自分のために
ある一定以上の経験を積んだ人や、年齢が高くなった人に対し、技術側から管理側へとシフトを促す話はそれこそ星の数ほど聞くことがあります。背景には色々な事情が隠れているのですが、私自身としてはその方針には大反対です。
今時点で勤めている会社に転職した際も、管理側でなく技術側でいたい、とはっきり意思を伝える程度には技術側にたっていたいと考えるのですが、なかなかその考えを理解してくれる会社というのも少ないと思います。特に規模が大きくなればなるほど、その傾向は強いようにも思えます。
会社としてそう考えるには何かしらの理由があるのでしょうが、正直なところその考え方に納得できる点を見いだせていません。経験を積み年齢を重ねたからこそ、技術側でもできることが増えていると思うからです。
関わっている人員的に、管理側に回らざるを得ない状況というのも確かにあります。そういった場面では管理タスクをこなすことに異議はないのですが、そうでない場面においても管理タスクをこなすことを要求するというのは、何か間違っているように思えます。
この傾向は、開発に特化している企業であればもしかするとそれほどないのかも知れません。中途半端に開発も行っているような企業であればあるほど、年齢や経験から自動的に管理者層へとシフトさせようと考えているのでは、と思えることもあります。人員の少ないベンチャー系ではそういったことはあまりなく、数十~数百といった人間を抱える規模になると、何故かそういった思想がはびこってくるのです。
恐らく会社としては、管理者層もある程度厚くすることで、それ以外の層も厚くできると考えているのでしょうが、私としてはその考え方には反対で、管理者層を増やしたいならそれに適した人材を増やすしかない、と考えています。プログラミングなどに代表される、物をくみ上げる能力が高い人が管理に向いている道理は全くありません。下手に管理側へスライドさせることで、せっかく能力が高い人材を抱えていたとしても、有効に活用できず終わってしまう事も多々あります。
この業界も、生まれてから結構な年月が過ぎているのですが、この考え方がいまだに根強く受け入れられているのはどうしてなのでしょうか。
理由の一つは、今までが単にそれでなんとかできてしまっているから、なのだと思います。過去においては、今ほど複雑に入り組んだ状況を管理することはケースとしてそれほど発生していません。難しいと思われている案件であっても、今の時代で考えるとそこまで難しいケースというのは、極々僅かに限られます。そういった背景があったからこそ、単純に管理者側へシフトさせるようなやり方でもうまくいってしまい、その成功体験によって今でも通用すると思い込んでいる、そういったことが考えられます。
多くの方法論が世の中に登場している今では、当然その成功体験は邪魔でしかありません。ですが、そのように考えられる経営層が少ないので、過去の体験に基づいてやりくりしているのが唯一の正解と信じ込んでいる、そんな可能性が考えられます。
10 年以上前、もっと言えば数年前と比較しても私達を取り巻く環境は激変しています。ベストプラクティスと思われていたことが、まったく通用しないことも何も珍しくありません。技術側はそういった現状にもまれ、常に手法をかわるがわる試すことが求められています。ですが管理側ではそこまでのことは要求されません。管理側は基本的に上の層にいるため、他人に変化を求めはしますが自分たちを変化させようとはなかなかできないのでしょう。
そう言ったことを考えれば考える程、自分が望む将来と会社が望む将来とのギャップが見えてくることになります。そのギャップを受け入れることができている間は、その会社で働くでしょうし、受け入れられないラインを越えたら違う会社へ転職する、それがあるべき姿のように思えます。
どうやったところで、その人に向いている向いていないものというのは絶対存在します。万能的な人と思える人も稀に見かけますが、そういった人は例外な存在です。自分が同じように万能にこなせるか、と言われればこなせない事の方が多いのです。そんなことを考えると、どこかで働く場を変えることは、誰しも実施した方が良いのではないでしょうか。一つの場にとどまり続けることは確かに素晴らしいかもしれません、ですがそれを自分が望んでいたのではない限り、無理をしてそこに居続ける必要もまたないのです。
自分が望んでいる考え方に近いものを持つ会社に移ることは、自分のためにも非常に良い事だと思います。ここまで書いた私の考え方が正しい、とは言いません。会社の考え方が正しい、そうかも知れません。ですが、考え方が自分と会社との間で合わないのであれば、少しでも合う環境へ移ることは、しなくてもよい苦労をかわすためにも必要な行為なのではないでしょうか。
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あとはそれを実行できるだけのものを、自分が身に着けていればよいのです。それ会社や周囲の考え方を変えるよりも、はるかに易しいことなのではないでしょうか。