賛成しています。それは、キャリアコンサルタントの地位向上になるからですが、それ以上に、キャリアコンサルタントという職業が今以上に社会に認知されることによって、この職業をセカンドキャリアのような位置づけで捉える人が増えてくるからだと考えています。

 ひと昔前のITエンジニアの世界は徒弟制度のようなモノがあったように思います。先輩や上司の技術やスキルを真似て、少しずつ習得して、いずれ一人前のITエンジニアになる。今もその風潮が残っている業界があるようですが、これが職業として形づくられているモノがキャリアコンサルタントだと思っています

 自分がその業界で経験してきたモノをキャリアコンサルタントという職業を通じて後進の方々に提供する。たとえ、第一線で働くことができなくなったとしても、セカンドキャリアとしてキャリアコンサルタントになることで、その人がそれまで習得してきた技術、スキルは、脈々と次の世代に受け継がれていくと思うのです。

 勿論、キャリアコンサルタントになるためにはたくさんの訓練が必要です。決して誰にでもなれる簡単な職業ではありません。しかし、だからこそ、キャリアコンサルタントはセカンドキャリアになりうる職業だと思うのです。そして、そのためには、国家資格化された社会的に認知された免許のようなモノが必要なのだと考えます。

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