達成したいことは何か
システムを運用することには、色々な人たちの思惑がどうしてもぶつかり合います。システムを利用する側と、システムを保守運用する側との思想や考え方は当然異なりますので、本来は同じ目的に向かうはずの関係者同士でも、意見が合わないということは非常に多く発生してしまいます。
利用者側としては自分たちの業務を行うために、システムをよりよくしてほしいと願うのは当然ですし、運用側としては既存システムを問題なく動かし続けることを第一としてしまうのは、ある意味で仕方のないところかもしれません。しかしこれは、どちらも近視眼的な考え方なのではないでしょうか。
会社という視点から考えた場合、システムの導入も運用も、自分たちのビジネスを成功させるというのが最も優先度の高い目的です。単に現場の運用がまわること、システムが問題なく稼働している事というのは、その目的のために必要な状態でしかありません。
最近に限らずこのあたりの目的をとらえ違いしているのか、現場を回すためのシステム論や、問題なく稼働させるための保守論といったものをよく見かけます。また、それぞれの立場を優先した意見というのも多々見受けられます。現場を回すためにシステムの改善が必要だ、安定運用のために何か変更することは避けてほしい、などなど、自分たちの領域のみを見ている意見は、どうしても出てくることが避けられません。
しかし、システムも、それを利用する現場も、基本的には同じ目的のために集まっているはずです。自分たちのビジネスをより成功させるため、それが最も優先するべきものであり、個別領域にのみ限定した言い分を優先してはいけないはずなのです。
残念なことに、このあたりの考え方が伴っていない会社は多いと思います。ここまでに書いた例は、運用が始まってからのことですが、最も最初の要件定義の場面からもこのような問題はつきまとっています。
よくある状態として、要件定義の打ち合わせを行う際、業務の方たちと開発の方たちはいるけどもインフラの人がいないとか、環境の話をするのに開発とインフラはいるけども業務がいないとか、目的を考えると各領域からメンバーが集まってしかるべきはずなのに、一部の人間しか参加していない状況があります。このような状況を続けていると、最初の場にいなかった人が何か意見を言うたびに「途中から出てきて勝手なことを言うな」と思われたりすることがあります。これはマイナスを生み続けてしまう方針です。
最初から主要なメンバーすべてを集めて話し合うことができれば、そのような事態は防げるはずなのですが、何故かそうしない会社は多いです。目的が何か、というのを勘違いしていることが多いのではないでしょうか。
個人的にも、いくら自分たちの領域が上手く回っていたとして、ビジネスとしてうまくいっていなければ、それは失敗だと考えている側です。ですがそう考えない人も多く、自分たちは上手くいったからこれは失敗ではない、と思い込んでしまっているように見えています。自分たちとしてはやれることをやって上手く回っていたから成功、というのでは近視眼的と言われても仕方のないことです。。
もっと言ってしまうと、結果が伴っていなければ、自分たちがうまくできていたというのも錯覚でしかないのです。実施したとしても意味がない事を延々とやって問題が起きなかった、そのことにどれだけの意義があるのでしょうか。
こういった状況を変えていくためには、それぞれがこれはもっと自分に深くかかわる事、と考え方を変えていくしかないように思えます。目の前にあるタスクをこなしていけばよい、最低限必要な事だけをやればよい、ではなく自分たちの手でもっとよりよくしていかなければこの仕事自体がなくなる、それぐらいに危機感を感じて取り組むのがよいのではないでしょうか。
日々の作業一つ一つをとっても、それはどこかで色々な人に繋がり最終的には大きな結果へとつながります。その影響が見えてくるに従い、例えほかの領域のことであっても改善できることに気づけてくることも珍しくありません。そこでほかの領域のことだから、としり込みして何も伝えないことは、大きな目標を達成することから考えると、非常に勿体ない事なのだと思います。
大きな会社になればなるほど、違う領域とのコミュニケーションが悪化してしまうことは大変多いと思います。ですが、達成しなくてはいけないことは何か、という一つ大きな観点から物事を考え、違う領域であっても同じ会社の人間ですので、協力していくことは当然重要だと考えます。
会社側に求めることとして、目的を達成するために既存の仕組みが邪魔になるのであれば、そこを排除する、もしくは改善することを良しとする空気を作っていってもらいたいものです。そうすることが、最終的に最も良い結果へとつながるのだと私は思います。個人個人の意識が変わる事、そして会社としての対応が変わる事、その両軸がそろってはじめて大きな成果を生み出すことができるのではないでしょうか。
システム側としてこうだから、現場としてこうだから、といった理由はもう些細な事として、重要視しなくてもよいのかも知れません。そう考えることができた時、ようやく私達 IT 業界としても、一歩上の対応ができるようになるのではないでしょうか。